表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/131

120.バレンタイン②

「ここ、2年連続で出題されてる。今年も可能性はあるかも」

「だな。頭に入れておいて損は無いな」


【傾向と対策】にも抜かりは無い。

 悠木先生は、入念に過去の出題傾向を調べ上げてくれていた。

 自分が受験する訳でもないのに。

 俺自身ももちろん、自分なりに過去の出題傾向を調べてはいたが、受験に【やり過ぎ】なんて言葉は、存在しないのだ。

 悠木先生の助言を有り難く頂戴しながら、俺はいつもと変わらず、過去問集に向き合っていた。

 ただ、1つだけ、今日は朝からずっと気になっていた。

 どうも、悠木の様子がおかしい。

 勉強を教えながら普通に爆睡する悠木先生は【おかしい】のがいつものことだが、今日の悠木はその点が【普通】なのだ。

 大抵、少なくとも小一時間くらいは居眠りをしておかしくないのが、今日は1分も寝ていない。

 加えて、どこかソワソワと落ち着きが無いように見える。


 俺の受験が近づいてきて、緊張しているとか?

 ・・・・まさか、な。

 俺に遠慮して、眠いの我慢してるとか?

 ・・・・それなら、有りうる、かも?


「悠木」

「えっ」

「眠いなら、寝ていいからな」

「・・・・うん」

「聞きたい事あったら起こすから」

「・・・・うん」


 何とも歯切れの悪い、悠木の返事。

 結局、帰る時間になるまで、悠木は一睡もしなかった。



「気を付けて帰れよ」

「うん」


 バイクで寮まで送って行く、という俺の申し出は、いつも悠木に断られる。

 こんなに勉強見て貰っているのに、せめて帰りくらいは送らせてほしいと、そう言っても、断られるのだ。

 事故にでもあって受験ができなくなったら大変だからと。

 結局今日も、いつも通り、帰る悠木を見送るべく玄関先に立っていると。


「・・・・これ」


 手にした鞄の中から小さな包みを取り出し、悠木はそれを俺に押し付けてきた。


「えっ?なに?」

「頭使うと、糖分、消費するから」

「・・・・はっ?」

「じゃ」


 あっけに取られている俺を放置して、悠木はさっさと玄関から出て行った。


「なんだよ、変な奴。・・・・変なのは前からだけど」


 1人呟きながら部屋に戻り、何気なくカレンダーを見た俺は。


「マジか・・・・」


 今日の日付は、2月14日。

 包みの中身を見れば、そこには手作りと思われる、可愛らしいチョコレート菓子。

 口に入れると、ほろ苦さの後に、じんわりとした甘さが口いっぱいに広がって。


「あ~・・・・幸せ」


 思わず俺は、そう口にしていた。


 別に、なんだっていいんだ。

 これが、義理チョコだろうが、友チョコだろうが。

 受験応援チョコだろうが。

 そんなこと、どうだって、よかったんだ。

 悠木からバレンタインにチョコを貰えたという事実だけで、俺は充分に幸せだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ