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121.束の間の開放感

「どうよ?自信のほどは」

「ああ、ボチボチだ。夏希はどうだ?」

「あるに決まってるだろ。落ちたら悠木先生に殺される」

「そりゃ怖いな」


 滑り止め、本命、すべての受験が終わり、合格発表までの束の間、俺は藤沢と遊び歩いた。

 夏川も悠木も誘わず、男2人で。

 カラオケ、ゲーセン、ボーリング等々。

 バイクでぶらりと出かける事もあった。

 相変わらず、後ろに乗った藤沢は、ウザったいくらいにちょっかいを出してくるけれど。

 悠木は悠木で、夏川とその他の女子達と、色々出かけて歩いているらしい。

 モデルをやっている間は迂闊に出歩ける状況ではなかっただろうし、モデル辞めてからも、俺の勉強を付きっきりで見ていてくれたから、こんなに自由に大っぴらに出かけるなんて、悠木にとっては久しぶりだったんじゃないだろうか。

 特に夏川は、悠木を引っ張りまわして、服から何から色々とプロデュースしているとか。

 そのおかげか、悠木は見る度毎に、垢抜けていく感じだ。

 ・・・・元モデルに、垢抜けるもなにも、ねぇけど。


 受験勉強がとりあえずは終わった開放感は確かにあった。

 それから、合格発表を待つ間の、独特な緊張感も。

 でもそれ以上に。

 俺は怖れていた。

 悠木がここを離れる日が、近づいている事が。


「悠木、本命の受験日の朝に、お守り持ってきてくれたんだ」

「へぇ」

「『しじょーなら、絶対受かる』って」

「そりゃ、本気で落ちる訳にいかないなぁ」

「うん」

「ていうか、それ、惚気か?」

「なっ・・・・なんでそうなるんだよっ!」


 夕暮れ時の海。

 藤沢と2人で眺めながら、話すのはやっぱり悠木の事。

 まだまだ寒さの厳しいこの季節だが、それでもやっぱりこの海を藤沢と2人で眺めていると、どうにも俺の口は軽くなってしまうらしい。


「俺、まだ悠木から返事貰えてねぇし」

「告白のか?」

「うん。それに、海外行くっていうのも、悠木からは聞いてねぇし」

「そっか」

「あいつ、このまま行っちまうつもりかな・・・・」

「それは無いだろ」


 海を眺めたまま、静かに、だがきっぱりと、藤沢は言い切る。


「瑠偉は、そんな奴じゃない」

「・・・・そうだよな」

「ああ」


 藤沢が言うと、なんだか安心できる。

 そうだ。

 俺はずっと、不安だったんだ。

 受験の合否よりなにより、このうやむやな関係のまま、悠木と離れることになってしまうことが。

 でも、そうだよな。藤沢の言う通りだ。

 悠木はこんな状態のまま黙って海外行っちまうような、そんな奴じゃない。


「亜由実も、進路決定したって」

「どこ行くんだ?」

「料理の専門学校。有名な所らしい」

「へぇ」

「でな。俺に栄養たっぷりの旨い飯、作ってくれるんだって」

「・・・・なんだよそれ、惚気か?」

「もちろん」


 こちらを向いた藤沢の顔が、フニャリとデレている。

 夏川大好き藤沢は、今も健在のようだった。

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