表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/131

101.夏休み①

 夏休みに入ると同時にバイトを辞めた俺は、すぐに親父とかーちゃんの所へ帰り、大学受験することを正式に伝えた。

 というか。

 お願い、だな。

 バイトで少しは金は貯めたものの、受験料や学費はほとんど、親父たちに出してもらう事になるんだ。

 正直なところ、俺にはまだやりたいことなんか分からない。

 だから、大学に行かせて欲しい、と。

 親父たちは、全面的に賛成だった。

 もとから、大学進学を勧めてくれていたくらいだ、反対されるとは思っていなかったけど。

 1つだけ、心配されたことがある。

 塾には行かなくていいのかと。

 ここのところの俺の成績はもちろん、親父たちも知っている。

 飛躍的な伸び具合に、2人とも驚いていた。もちろん、悠木に勉強を教えて貰っている事も伝えている。

 だけど、学校の勉強と受験の勉強とは別物だと、親父は言った。


「瑠偉ちゃんに教えて貰ってるなら間違いないとは思うけど、夏休みとか冬休みの間だけでも、塾の講習、受けてみたら?」


 かーちゃんにもそう勧められ、俺は悠木が海外の両親の所へ戻っている間、藤沢が通っている塾の夏期講習を受けることにした。



「四条、今日どうだった?」


 夏期講習初日の帰り道。

 藤沢と2人、並んで歩く。


「うん、なんとか付いていけるんじゃねぇかな」

「そっか。やっぱすげーな、瑠偉は。俺も瑠偉に教えて貰いたかった」

「超スパルタだけどな?」

「・・・・やっぱお前に譲る。俺、スパルタ、無理。褒められて伸びる子だから。四条はMだからいいんだな」

「おいっ、勝手に人をM扱いすんなっ!」

「え?違うのか?だって、スパルタの瑠偉が好きなんだろ?」

「・・・・なんか違う、それ」


 夏期講習のテキスト問題も、それなりに難しくはあったが、悠木にさんざん鍛えられていた俺には、それほど手こずるほどのものでも無かった。

 ただ、確かに、学校の勉強とは明らかに違う。

 言ってみれば。


 学校の勉強は、純粋に、学ぶためのもの。

 受験の勉強は、落ちないためのもの。

 たとえば、


【ここ、●●校の入試ではよく出題される傾向にあるから】


 などと言う情報は、やはり塾ならではのものだろう。

 さすがの悠木も、ここまでの情報は持ち合わせていない。


「で、瑠偉いつ帰って来るんだ?」

「多分、来週くらい」

「どうすんだろな、あいつ」

「え?」

「進路、だよ。四条、何か聞いてないのか?」

「あ~・・・・」


 そう言えば、と思い出す。

 悠木に聞いた事は、あった。

 でも、答えは聞いていないはず。

 あの時はまだ、悠木も迷っていたんだろうか。

 それとも。

 答えをはぐらかされたのだろうか。


「まー、あいつなら、どこ受けたって楽勝だろうけどな」

「だな」


 どうやら悠木は、藤沢にも進路の話をしていないようだ。


 本当に、どうするんだろう。

 大学、行くのか?

 それとも。

 本格的に、モデル一本でやっていくのか?

 ・・・・このまま?男として?

 それであいつ、本当にいいのか・・・・?


「じゃ、また明日な!」

「ああ」


 藤沢と別れ、家に戻って、夏期講習のテキスト問題を解きながら、悠木の事を考える。


 受験が終わったら。

 卒業したら。

 悠木は、どこに行くんだろう?


 当然、問題なんか、解ける訳が無い。


 悠木と俺は、どうなるんだろう。

 もう、会えなくなるんだろうか・・・・


 ここにスパルタ悠木先生が居たならば、きっと、心底ゾッとするような冷たい瞳で、俺を見るに違いない。

 そして言うんだ、きっと。


『やる気ないなら辞める』


 と。


 やる気は、あるさ。

 でも。

 受験が終わったら・・・・


 このままじゃきっと、受験どころじゃない。

 俺はきっと、ダメになってしまう。

 多分、今だ。

 今が、その時。


 俺は小さく頷き、テキストを閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ