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113.悠木の相談③

 ”よー、四条。参ってるか?”

 

 笑いを含んだ、藤沢の第一声。

 

「なんだそれ」

 

 藤沢よ、お前、そんな悠長な事言ってる場合か?

 夏川のことどうするつもりだよ?

 

 重たい体を起こしながら、文句の1つも言ってやろうと口を開きかけたとたん。

 

 ”いや~、面白いからもうちょいこのまま様子見してようとも思ったんだけど”

 

 訳の分からない藤沢の言葉に、文句を飲みこんで先を促す。

 

「なにがだよ」

 ”瑠偉が、相当心配してるみたいだからなぁ”

「だから、なんだよ?」

 ”四条、お前ほんとにわからないのか?”

「だから、なにがだよっ!」

 

 揶揄うような口調にイラつき始めた俺の耳に、藤沢の言葉が殴り込みをかけてきた。

 

 ”瑠偉の相談は、ただ、亜由実に『モデル・ルイは自分なんだって明かそうと思うんだけどどうしよう?』っていう相談だぞ?”

 

 亜由実・・・・?

 ルイ・・・・?

 ・・・・は?

 なんだ、それ?

 

「へっ」

 

 思わず、呆けた声が口から洩れる。

 藤沢はとうとうスマホの向こうで笑いを爆発させた。

 

 ”あはははははっ!も~、ほんとお前、瑠偉の事、大好き過ぎ”

「えっ・・・・ええっ?!」

 ”まー、瑠偉も瑠偉だけどさ。でもまさか、四条がまんまの意味で取るとは、さすがの瑠偉も思わなかったんだろうなぁ。つーか、普通思わないだろ、瑠偉が亜由実に告るなんて”

 

 あははははっ!と。

 おそらく、藤沢はスマホの向こうで腹を抱えて笑い転げてでもいるんだろう。


 つまり、なんだ?

 悠木が夏川に告白するってのは、自分が実はルイなんだとバラしてしまいたい、ってこと、か?

 ・・・・まったく、紛らわしい言い方すんじゃねぇよっ、悠木のバカっ!

 

 ”いや~、瑠偉絡みだと、ほんと四条って、滅茶苦茶可愛い反応するよなー”


 スマホの向こうでは、まだ藤沢が笑い続けている。


 そりゃ、・・・・第三者だったら、こんな滑稽な話なんて、そう無いだろうからな。

 面白いこと間違いなしだろうけど。


 バッチリ当事者の俺からしたら、面白くもなんともないわっ!むしろ、不愉快だっ!

 何が不愉快って・・・・他の可能性を一ミリも考えることが出来なかった、俺自身の余裕の無さと器の小ささ!

 確かに。

 男とか女とか、そんなことはこの際置いておくとしても。

 悠木が、自分の幼馴染みでもある藤沢っていう彼氏がいる夏川に、平然と告る訳、無いよなぁ?

 しかも、その相談を、つい最近悠木に告白したばっかの俺に、する訳無いよなぁ?

 おまけに、藤沢が、そんなことを俺に協力なんかさせる訳、無いよなぁっ!

 もーほんと、自分のアホさに腹が立つっ!


「うるせーっ、ほっとけっ!」


 半ば八つ当たり気味に藤沢に言葉をぶつけるも、


 ”へ~。ほっといて、いいいんだ?”


 と、藤沢は含み笑いを隠そうともしない。


「なにが」

 ”1人で悶々としてたんだろ?今だって”

「・・・・っ」


 藤沢には全てお見通しのようで、結局何の八つ当たりにもなりゃしない。


 ”瑠偉から電話があったんだよ、四条の様子がおかしいって。あいつ、すげー心配してたぞ?あとで電話してやれよ?”

「・・・・ああ」


 悔しいが、ここは素直に藤沢の言葉に従うとして。

 それでもなんとか一矢報いてやろうと、俺は反撃の狼煙をあげた。

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