126.卒業式③
卒業式もつつがなく終了し。
クラスメイト達との別れの挨拶、という名の雑談も終わり。
校舎を出たところで、悠木の姿を見つけた。
何しろ、今日の悠木は、今まで閉じ込めていたオーラを全開にして解き放ったかのように、どこにいてもすぐに分かるほど目立っているから。
探そうとしなくたって、自然と目に飛び込んできてしまう。
悠木の隣には、2人の女性の姿。
1人は、確実に真菜さんなんだけど。
もう1人は、ちょうど俺に背を向けている状態で、誰だか全然分からない。
もしかして、あれって・・・・?
「夏希、ここにいたのね。もう、探したのよ」
いつの間にか側にいたかーちゃんに声を掛けられ、俺はハッと我に返った。
親父は仕事の都合で来られなかったが、かーちゃんが仕事を休んで卒業式に来てくれた。
なんだか照れくさい気もするけど、まぁ、有り難いとも思うし、嬉しい気持ちもある。
俺の望んだ高校に通わせてくれて、無事卒業を迎えられたのも、親父とかーちゃんのお陰だし。
なかなか言葉にはできないけど、これでも感謝してるんだ。
俺ほんと、この高校通えてよかった。
ありがとな、親父、かーちゃん。
なんて。
殊勝な思いに浸っていると。
「あら?あれ、瑠偉ちゃんじゃないの?瑠偉ちゃーんっ!」
「ちょっ・・・・かーちゃん、待てって!」
俺の言葉を無視し、かーちゃんはズカズカと悠木達の所へ向かってしまった。
慌てて俺も、かーちゃんの後を追う。
「あら?もしかして、夏希くんのお母さまですか?」
かーちゃんに気付いた真菜さんの言葉に、もう一人の女性が振り返る。
その顔に。
俺の目が釘付けになった。
悠木とそっくりな顔。違うのはただ、瞳の色と髪質だけ。
間違いない。
この人、悠木のかーちゃんだ。
「四条さん、初めまして。悠木瑠偉の母です。娘が大変お世話になりまして」
「いいえ~、こちらこそ、うちのバカ息子が瑠偉ちゃんに本当にお世話になりまして」
うちのかーちゃんと、悠木のかーちゃんと、真菜さん。
娘も息子もそっちのけで、何やら盛り上がり始めている。
「悠木」
そっと悠木に近づき、その手を取る。
「・・・・しじょー?」
俺はそのまま、怪訝そうな顔の悠木を連れて、昼寝スポットに向かった。
「悠木のかーちゃん、悠木にそっくりだな」
「・・・・逆」
「あ、そっか」
見上げれば、空は俺達の卒業を祝ってくれているかのような、快晴。
ポカポカとした温かい陽だまりの中で、俺達は並んで、校舎の壁に背を預けて立った。
いくら昼寝スポットとはいえ、ワンピース姿の悠木を、こんなところに寝ころばせる訳にもいかないだろう。
・・・・実際のところ、到着するなりその場で寝ようとした悠木を、俺は慌てて止めた訳なのだが。
「かーちゃんと一緒に、向こうに行くのか?」
「ママ・・・・お母さんは、今日帰る。私は、明日」
「明日っ?!それじゃホワイトデー、間に合わねぇじゃんっ!」
「いい、そんなの」
悠木は笑ってはいたが、その顔は少し、寂しそうにも見えた。
「明日俺、見送りに行っても、いいか?」
「え?」
「1人で行くんだろ、どうせ。藤沢にも夏川にも、言ってないだろ?」
「・・・・うん」
「見送りしちゃ、ダメか?」
「・・・・ダメ、じゃない」
「じゃ、決まりな」
「うん」
ちょうどのタイミングで、俺のスマホがかーちゃんからのメッセージを受信した。
どうやら、かーちゃん達の長話が終わったらしい。
「じゃ、明日、な。飛行機の時間、あとでメッセージで送ってくれ。待ってる」
「あっ、しじょー」
「ん?」
歩きかけたところで悠木に呼び止められ、足を止めて振り返ったが。
「・・・・あとで、時間送る」
「お、おう」
悠木は本当は、何か別の事を言おうとしていたんじゃないだろうか。
そんな事を思いながらも、俺は悠木とは別の方向へと歩き出した。
後ろ髪を引かれるような思いで。




