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114.悠木の相談④

「で、いつの間に『亜由実』呼びなんだ?」


 藤沢のことだ。

 夏川絡みの話なら、絶対デレて照れまくるに違いないと踏んだのだが・・・・


 ”ん?なんだ?妬いてるのか?”

「はっ?」

 ”なんだ、可愛い奴だな、夏希は”

「ちょっ、やめろ、気持ち悪りぃな」


 俺の予想に反して、藤沢は更に俺をからかい続ける。


 ”なに照れてんだよ、夏希。俺とお前の仲だろ?俺のことも、圭人でいいぞ”

「アホかっ!」

 ”なんだよ・・・・呼んでくれないのかよ、冷たいなぁ、夏希は。・・・・もしかして、ツンデレか?”

「お前、いい加減にしろよ?」

 ”あはははははっ!”

「俺を受験勉強のストレス発散のはけ口にしてるな?」

 ”あ、バレた?”


 悪びれもせず、藤沢はさらりと認め、更に笑い続ける。


 ”あー、笑った笑った、面白かった!腹痛えや”

「お前なぁ・・・・」

 ”でも、瑠偉にはちゃんと連絡してやれよ?あいつほんとに、お前のこと心配してたからな?”

「わかったって」

 ”じゃ、な。夏希”

「ああ・・・・っておいっ、藤沢てめっ」


 文句を言おうにも、既に通話は切られたあと。


「勝手に下の名前で呼ぶんじゃねぇっ!」


 既に待ち受け画面に戻っているスマホに構わず、俺は叫びをぶつけた。


 俺は、自分の名前が、昔からどうにも好きではない。

 小さい頃から、よく女に間違われていたから。

 小学生や中学生の頃などは、よく『ナツキちゃん』『ナッちゃん』などと、からかわれもした。

 思春期の男子にとっては、トラウマになりかねない経験だ。

 でも。

【ルイの彼女は同じ年の『夏希』って子】だと、真菜さんが言っていた。

 こんな俺の名前だからこそ、ルイの『彼女』として使えたんだろう。

 あれは正直言って、俺の名前が『夏希』で良かったと、人生で初めて思った瞬間かもしれない。


 ま、でも。

 藤沢なら、いいかな。


 ふと、そんな気持ちになったことに、自分でも驚いたが。


 悠木にもいつか、呼んでもらえるだろうか。


 そんなことを思った自分に、更に驚く。


 いつか、なんて。

 こないかもしれないのに、な。


 胸の奥の小さな痛みに気づかない振りをして、俺は悠木に電話をかけた。


 数度のコールの後、悠木はすぐに出たのだが。


 ”しじょーのバカ”


 出るなりそう言い、いきなり通話を切られてしまった。


 えっ?

 ・・・・えぇっ?!


 どうやら藤沢は、悠木に俺の勘違いを先に教えていたらしい。

 悠木の声は、かなり機嫌の悪そうな声だった。


 藤沢よ、それならそうと、先に教えておいてくれないだろうか?

 機嫌が悪いって分かってる悠木に電話するなら、俺にだって、心の準備というものが必要なんだぞ?

 つーか。

 悪いの、俺だけかっ?!


 しばし悩んだが、もう一度悠木に電話をかけてみる。


 ”なに”


 聞こえてきたのは、やはり、先程と変わらぬ、ものすごく機嫌の悪そうな悠木の声。

 思わず、全面的に謝ってしまう。


「あ・・・・あの、悪かった。ごめん」


 スマホ越しに聞こえてくる、大きなため息。

 ここはもう、全面降伏するに限るだろう。

 それが一番の、平和への近道だ。


 ”しじょー”

「はい」

 ”恋愛の形は、それぞれだけど”

「はい」

 ”私の恋愛対象は、男だから”

「はい・・・・え?」


 えっ?

 悠木、今、なんて・・・・?


 などと、聞き返せる雰囲気では、もちろんなく。


 ”課題、明日見に行く”


 機嫌が悪いままの悠木に、再び電話を切られてしまった。

 だが、暫くの間、俺の頭から悠木の言葉が離れることはなかった。


 悠木の恋愛対象は、男。


 だとしたら。


 俺はその対象に、いつかなることができるのだろうか・・・・

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