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100.スクープ!②

 だが。

 息を詰める俺の前で、夏川はとんでもない事を言いだした。


「このNさんて、あたし、じゃないよねぇっ?!」

「・・・・はぁっ?」


 なんだ、そっちかよ。

 随分盛大な勘違いだな。


 一気に、体中から力が抜ける。

 心から安心して大きな溜め息を吐きながら、俺は一応聞いてみた。


「なんでそうなるんだよ・・・・」

「だって、だってさ。あたし、Nでしょ?夏川だから。それに、今年は無かったけど・・・・去年、ルイからホワイトデーのカード貰ったの、多分あたしだけだし。『オレの可愛い亜由実ちゃん。』って、書いてあったし!しかも、『料理が上手で優しくて信頼できる人』なんて、まんまあたしじゃんっ!」


 あ~どうしよう、でもあたしには藤沢がいるし。ルイのことは好きだけど、藤沢のことは大好きだし!

 ルイの方が絶対的にカッコいいけど、藤沢だってカッコいいし、それに私の事すんごく大事にしてくれるし!


 などと。

 夏川はひとり、俺の前でモダモダしながらノロけまくっている。

 藤沢が居ないところを見計らって俺だけに伝えてきたところを見ると、あれから藤沢の前でルイの話をすることは避けるようになったのだろう。

 夏川なりに気を使っている、というところか。

 でも。

 今のこの姿なら、藤沢が見たって、嫉妬しないかもしれないけどな。

 あー、今の言葉、藤沢にも聞かせてやりたかったな。

 あいつその場でフニャフニャに溶けて、バターにでもなりかねないけど・・・・。


「Nがお前な訳、ねぇだろ」

「なんでよ?」

「なんでも、だよ」

「・・・・四条、もしかして」

「ん?」

「Nさんが誰か、知ってたりする?」


 相変わらず、夏川は変なところで勘が鋭い。

 一瞬言葉に詰まっていると。


「うるさい」


 会話を断ち切る、不機嫌極まりない悠木の声。


「あっ、ごめんね、悠木」


 慌てて夏川が謝るも、悠木は目を閉じたまま。


「お前、そんなバカなことばっか言ってんだったら、もう教室戻れ」

「え~、すごいスクープだと思ったのになぁ」


 結構本気モードでガッカリしながら、夏川はそのまま教室に戻って行った。


 今、隣にいる悠木はまだ目を閉じたままだが、寝息は聞こえてこない。

 きっともう、起きているのだろう。

 そして。

 夏川と俺の話を、バッチリ聞いていたはずだ。


「誰なんだろうなぁ?Nさんて」


 知っていながら、俺はそっと、悠木にだけ聞こえるくらいの小さな声で呟いてみる。


「俺も一応、Nなんだけどな」


 案の定。

 狸寝入りの悠木からは、何の答えも返ってこなかったけど。

 ほんのりと頬が染まっていたのは、俺の気のせいではないはずだ。

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