12.連行
「悠木・・・・悠木っ。鳴ってるぞ、スマホ」
昼休み。
いつものように隣で眠る悠木のポケットから鳴る音に、俺は悠木を揺さぶり起こす。
「ん~・・・・」
・・・・起きない。
起きる気配が、一向にない。
悠木は一度寝てしまうと、なかなか起きない。
放っておけば、このまま夜まで寝ていること、間違いなしだ。
最近ではようやく、昼休みの終わりの時間を体が憶えてくれたらしく、昼休み終わりの寝起きは良くなった。
確かにな。
今はまだ、昼休みが終わるまでには時間があるけど、仕方ないだろ。
お前のスマホ、鳴ってるんだってばっ!
「おいこら、起きろっ!電話に出ろっ!」
仕方なくペチペチと強めに頬を叩くと、悠木はようやく薄目を開けて、面倒そうにスマホを取り出し、耳に当てた。
「はい・・・・はい・・・・えっ・・・・あぁ、まぁ・・・・」
チラリと悠木が俺を見る。
えっ?なに?
何か俺に関係あんの?
まさか、な。
なんだかイヤな予感がしたものの、悠木はすぐに視線を落として、そのまま相手と話をしている。
「たぶん。・・・・はい」
通話を終えてスマホをポケットにしまうと、悠木は俺を見て言った。
「しじょー。頼みがある」
「ん?」
「今日だけ、モデルやって」
「・・・・はぁっ?!」
「バイト代、出るから」
明確にNOと言わなかったから、OKだと解釈したのだろうか。
俺の返事を待つことなく、悠木は再び目を閉じ、さっさと眠りについていた。
いやいや。
驚いて、声も出なかっただけで、俺、やるなんて言ってないぞ?
つーか、普通のバイトならともかく、モデルなんて!
俺みたいなフツーの(少なくとも、フツーくらいではありたいと思っている)奴が、できる訳ないだろっ!
バカなのか、悠木。頭はいいくせに。
お前、自分の顔面偏差値、どんだけ高いと思ってんだよ?
俺は知ってんだぞ、お前のほんとの顔。
あんなの見せられて、それでも『やります』なんて、言えるかっつーのっ!
悠木が起きたらすぐ断ろう。
そう思っていたのに。
再び悠木のポケットから鳴りだしたスマホのせいでそれも叶わず。
「しじょー、悪い。午後休んで」
「はっ?」
俺はそのまま、悠木と悠木を迎えに来たマネージャーに、現場へ連行されたのだった。




