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No Heart, No Emotion 修正済み

「でも、どうやって勝てばいいんだ?」

「そもそも、言葉通じるのかしら?」

僕の質問に、美波は自分の疑問を上乗せしてきた。

「自分が得意なジャンルで勝てばいいんだったな」

「じゃ、俺はクラスの女子のスリーサイズかな」

「ハハ、お前はやっぱり馬鹿だな。ここはやっぱり、女子のパンツの色だろ」

翔太と圭介はこの状況でも全くブレないのはそういうキャラなのか。と思っていると梨沙は既に自分のクローンを見つけ出し、話しかけていた。

「じゃ、小学三年生までに習う漢字を読めるかって言う対決はどう?」

梨沙の提案にクローンは、

「分かりマシタ。では、交互に問題を出すというコトで。どちらから始めマスカ?」

「そっちからどうぞ」

「では…」

クローンはどこからか紙とペンを取り出し、何かを書いた。

「研究」

梨沙は紙を受け取ると、静かにつぶやいた。

「週末」

今度はクローンが言葉を発した。

「辞典」

「白魚」

「事件」

「宿題」

……

梨沙とクローンは伝言ゲームのように紙を受け取る、口を開く、音を出す、紙を手渡すという行為をただ淡々と続けていた。

「ロボットのわりにはしっかり勉強してるようね。じゃあ」

「ヒガシグモ」

「残念。それは"しののめ"と呼ぶのよ」

「ナ…」

クローンが口を閉じたかと思うと、何かが破裂するような大きな音がしたと思ったら、クローンの頭から煙が出ていた。

「どうやら、私の勝ちのようね」

梨沙はクローンに背を向けて、僕達の方に歩いてきた。

「負けたら、クローンも爆発するようね」

みんな梨沙に関心して、口を開かなかったが、ついに馬鹿二号の圭介が苦笑いをした。

「で、でも簡単じゃねえか」

「ま、確かに簡単よね。あんたみたいに馬鹿じゃなければね」

「何? 俺だって別にできるよ。小六ぐらいまでなら」

「違うわよ。本当に人間並みの想像力があるかって聞いてるのよ」

「ん、どういう意味だ?」

「全く、そんなんじゃあんたは絶対死んでるわね。いい、あのクローンとやらは確かに今回のトピックに関しての知識は完璧だった。たぶんそれは他のトピックでも同様。でも、あいつらは多少ひねりを加えると簡単に崩れるの。そのひねりを考えるだけの力が人間に備わってるかってことが勝負の決め手なのよ」

「つまり、梨沙は小三で習う漢字でも読み方が小三で習わない漢字を選んだって事だ」

和弘が梨沙のやってのけたことを要約した。

「習う、読み方、違う漢字?」

ここで、僕にもやっと理解できた。

「あんた達ほんと、馬鹿なのね。クローン以下だわ」

「そんなこと言わないの、梨沙」

微笑んだ美波が後ろから梨沙の肩に手を置いて、前に出た。

「だから、さっき梨沙が言った、東雲。文字一つ一つは小学三年までには習う漢字だけど、東雲っていう言葉自体は小学校低学年では習わないでしょ。だから、クローンは小三レベルの知識しかないから読めないって事よ」

「てことは四字熟語とかでもいいんじゃないか?」

「そうね…」

僕の発言に梨沙は生返事をし、窓の外を眺めた。

「あ~。なるほど」

圭介と翔太は互いを見合い、頷くと、同時に後ろで立っているクローンに目を向けた。

「じゃあ、やっぱり俺は女子のスリーサイズだな」

「じゃあ、俺は女子が今何考えているかを当ててやる」

「ちょっと、待ったぁ!」

つい、僕は彼らを止めてしまった。いや、一応仲間だから、〝つい〟はおかしいか、と思いながらも二人の肩を握った。

「何だよ」

「お前も参加したいのか? じゃあ、俺のパクるなよ」

「いや、おかしいだろ」

「何が?」

「何が?」

「梨沙の話聞いてたか? 圭介の女子が今考えてることなんてもってのほかだけど、女子のスリーサイズも、どっちも確証ないだろ」

「そうよ。もっと真剣に考えないと」

「ま、あんた達が本当に私達のスリーサイズと今考えてることが分かる超能力者なら話は別だけど」

「おう、分かるぜ。梨沙はバスト五十…」

「言わんでいい!」

梨沙は翔太と圭介に向かって、拳を思いっきり当てた。

「ん、何やってるんだ、お前ら」

ふと、後ろを見たら和弘が立っており、右手にはクローンの指を握っていた。

「うえぇ。何してるんだ、和弘」

「何してるんだって、勝ったから今からこの指食べようとな」

「え、もう終わったの?」

美波が怯えるように僕の後ろに隠れながら言った。

「ああ、ひらがな対決で勝ったからな」

「ひ、ひらがな?」

「ひらがなって、お前それ、俺でも全部言えるぞ」

「じゃあ、お前、これなんて読む?」

和弘は空いる左手で、メモ用紙を翔太に見せた。

「んん? 何だこれ? こんなひらがな見たことないぞ」

「おい、梨沙教えてやれ」

和弘はため息をつくと、梨沙に紙を手渡した。

「嫌よ。それに私もクローンから指持ってこなきゃ」

「あ、私それ、見たことあるよ」

俺の隣でその紙切れを覗き込んでいた美波が口を開いた。

「それね、〝ウェ〟って読むんだよ」

「う、うぇぇ?」

「そ、お父さんが教えてくれたんだ。昔の日本語にはこの〝ウェ〟と〝ウィ〟があるんだって」

「へぇ~」

二人は納得したように左手を右手に作った拳で叩いた。

「そう、その〝ゑ〟は昔のひらがなにしかないワード。たぶん、ひらがなと聞いて自動的に昔のひらがなを自分のストレージからリジェクトしたんだ。一度、リジェクトすると、勝負がつくまで、そのメモリーは戻ってこない。いかにもロボットらしいな」

「横文字ばっかりで、意味わかんなくね」

「ああ、俺はてっきり和弘は日本人かと思ったぞ」

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