117.クリスマス③
「あ・・・・あの、夏川さん?」
ルイの正体が悠木であると分かってから、悠木が困ってしまうほどに、夏川は悠木を色々な方向から観察し始めた。
「亜由実、食わないなら、俺、食うぞ?」
「ダメ。私の分は私が食べる」
そう言いながら、夏川はなおも、悠木を遠慮の無い目でじっくりと眺め続ける。
やがて、満足したのか納得したのか。
夏川は言った。
「言われてみれば、そうよね。うん。何で気付かなかったのか、自分でも不思議だわ。全てのパーツが、ルイなのに。特に、この瞳っ!」
両手で悠木の頬を包み、夏川は悠木の瞳を覗き込む。
「「おいっ!」」
それは、藤沢と俺が思わず声を上げてしまうほどの、至近距離。
「こんなに綺麗な瞳に、今までなんで気付かなかったんだろう、あたし・・・・」
「ああああのっ、夏川さんっ?ちょっと、近い・・・・」
「あ、ごめんね、悠木」
あっさりと悠木の顔から手を外した夏川だったが。
次の瞬間。
「キャッ!」
聞こえてきたのは、今まで一度たりとも聞いた事の無い、悠木の小さな悲鳴。
見れば夏川は、悠木に正面から、抱きついていた。
『キャッ!』って・・・・今悠木、『キャッ!』てっ!!
やべっ、メチャクチャ可愛いっ!
思わずデレそうになった俺だが、夏川の取った行動に、目が点になる。
「ねぇ、悠木。モデルの時って、もっと背、高かったよね?」
「シークレットシューズ」
「ああ、そっか。で?胸、どうしてんの?」
「えっ」
「ブラ、触れないんだけど」
言いながら夏川がゴソゴソと弄っているのは、悠木の背中。
「そ・・・・それは・・・・」
顔を赤くした悠木が、夏川の耳に口を寄せて何やら呟くと。
「はぁっ?!さらしっ?!」
「ちょっと、あのっ」
「そんなんしてたら、形悪くなっちゃうでしょっ!」
「夏川さんっ!」
「あ、ごめん。男どもに聞かせる話じゃなかったわね」
悠木の抗議の声に、いつの間にかガン見していた藤沢と俺の視線に気付いたのか、夏川はいったん悠木を開放し、そのまま肩を抱くようにして俺達に背を向ける。
「四条、和室借りていい?」
「あ、ああ、いいけど」
そして2人連れだって、暫くの間、和室に引きこもっていた。
『ちょっ、夏川さん・・・・』
『いいからいいから、ほら、ちゃんとして』
『でもっ』
『安心して、この亜由実さんに任せなさいって』
『きゃっ』
『ほら~、こんなに綺麗な形潰しちゃ、もったいないよ?』
和室から微かに聞こえて来る夏川と悠木の声に。
俺達男2人は、耳をダンボにしながらも、聞こえない振りをして、黙々とチキンにかぶりついていたのだった。




