11.1日遅れのプレゼント
悠木に祝ってもらった、俺の誕生日翌日。
登校途中、いつも以上の力で思い切り背中をどつかれ、あやうく前のめりに倒れそうになった俺の目の前に、可愛くラッピングされた袋が差し出される。
「1日遅れたけど。おめでと」
見れば、仏頂面の夏川が、俺のすぐ横に立っていた。
やっぱり。
夏川も祝おうとしてくれてたんだな、俺の誕生日。
なんだか少し、申し訳無い気持ちになる。
「サンキュ。昨日はその・・・・悪かったな。ダチと先約があったから」
俺の態度が予想外だったのだろう。
夏川は驚いたような顔で、仏頂面を和らげた。
「ううん、四条にだって、予定くらいあるよね。あたしも、ごめんね」
たまにすげー可愛いんだよな、夏川の奴。
いつもこれくらい素直だったら、俺も少しは・・・・
「ね、開けてみて」
「あ、あぁ」
その場でラッピングのリボンを解いて、袋の中を見てみると。
中に入っていたのは、いつか無理やり夏川に付き合わされた買い物の途中で見つけた、俺が好きなブランドのTシャツ。
その時は手持ちが無くて買えずに諦めて帰って来たのだが、いつか買いに行こうと思っていたものだった。
「夏川、これ・・・・俺、欲しかったんだよ!すげー嬉しい!」
「良かった」
少しだけ顔を赤くして、夏川は嬉しそうに俺を見ている。
これこれ。
こいつがいつもこうなら、俺だって・・・・
ん?
俺だって、なんだ?
「あ、もう行かなきゃ遅刻しちゃう!」
ふと腕時計を見た夏川が、俺の手を取り走り出す。
「ちょっ、おい、待てっ!」
「遅刻だよ、遅刻っ!やばいって!!」
遅刻もやばいけど、仲良く手なんか繋いで一緒に遅刻は、もっとやばくねぇかっ?!
焦る俺をよそに、夏川は俺の手を離すことなく走り続ける。
「でさ。昨日の友達って、誰なの?あたしの知ってる人?」
「あー、どうかな。悠木、っていうんだけど」
「ユウキ?」
「夏川は知らないかもな。あいつ、友達少なそうだし。あ、でも、藤沢とは仲いいみたいだけどな。幼馴染みらしい」
「ふ~ん・・・・」
やはり夏川は、悠木の事は知らないらしい。
まぁな。
クラスに居たって、存在感の無い奴だし。
クラスの違う夏川なら、知らなくて当然だろう。
俺だって、あの日渡り廊下から下を見ていなかったら、未だに悠木の存在すら知らなかったと思う。
本当は、夏川になら言ってもいいかな、とも思った。
悠木が実は、噂のイケメンモデルだって事。
別に悠木は、俺に口止めはしなかったし。
でも。
何故だか言ってはいけないような気もしていた。
これは、悠木と俺だけの秘密だ。
いや、もう一人いたか。
藤沢圭人。
あいつも知っているはずだ。何しろ悠木にあのダサいカッコを勧めたのは、藤沢だってことだから。
何故だろう。
あいつの事を考えると、なんだか気分が悪くなる。
まぁ、仕方ないよな。
理由も分からず、睨まれたんだから。
「良かった、ギリセーフっ!」
夏川と手を繋いだまま、校門を駆け抜ける。
「じゃ、今日の帰りは空けといてね。1日遅れだけど、お祝いしよ」
「あ、おう」
繋いだ手を離すと、夏川はそのまま自分のクラスへと走っていた。
俺は、というと。
案外可愛い所あるんだよな、夏川の奴。
そんなことを思いながら、小さくなる夏川の後ろ姿をぼんやりと眺めながら、ノロノロと自分のクラスへと向かったのだった。




