表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/131

129.見送り③

「何してんだよ、こんなとこで。藤沢も、夏川も」


 一番いいとこ邪魔しやがって。


 とは、さすがに口には出さなかったけども。


 驚きと気恥ずかしさからか、後ろに下がる悠木を背中で隠してやりながら、俺は藤沢と夏川をジト目で見てやった。

 俺の言いたいことが嫌というほど分かっているらしい2人は、気まずそうな表情など浮かべている。


「亜由実があんなとこで声出すから」

「だって!あんなの見ちゃったら声出ちゃうでしょ、普通!」


 ・・・・全部見てた、って訳か、まったく・・・・


 文句の1つも言ってやろうとしたところへ、現れた人がもう1人。


「ねぇ、夏希くん見つかった?・・・・あれっ?・・・・・あれっ?!瑠偉っ!」


 悠木の姿を見つけるなり、真菜さんがすごい勢いで駆け寄って来た。

 そして、悠木の肩に両手を掛け、信じられないものでも見るかのように問いかける。


「あなたどうしてここに居るのっ?!もう、飛行機の時間はとっくに」

「行けなかったの、私」

「えっ?」

「どうしても、行けなかった」


 言いながら、悠木がキュッと、俺のコートの袖を掴む。

 それで、全てを察したのだろう。

 悠木の肩から手を外し、真菜さんは小さく息を吐いて、笑った。


「なるほど、ね」


 そして、後ろを振り返り、何とも言えない顔をしたままの2人に声を掛ける。


「良かったわね、夏希くんが落ち込まなくて済んで」

「えっ?」

「あの2人、あなたの事心配してここまで来たのよ?瑠偉が居なくなったら、夏希くんは絶対に落ち込むからって。落ち込んだ夏希くんを励ましたいから、瑠偉の乗る飛行機の時間を教えてくれって、しつこくてねぇ。おまけに、空港まで車出してくれ、って。もう、参ったわ」


 待て。

 待て待て。

 なんだよ、それ。


 真菜さんの言葉に、文句の言葉が一瞬にして消え去った。


 なんだよ、お前ら。

 なんなんだよ、一体。

 なんて・・・・いい奴らなんだよっ、2人してっ!

 これじゃ俺、文句なんて、何にも言えないじゃないかっ!


 胸に熱いものが込み上げてきて、俺は思わず2人から顔を背け、空を仰ぐ。


「しじょー?」


 心配そうに声を掛けて来る悠木に、俺は言った。


「大丈夫だ。猛烈に感動してるだけだから」

「そっか」


 コートの袖を掴んでいた悠木の手が一瞬離れ、そっと俺の手を握る。

 空を仰いだまま、俺はその手を強く握りしめた。



 空港からの帰り道。

 真菜さんの運転する車の中は、賑やかな事この上無かった。


「良かったぁ、悠木が行かないでくれて。あたし、ホントに寂しかったんだよ、悠木が外国行っちゃうって聞いた時」

「ありがと、夏川さん」

「良かったな、夏希。いや~、ほんと良かった。俺、暫くは夏希の励まし役に徹するしかないって覚悟してたんだぞ?お前、瑠偉の事になったら、ほんと、とんでもなく感情豊かな反応するからな。相当落ち込むんじゃないかって、本気で心配してたんだからな?」

「・・・・お前、俺をなんだと思ってるんだよ?」

「何って、瑠偉大好き人間、だろ?」

「藤沢っ!」

「あははははっ!」


 行きの電車とは、大違いに楽しくて。

 悠木はもちろん。

 藤沢も、夏川も、真菜さんも。

 そして、俺も。

 みんなの笑顔が弾けていた。

 そんな中。

 藤沢が、ふと顔を曇らせて、言った。


「でもお前、頑張れよ?」

「ん?なにを?」

「瑠偉の親父さん、瑠偉のこと楽しみに待ってたみたいだからな」

「・・・・えっ」

「ちゃんと、理解してもらえればいいけどなぁ。日本語、あんまり通じないみたいだし」

「・・・・はぁっ?」

「あれ?知らなかったか?瑠偉の親父さん、日本人じゃないぞ?瑠偉のあの瞳は、父親似だからな」


 藤沢よ。

 何でそれ、もっと早くに教えてくれなかったんだ・・・・


 得体のしれない恐怖に、俺は思わず、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ