124.卒業式①
「四条!」
「夏希!」
卒業式。
感慨に浸りながら学校に向かってる途中で、後ろから俺を呼ぶ声が。
振り返るまでも無い。夏川と、藤沢だ。
つーか。
2人合わせてフルネームで、そんな大声で俺を呼ぶなっ!
公道でフルネームを大声で呼ばれるとか、恥ずかしいだろっ!
文句を言ってやろうと振り返った先に、人影が3人。
2人は間違いなく、藤沢と夏川だが。
・・・・誰だ、あれ?
あの可愛い女の子。
あんな子、いたっけ?
そう思って立ち止まっている間に、3人はどんどん近づいて来る。
そして。
ウソだろ?!
悠木なのかっ?!
ガン見している俺の視線の先で、その女の子は顔を赤らめて俯いた。
ゆるフワのクセっ毛を可愛らしいピンで丁寧に止め、淡いピンクのワンピースを着ていたのは、間違いなく悠木だった。
長めの前髪は相変わらずだが、今日はダサメガネも外している。
「なーに、見惚れてんの?」
夏川がニヤニヤと笑いながら俺を見る。
そんな夏川も、シックな紺色のワンピースなどを着ている。
「可愛いでしょー、このワンピース。色違いでお揃いなの!2人で決めたんだ、卒業式は一緒にこれ着ようねって」
「うん、可愛い」
悠木を見たまま、俺は夏川の言葉に頷き、素直に言葉に出していた。
それくらい、悠木はものすごく可愛かった。
「夏希、いくら何でも見過ぎだろ。瑠偉が困ってるぞ」
「え?あっ・・・・ごめん」
藤沢に言われ、慌てて悠木から視線を逸らす。
とたんに、忘れていたかのように、心臓がバクバクと動き出す。
反則過ぎだろ、悠木。
お前は俺を何回ノックダウンさせれば気が済むんだ?
しかも、ジャブも何もなく、いきなりストレートぶち込みかよ。
髪型も、ワンピースも、もちろん顔もだけど。
雰囲気まで可愛い感じで、可愛いが大渋滞し過ぎじゃないか?
「ほんと・・・・お前、瑠偉のこと大好き過ぎ」
「うるせー」
多分、俺の顔は今、真っ赤になっているだろう。
カッカと火照る顔を今さらながらに背けて、俺は3人を置いて歩き出した。
「ねぇ、四条。気にならないの?」
夏川が俺に追いつき、並んで隣を歩きながらそう尋ねてくる。
「何が?」
「悠木、あんなに可愛くなっちゃって、モテモテになっちゃったらどうしよう?とかって」
「・・・・」
「まぁ実際のところ、もうモテモテになっちゃってるんだけどねー」
「えっ」
「当たり前でしょ、あんなに可愛いんだから。ちょっと髪の毛と服装変えただけで、あんなに変わるとはあたしもビックリだけど。まぁ・・・・当然と言えば、当然よね。元がいいもん。なんたって、ルイだったんだし」
チラリと後ろを振り返り、大変身した悠木を見る。
そこにいるのは、いつもの見慣れたモサダサの悠木ではなくて。
あの人気アイドルにだって引けを取らないくらいの、可愛らしい悠木。
さすが、真菜さんが目を付けただけはある、と思う。真菜さん、天才か。
確かに、あれでモテない訳が、無い。
真菜さんじゃなくたって、あんなのが繁華街歩いてみろ、スカウトが引く手あまたなのは、想像に難くない。
スカウトが引く手あまたなら、そこらの男どもなんてもちろん、イチコロだろうさ。
隣を歩く、幼馴染みの藤沢に見せているあの笑顔なんて、あのモサダサの悠木と同一人物だとは思えないほどに、メチャクチャに可愛いし。
おい、夏川。
お前、なんてことしてくれたんだよ・・・・
そんな情けない思いが顔に出てしまったのか。
夏川が俺を見て、笑った。




