表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/131

123.合格発表②

「受かったよ」


 芝生の上に寝ころびながら、悠木にそう伝える。


「おめでと」


 同じく芝生の上に寝ころんだ悠木が、そう呟く。


「色々と、ありがとな」


 抱き合って合格の喜びを分かち合うとか。

 ワーキャー言いながらはしゃぎ合うとか。

 悠木と俺は、そんな関係ではないから。

 多分、これが一番、しっくりしているんだと思う。

 きっと、悠木には伝わっていると思うんだ。

 俺の喜びも、感謝も。

 だって、俺にはちゃんと分かるから。

 悠木が、ものすごく喜んでくれている事が。


 だから、そのうち寝息が聞こえてくるんだろうと思いきや、悠木は突然ムクリと起き上がり、俺の顔を覗き込んできた。


「しじょー。話がある」


 突然、何の前触れも無く、心構えをする間もなく、犯罪級に綺麗なグレーの瞳に目の奥まで覗き込まれたようで、俺の心臓は久々に爆音を上げ始めた。


「ななななんだよ」


 慌てて飛び起きてみれば、悠木は芝生の上でかしこまり、正座などして俺の方を見ている。


「何だよいったい」

「卒業式が終わったら、両親の所に行く」


 淡々とした口調で、悠木は俺にそう告げた。

 爆音の心臓が急速に冷やされ、温度差に耐え切れずに痛みを訴え始める。

 いや、温度差の痛みなんかじゃない。

 これは、悠木自身の口から現実を突きつけられたことによる痛みだ。

 悠木が遠くへ行ってしまうという、現実を。


「そっか」


 胸の痛みを無視し、俺は敢えて、何でも無い風を装って言った。


「黙って行くつもりなんだと思ってた」

「え?」

「聞いてたんだ、真菜さんから」

「・・・・そう」

「何でなにも言ってくれないんだろうって、思ってた」

「受験に響くと、悪いと思ったから」

「えっ」

「しじょーは、動揺しやすいから」

「なんだそれ」

「合格が決まったら、話そうと思ってた」

「そっか。つーか、落ちたらどうするつもりだったんだよ?」

「合格すると思ってたから」


 当たり前のように言って、悠木は笑う。

 俺より俺の事を考えて、俺の事を信じてくれていたんだ。

 全く、悠木には敵わない。



「しじょー」


 笑いを消して、悠木は続けた。


「離れても、それでも気になるなら、好き、なんだと思う」

「え?」

「だから、もう少し、時間が欲しい」


 これが悠木からの告白の返事だと気づくまでに、少し時間がかかってしまったけれど。

 気付いた瞬間、俺はなんだか気持ちが軽くなった気がした。

 返事というか、おそらく、考え抜いた末の、中間報告。

 それでも悠木は、ものすごく一生懸命に、そして前向きに、俺の想いと向き合ってくれていたんだ、ということが伝わってきたから。

 少し緊張気味の悠木に、俺は小さく頷いた。


「もちろんだ」


 それから昼休みが終わるまで、俺達は芝生の上に並んで寝ころび、温かい日差しを浴びながらのうたた寝を楽しんだ。

 これが俺たちの、学校での最後の昼寝になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ