1舞台
設定は後半にあります。興味と時間があったら読んでください。
「エカテリーネ!!貴様との婚約を破棄する!!」
大陸中の貴族や富裕層、平民までが集まる名門ゲントリッド学園の大ホール。
今は卒業式の後の謝恩会の真っ最中であった。
そこに響き渡った男の声に、会場に居た在校生、卒業生、その親たち、教師、学園のある国の重鎮たちは全員、ある一角に注目した。
等間隔で吊るされた金で装飾されたシャンデリアと、2階くらいの高さに位置する大きな窓から入る月明かり、栗梅色の壁にかかった照明が、会場を埋め尽くす人々を照らす。
豪華な正装を身に着けた男と、その男の腕の中で震えるこれまたきらびやかなピンクのドレスの女、その周りを囲む見目良い男たち、そして彼らに対面する淡い紫のドレスの女がいた。
その正装の男、オーディアム第3王子はよく通る声で糾弾する。
受けるのは、淡い紫のドレスを着た令嬢、エカテリーネ公爵令嬢だった。
「貴様!よくもこの場に顔が出せたな!!男爵令嬢であるマリアに嫉妬し、危害を加えあまつさえ殺害しようとしたこと、私が見抜けぬと、思ったか!!!貴様、それが将来の王子妃のすることか!!」
「「「そうだそうだ!」」」
「ぐず、オーディアム、みんな・・・!」
ふるふるうるうると、ピンクの女、マリアは小柄な体をふるわせて男の庇護欲を誘う可憐なまなざしを男たちに向ける。
「そんな!何をおっしゃっているのですか?私は何もしておりませんわ!」
「こちらには証人も証拠もある!ハルム子爵令嬢、リット伯爵令嬢、前へ!!」
ざわざわ
「私はエカテリーネ様にマリア様を階段から落とせと命令され仕方なく・・・」
「私も実家の援助を盾に命令を聞けと脅されたのです・・・ううっ」
「あなたたち、よくもそんな嘘を!・・・・・・わかりました。婚約破棄をお受けします」
「!」
「!」
「ですが!これらすべて冤罪です!今から証明いたしましょう」
くわぁ~眠いわ~~
あーはいはい。はよおわれや
やー、ぐったんないねー
くっそ、イラつくわ~!
「この日、私は王城で王妃教育を受けていました。王妃様が証人です!」
「なっ!そんなバカな!マリアが嘘をついているというのか!!」
「そんな!私は本当のことを言っているのです!!エカテリーネ様こそ、嘘をおっしゃらないでください!!」
ぐふぅ~このクソボディめ!言うこと聞けやっ!!
あいつら殴ってやるわ!!
「ふふ、この国の王子はきちんと裏付けも取れないのですね」
突然、静観していた群衆から、低い腰に響くような美声が響いた。
「だれだ!不敬だぞ!!」
「隣国の第2王子ジョルジュですよ、オーディアム王子。以前お招きいただきました舞踏会でご挨拶をしたのですが・・・やはりバカですね」
それな!私もそいつバカだと思ってた!!
きぃきぃ顔を真っ赤にして怒る王子をまるっと無視し、浅黒い肌をした美男子ジョルジュ王子はエカテリーネの前に跪いた。エカテリーネの手をそっととり、
「エカテリーネ嬢、私と結婚してください」
「えっ」
「あなたの美しさ、高潔さ、純粋さ。以前からお慕いしておりました」
「あっ、そんな・・・はい・・・私でよければ」
「ありがとう」
「っ」
ジョルジュ王子の色気のある美しい微笑みに、エカテリーネの頬が染まる。
あ~へいへい。
っていうか、この女もチョロ過ぎない?
「衛兵!彼らを牢へ入れろ!」
ジョルジュ王子が待機させていた兵士がオーディアム王子一行を取り押さえる。
「なっ!私はこの国の王子だぞ!!」
「どうして!私がヒロインなのに!ゲーム通りに行かないなんて!あんたも転生者なの!!」
「てんせいしゃ、とはなんですか?ひろいんとは??」
「は?何言ってんの!この世界は【あなたに恋してラビリンス】っていう乙女ゲームの世界でしょ!!アンタは悪役令嬢!最後に可愛いヒロインの私にざまあされて国外追放されるのよ!!なのに、こんなのおかしい!!」
先ほどまでのか弱い令嬢の仮面を脱ぎ捨て、悪鬼の形相でわめくマリアに周りの人々はこそこそ言い合う。
「あの子、何言ってるの?」
「頭おかしいんじゃない?」
「可哀想に、気が狂ってしまったのね」
「なによなによなによっ!おかしいのはアイツっ・・むぐっ」
あまりにうるさいため、マリアの背を押さえつけた兵士が猿ぐつわを咬ませた。
「マッ、マリア・・・」
「うそだろ」
「俺をだましていたのか・・・」
マリアの周りに居た見目麗しい男性3人と王子は、彼女の豹変を見てだまされていたと知り、がっくりと肩を落とした。
ほんと、こいつら、なんなん?
女1人にコロコロコロコロ転がされて。アホ?
いい加減、殴っていいかな??くっ、体が動けば・・・!!
「殿下・・・婚約破棄、改めてお受けいたします。小さいころからお慕いしておりました。・・・さようなら」
美しい瞳から一つぽろりと涙をこぼすエカテリーネ。
「エカテリーネ・・・」
縋る瞳で助けを求めるオーディアム王子。
あ゛~?コレ、まだ続けんの??
「君はなにも悪くない」
肩を震わせるエカテリーネをそっと抱き寄せるジョルジュ王子。
「殿下のお心を射止められなかった私も悪いのです・・・」
口元を手で覆いはらはら泣き続けるエカテリーネ
「エカテリーネ嬢・・・私と一緒に隣国へ来てください。そして私と一緒に国を支えていただけませんか」
「はい、私でよければ・・・」
見つめ合う2人。
『その後、悪役令嬢エカテリーネとジョルジュ王子は良き伴侶となり隣国を支え生涯をともにを過ごした。一方、ヒロインマリアは戒律の厳しい修道院で一生過ごし、王子と他の対象攻略者たちには実家から見放され路頭に迷うこととなった。―めでたしめでたし―』
!無機質な音声が聞こえた!
終わった!!
「ああああああああああああああああ」
悪役令嬢エカテリーネが突然大声をあげて握られていた手をふりほどき、隠しキャラの隣国の王子ジョルジュに回し蹴りをくらわす!
ものすごい勢いでぶっ飛び壁にめり込む隣国の王子!!
「やっと終わったああああくそったれぇえええええ」
そのまま集まった兵士や招待客に向かい無差別に蹴るわ殴るわ。し~んとしていた会場が悲鳴に変わる。
「んむっ、あら、終わったのね。動けるわ」
うつぶせで両手を拘束されていたヒロインマリアがつぶやく。猿ぐつわもいつの間にかほどけていた。
そのまますっと立ち上がった。それはごく自然な動作だったが、それだけであっさり拘束が解かれた。ヒロインを取り押さえていた兵士はその勢いでトシンと尻餅をついた。
そのまま呆然とする兵士の額を「おまぬけ・さ・ん」つんっとつつく。
ものすごい勢いでぶっ飛び隣国の王子の隣にめり込む衛兵!!
「は?」
その光景に、呆ける王子と他の攻略対象者たち。
彼らの方をくるりと向いて「ふふ」と妖艶にほほ笑むヒロイン。
「ユーコ!」
そこへヒロインに突撃する影があった。
「あらあら」「ユーコユーコユーコユーコユーコ!!」
飛びつかれたヒロインは再び倒れたが、それを気にせず悪役令嬢の影の薄いモブ従僕Aはますますヒロインの体に抱き着く。
「シン、落ち着いて、ね?」
「うう」
自分の匂いをこすりつけるようにヒロインの首筋にぐりぐり頭を埋める従僕A。
その従僕Aを落ち着かせようとヒロインは頭をなでる。
その間悪役令嬢は阿鼻叫喚の渦をさくさく作っていた。
兵士の1人を片手でプラプラ持ち上げさあ殴ろうとした手を、隣国の王子がそっと握る。いつの間にか壁から抜け出したらしい。
「ご主人様」
「・・・」
「その汚い男からお手をお放しください」
「・・・・・・はあああ・・・ヴィルヒョウ」
悪役令嬢は大きなため息をついて、持ち上げていた兵士をポイッと捨てた。
隣国の王子は悪役令嬢の前に跪いてその手をハンカチでぬぐったのち、手の甲にキスをした。途端に悪役令嬢の顔や髪、手、ドレスに飛びついた血跡がキレイになった。
「ご主人様、お会いしたかった」
「・・・」
今度は掌へとキスをして、そのまま自分の頬を押しあてる。
続けて「ああっ」と言って一本一本指をなぶりだした!
「ヴィル・・・」
「はいぃ・・・」
恍惚とした表情で答える隣国の王子。
「ひ」
悪役令嬢は隣国の王子を無表情に見つめ返して、淡々と言
「人前でやらないでぇって、いつも言ってるでしょぉぉ~ぉぉぉおおおお!!」
えず、真っ赤になって絶叫した。
「ああ!!リリベル!!なんておかわいらしい!」
隣国の王子にぎゅうっ、と抱き込まれた悪役令嬢は真っ赤な顔のまま頬を膨らませた。
「むぅ」
その顔は非常に愛らしく可愛らしかった。
周りの惨状がなければ。
そこへ従僕Aにだっこされたヒロインがやってきた。
「リリベル、ストレス発散はできたかしら?」
「まあね。久しぶり、ユーコ。動きを封じられて、お互い面倒だったわね」
「そう?私は憧れの『可愛い女の子』になれたのよ、演技楽しかったわ」
「あっそう・・・」
「ユーコ、天界に早く帰ろう!」
「ご主人様、さっさと地獄へ戻りましょう!」
周囲の誰もが彼らの会話について行けなかった。
「その前に壊れたものや人をなおしましょうか」
従僕Aにだっこされたまま、ヒロインが人差し指を立てて、くるりと円を描いた。
きれいな金色の光がキラキラと会場全体を包み込んだ。
すると何事もなかったかのようにすべてが元通りになった。
先ほどまでうめき声や悲鳴、恐怖の声でいっぱいだった会場が今度は驚きで騒然とした。
会場の注目を集めたヒロインは自分では可愛いつもりの、他人から見ればとても妖艶な笑顔を見せた。
ほうっと会場中から見惚れる声が上がる。
その緩んだ空気に、王子を始め攻略対象者たちは注目を集める4人に尋ねた。
「きっきみ、いや、貴方たちは一体・・・」
王子たちに向かって軽くお辞儀をして悪役令嬢は答えた。
「お騒がせいたしました、皆様。私たちは神様と大悪魔様の気まぐれでこの世界に転生させられただけの、ただの天使と悪魔ですわ」
「神様と大悪魔様も先ほどまでの喜劇を楽しまれご満足されましたので、これにて私たちの役目も終わりました。二度とお会いすることはありませんがお元気で」
「「私の妻がお世話になりました」」
「「「「それでは」」」」
彼らの体があっという間に粒子になる。
一瞬後、そこに4人の姿はなかった。
※※※
天界にある神の部屋にて。
宙に浮いている4Kチューナー内蔵65V型の有機ELテレビに、可愛らしいPopハッピネス EBのフォントで文字が表示された。
『ネット小説「乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったけど、ざまあは嫌よ!」(実写版)完』
神「文字で読むのもいいけど、現実で再現するとまた違うね~マオちゃんはどうだった?」
大魔王「・・・おもしろかった・・・カンちゃん、また・・・やろ・・・」
<設定>
・悪役令嬢エカテリーネ
乙女ゲームでは:悪役。
婚約者のオーディアム王子に恋する公爵令嬢。しかし王子にはウザがられていた。
学園入学後、王子と恋人になったヒロインマリアに嫉妬。
集団いじめ、暴行、殺害未遂など行った。
卒業式での婚約破棄のざまあ断罪後、国外追放、殺害、処刑、娼館送りなどいろいろなエンドがあった。ヒロインにとってはぬるゲーだが、悪役にとってはバッドエンドまっしぐら。
小説(設定)では:主人公。乙女ゲームの悪役令嬢に転生した異世界の魂。
幼少時にオーディアム王子と会ったことで、乙女ゲームの記憶を思い出す。
バッドエンドを回避しようと頑張る。婚約者のオーディアム王子のことは、ゲームと違って、嫌い。
ヒロインマリアの野望に気づき、阻止しようと行動したがかえって裏目に出る。婚約者の王子と他の対象攻略者たちには乙女ゲームと同じく、目の敵にされていた。
ヒロインの罠にはまるが、前世の推しであった隣国の王子ジョルジに助けられ、ざまあ回避し&ハッピーエンドになる。
中の人:悪魔リリベル。
ウェブ小説の実写化を見たかった神と大魔王により、外見がイメージに合うからという理由で、無理矢理小説の世界に転生、赤ちゃんからスタートさせられた。強制力によりマリオネット化。
体を無理矢理動かされて、イライラがたまっていった。ストーリー終了とともにブチ切れた大暴走。
本文の口の悪い心の声はすべて彼女。
外見は妖艶だが、性格は可愛い女の子で照れ屋さん。
しかしストレスがたまってあるレベルを超えると、口が悪くなり暴力でストレス発散してしまう悪癖がある。発散してしまえば後は引きずらないタイプ。
悩みは夫の変態癖。せめて2人きりのときにして・・・。
・ヒロインマリア
乙女ゲームでは:ヒロイン。
男爵の弟と平民の子供。両親が事故死して天涯孤独になった。
姪を哀れに思った男爵に引き取られ養女となった。
学園に入学後、真面目に授業を受け立派な淑女になっていく。
その過程で王子や対象攻略者たちの心の傷を癒やし好意を寄せられていく。誰を選ぶかで結末はさまざまだが、全体的に難易度が低くぬるゲー。
小説(設定)では:悪役。
男爵の弟と平民の子供。両親が事故死して天涯孤独になった。姪の、あまりに可愛らしい外見に目をつけた男爵が、高位貴族へのハニートラップとして養女にした。その間に人には言えない教育をイロイロ施され学園入学後、狙い通り王子と高位貴族をたらし込んだ。
しかし調子に乗って、主人公である悪役令嬢を陥れようとして逆にざまあされてしまう。
その後、男爵は処刑、本人も修道院送り、からの暗殺のバッドエンド。
中の人:天使ユーコ。
ウェブ小説の実写化を見たかった神と大魔王により、外見がイメージに合うからという理由で、無理矢理小説の世界に転生させられた。強制力によりマリオネット化。
赤ちゃんからのスタートだったが、悪魔と違い、ノリノリで可愛い子を演じていた。自分から余計な色気が出ないので、むっちゃ楽しかった。
外見は可憐だけどお色気ムンムンな妖艶な気配がただ漏れのお姉さん。『可愛い』に憧れるが自身の色気が凄すぎてどうしても『妖艶』になってしまうのが悩み。
甘えん坊の夫が大好き。つい甘やかしちゃう。
・モブの従僕A
乙女ゲームでは:単なるモブ。
悪役令嬢の陰に常に付きそう。平凡顔で目立たず、存在感なし。
小説(設定)では:単なるモブ。
乙女ゲームと大差なし。
中の人:天使シン。
天使ユーコの夫。ユーコより年下。口が悪い乱暴者だがユーコにだけ甘えん坊。
妻が大好き。もっと、なでなでしてほしい。
今回のことで神のことを無関心→嫌いになった。
・隣国の王子ジョルジュ
乙女ゲームでは:隠しキャラ。
勉強のために学園に留学中に、悪役令嬢の企てた誘拐イベントで浚われれば出会えるキャラ。しかしその確率は非常に低い。また選択肢によっては誘拐を見て見ぬ振りをされることもある。
助けられた後、好感度を上げていけば隣国で結婚するハッピーエンドになる。
小説(設定)では:ヒーロー。
舞踏会で紹介された主人公である悪役令嬢に一目惚れ。悪役令嬢に会いたいために学園に留学。悪役令嬢にますます惹かれる。
ヒロインの罠にはまった悪役令嬢を救い出し求婚。隣国で結婚し一緒に国を支えるハッピーエンドになる。
中の人:悪魔ヴィルヒョウ。
悪魔リリベルの夫。自らを妻の僕と公言しており、妻を「ご主人様」と呼ぶ。
妻の嫌がる様子が大好きで、よく白昼堂々変態行為をして怒られる。
その顔がいい!愛しています!!
他の男に触るリリベルに立腹、ついなめて消毒してしまったら興奮しちゃった。
・世界
神と大魔王が造った、とある小説をモデルにした世界。
強制力は主人公とヒロイン、隣国の王子、従僕Aの4人だけに働き体が動かなくなりマリオネット化。意識はある。他の人には強制力はないが、基本的に小説のストーリーに沿った考えと行動をとる。
例外的に、気を利かせた神様の神託により小説のヒロインの設定(貞操関係)が一部変更になった。
2もあります。彼らの転生直前の話。短い!!
本日の16時投稿します。