118.クリスマス④
藤沢が買ってきてくれたチキンを食い。
俺が作った稲荷ずしを食い。
夏川が作ってきてくれたケーキを食い。
悠木サンタからクリスマスプレゼントを貰い。
クリパという名の『悠木の夏川への告白』イベントは、つつがなく終了した。
ちなみに、悠木サンタからのプレゼントは、4人お揃いでそれぞれにイニシャルの刺繍が施された、ブランドハンカチだ。
藤沢も俺も、そして悠木自身もブランドには疎くてあまりよく分からなかったのだが、夏川が目にしたとたんに大騒ぎしていたところを見ると、結構なハイブランドなのだろう。
別に、ハイブランドだから、という訳ではないけど。
4人お揃いで。それぞれにイニシャルが入っていて。
そんな特別感のあるプレゼントが、俺にはすごく嬉しかった。
「あっという間だったな」
「うん」
俺的には、今までで一番印象に残るクリパだったんじゃないかと思う。
そりゃ、去年一昨年と、悠木と2人で過ごしたクリスマス・イブも、忘れられないものではあるけれど。
卒業後に海外に行ってしまう悠木には、少しでも楽しい思い出を作ってやりたい。
一生忘れられないくらいの、楽しい思い出。
それには、俺と2人だけより、4人の方が絶対に楽しいはず。
おまけに、『夏川への告白』という、悠木自身の希望も叶えられた事だし。
「楽しかったか?」
「うん」
藤沢と夏川が帰ったリビングで、悠木は玄米茶を啜りながら、ニコリと笑う。
「良かったな」
「うん」
再び玄米茶を啜りかけた悠木が、そのままの姿勢で動作を止め、俺を見た。
「しじょーは?」
「え?」
「楽しかったか?」
何を心配しているのだか、悠木は顔を曇らせて、俺の反応を窺っている。
お前が楽しいなら、俺も楽しいに決まってるだろ。
ほんとはそう言いたかったけど。
「もちろん」
という答えに留めておいた。
俺自身の想いは、悠木には一度伝えている。
答えを聞くまで引くつもりはないけれど、あまりガンガン押すのも良くないだろう。
「良かった」
そう言うと、悠木は安心した顔をして、再び玄米茶を旨そうに啜った。
「なぁ・・・・ひとつだけ、聞いていいか?」
「なに?」
実はずっと、俺には気になって仕方が無い事があった。
それは、和室での夏川と悠木の会話。
仕方ないだろう、俺だって、思春期真っ盛りの男だぞ?
でも、悠木は言わば、男性恐怖症でもあるからして。
ここはゆるっと、遠回しに・・・・
「さらしの件なら、ノーコメント」
聞くより早く、悠木から牽制が入ってしまった。
「・・・・了解」
落ち込みが、顔に出てしまったのだろうか。
俺の顔を見て、悠木が小さく笑う。
さて。
そろそろギアを切り替えるか。
泣いても笑っても、あと半月もすれば、受験が始まる。
まずは、大学入学共通テスト。
「勉強するなら、つきあう」
「ああ、サンキュ」
悠木は明日から始業式の前日まで、海外の両親の元へ戻ると言う。
だから、その前にできるだけ、俺の勉強を見てくれるつもりなのだろう。
俺は俺で、夏期講習を受けた同じ塾の、冬期講習を受ける予定だ。
受験直前講習だ。
俺自身の為であることはもちろんのこと、付きっきりで勉強を見てくれた悠木の為にも、絶対、落ちる訳にはいかない。
「俺、絶対合格するから」
「うん」
悠木は当然のように頷き、笑った。




