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Rebel From Your Destiny 修正済み

「やべぇぞ。早速出くわしたのか? 修平と梨沙に」

「ハァ、ハァ。…もうダメ」

美波は列の最後尾で重そうな足を無理やり動かしていた。

「あと、もう少しだ。そこの角曲がったら、俺達がいた食堂だ。その食堂の窓を突き破って外に出れば、逃げ切れるはずだ」

「で、でも、ハァ。こんなに大勢だったら…」

和弘の横で走る梨沙は顔が少し青ざめていた。

「分かってる。こんだけいると、外に出た時目立つし、他のクローンに気付かれる可能性がある。美波があんな状態じゃあ、校庭で振り切ることはできない。たとえその見つかった奴が美波のクローンじゃなくて、例えば翔太だったら、あいつを囮に使ってお前らを休ませるが、間髪入れずにほかのクローンが攻め込んで来たら、美波かお前の場合確実にアウトだ」

「だったら…このまま学校の中でやり過ごすのがいいんじゃない?」

僕の問いに和弘は息切れもせず返してくる。

「いや、それだとどこかに隠れなくちゃならない。自分の死が迫ってる状態でどこかに隠れるのは危険だ。冷静な判断ができなくて隠れられそうな場所を見つけると迷わずそこに直行しちまう。そんな粗末な思考でクローンを出し抜けるとは思えない。それにそんなところに隠れると俺たち自身に過剰なプレッシャーがかかって逆に疲れてちまう。今重要なのは疲労回復による精神安定で体制を立て直すこと。誰かが走る音、誰かが泣き叫ぶ音、何かを斬る音、何かがぶつかる音、目を瞑っても、絶え間なく様々な音がなだれ込んでくるこの状況下では、とにかく冷静でいることが一番大事だ。それが今回の実験の勝敗を分ける」

突然、心療内科医のような言葉遣いに、僕は戸惑った。

「だから俺が囮になって、奴らを引き付ける」

「え、でも」

「おい、圭介。お前まだ走れるよな」

「あ? あぁ。まだいける」

僕達三人の前方を走る圭介と翔太は同時にこちらを見た。

「よし、俺とお前で囮になって、ひとまず修平たちをここから逃がす。翔太は美波のアシストだ」

「え? ああ、分かった」

突然、和弘が声を荒げた。

「いいか、よく聞け! 今からこのチェイスからの離脱を図る。まず、俺達六人を二手に分ける! 俺と圭介はあの角を曲がったらそのまま、直進してクローンを引き付ける。その間に残りの四人はすぐ近くの教室に入り、クローンが去っていくのを待つ。ほとぼりが冷めたら、食堂の窓から脱出、安全なところに隠れる。俺達もクローンを引き付けながら、近くの教室の窓から校庭への脱出を試みる! いいな!」

「よしゃあ!」

「分かったわ」

「そう…」

美波は今にも足が止まりそうなところを和弘が速度を落として並走し、思いっきり引っ張った。

「よし、もうすぐだ。翔太、圭介。お前らのやること分かってるな?」

和弘は二人に念を押した。

「おおよ」

そうして僕達六人は食堂が右手に見える廊下に来ると、僕、翔太、梨沙が左手にある、第一理科室の中に飛び込んだ。美波が遅れて、和弘に思いっきり押されて、教室の中に入ってきた。

その時を待ってましたとばかり、扉のすぐ横に立っていた翔太が理科室の扉を素早く締めた。

「これで、後はクローンたちが…」

「ここを通り過ぎてくれるのを祈るだけね」

梨沙は疲労困憊の美波を抱きしめながら言った。

程なくして、あたりはすっかり静かになった。

「も、もう大丈夫じゃねえか?」

「そ、そうだな…」

「俺が最初に出る、お前らは後からついてこい」

珍しく翔太がすごく頼りになると感じた。

その翔太が扉を開けてまるで交差点を渡るように右左をに三回確認すると、僕達に手で合図を送り、そのまま斜め向かいの食堂へと走り出した。

「立てる、美波?」

「うん…」

続いて、美波を支えた梨沙、そして僕の順に食堂へ早歩きで向かった。

「よし、こっから出るぞ」

既に翔太が、学校の裏庭へと続く窓を全開に開いていた。

「美波、まずお前からだ」

翔太は窓のへりに立ち、美波を梨沙から受け取り、窓の外へ連れ出した。

食堂の窓は固定式じゃないため、常に窓の両側を誰かが抑えてなくてはならなかった。僕は翔太とは反対側の窓を身を乗り出して手で押さえていた。

「よし、ほら、梨沙も」

やはり、いつもと違い翔太がこの状況で大変頼もしく思えた。

「ふん、何よ。こんな時だけかっこつけちゃって」

それを梨沙も感じたのだろう。

そして、僕が窓から手を放し、代わりに翔太の手を握ろうとしたその時、三人の背後から誰かが追いかけて来た。

「やばい、梨沙逃げろ! お前のクローンだ!」

梨沙は反応が遅れ、振り向いた時にはクローンとの距離が十メートルもなかった。

僕は必死に窓を飛び越え、梨沙を逃がそうとしたが、この距離じゃ、クローンの方が梨沙に近いとわかった。

「梨沙~!」

梨沙は何もせずただ呆然と立ち尽くすのみだった。

クローンが右手を振りかざしたその時、その動きが止まった。

「翔…太」

翔太は振り上げたクローンの手首をつかんでいた。

「早く行け!」

「で、でも」

「俺はお前らを守るようにと和弘に言われた」

僕は急いで窓枠を乗り越えると、疲れ果てた美波とただその場に立っていて動かない梨沙を連れて走った。

「翔太、林の中で待ってるからな。それと掌には死んでも触るなよ」

僕は念を押して、裏庭の草むらを駆け抜けた。


「よし。そろそろいいだろう」

修平たちが裏庭に入ってから数分経った。

「これで、梨沙も俺に惚れて、彼女になってくれるかな」

翔太は梨沙のクローンの手を握りしめたまま、微笑んだ。

「それにしても、お前よくできてんな。梨沙とそっくりだぞ、特に胸…」

突然、後ろから誰かに肩を叩かれた。

「ん、何だ? 修平か別に助けに来なくても…」

振り向くとそこには自分自身が無表情で翔太の肩の上に手を乗せていた。

「う、そ。ま、じか。俺もここまでかよ…せっかくなら梨沙のパンツ見て…か、…ら」

翔太は足の力が突然抜けたように膝を地面に強打しながら、その場に倒れた。

読者のみなさん、お久しぶりです。私事ですが、週ごとに読んでくだっている人が増えて嬉しい気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。コロナが収束するのかはたまた再拡大するのか分からない瀬戸際、皆さんはどうお過ごしですか。私は9月ごろに海外の大学で勉強する予定だったのですが、コロナの影響で行けず日本でのオンラインレッスンで日々を終えています。国を超えた交流に新鮮味を感じていますが、それと同時に同級生などとの交流が授業以外でほぼないことや、時差の影響で午前二時ぐらいに授業を受けるといったことに違和感を感じています。というわけで、いつになるかわかりませんが海外に着くと時差などの影響で投稿時間が変更になるかもしれません。申し訳ありません。しかし一週間に一回というペースは変わらないと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

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