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第二回書き出し祭り第三会場を読んで学んだこと

作者: 稲荷竜

※注意

主に自分の趣味趣向がわかったよ、という話

絶対的、なおかつ客観的な価値について語る能力はありませんし、語らなければならない立場でもありません。

なのでここから下の文章はすべて主観、個人の趣味趣向に深く根ざしたものです。




第三会場の感想をまとめていくよ!



最初に。

私は『世界観』『設定』『安心感』をフックに読み進めることができない嗜好を持っています。(フック≒物語を読み進める動機たりうる要素)


『キャラクター』『読みやすい・読んでしまう文章』などが私にとってのフックたりえます。


そんなことをふまえつつ、拝読したものを四種類に分類して、感想を書いたり書かなかったりしました。


では『四種類』の内訳は?



1、手放しで面白い。続きを読みたいもの


2、技量が高く面白いのはわかるんだけれど、私の感性には響かなかったもの


3、やりたいことはわかるんだけれど、やりたいことに技量、発想が追いついていないと感じるもの


4、わからん



以上です。

2、3、4は書いてある通りです。

一言でまとめると『NOT FOR ME』となります。

私向けではないな、ということなので、これらについて説明できません。


では、第三会場においてなにが『1』に該当したのか?

これは自分でも意外だったのですが……


キャラクター、そのやりとりを通して『世界観』が見えてくるものたちでした。





『キャラクターそのもの、またはそのやりとりを通して世界観が見えてくるもの』とは具体的になんなのか?

 それは『ごきげん☆魔王様チャンネル!』でした(断言)。


 一言でまとめてしまえば『魔王様がユーチューバーみたいなことやってる』です。

 が、いい物語というのは『一言でまとめたらそうなんだけど、一言じゃまとまらないからもっと聞いてよ!』という気持ちで他者に紹介したくなります。


 この『ごきげん☆魔王様チャンネル!』はまさにそういったたぐいの話でした。


 劇中劇の状態から(正しくは劇中劇中劇)物語は始まります。

 ここで魔王様のキャラが出た……かと思いきや、示したキャラを背負っていたカゴごと投げたー!


 石拾いなんかやってられるか!

 この時点で『なるほど、魔王様はユーチューバーやらされてるのか』と思いました。


 そしていかにも黒幕っぽい三人の紹介が軽く(←重要!)ありました。

 にわかに存在感を増し始める異世界人清水。


 この二人がわちゃわちゃ言い争っていくのを見て『はいはいそういう感じのコメディ日常系ね』と完全に思いこみました。


 しかしもう一段構造があった。

 さらにカットがかかり、またキャラクターのどんでん返しがあります。


 短い文字数の中でこれだけどんでんどんでん繰り返すと、読者は混乱すると思います。

 けれど文章が読みやすい。


 なぜなら『無駄な情報を長々紹介する』ということをしていないから。


 劇中劇が劇中劇であったことを明かされるたびに、どんどんと見えていく世界観。

 そして最後に語られる『なぜ魔王様がユーチューバーみたいなことをやっているのか』。


 キャラクターの深みを知ると同時にガンガン判明し、広がっていく世界観に、『これからこの世界で彼女らはどう生きていくのだろう?』という興味を惹かれます。


 文章的なヒキではなく、世界観でヒキを作られた。

 この4000という短い文字数で!


 これはものすごい衝撃でした。

 私が世界観に興味を持たない人種であることは前述していた通りですが、それでも、世界観が、ようするに『その世界で主人公格のみならず、他のキャラクターがどう息づいているのか、またはいないのか』が気になったのです。


 好きが文字数に表れすぎている。

 続き書いて(はぁと)





 前述のものとは別方向で『世界観が気になる』と思わせてくれたのは『姫様の専属メイドだったけど魔族の待遇が良すぎて寝返りたい』でした。


 捕われたメイドのキャラがすげーなオイ。

 計算高いというか、なんというか……


 この書き出し、話自体は別に進んでいないのです。

 状況だけをプロットに記すとしたら



『メイドが捕われてスカウトされることになった』



 この一文で済みますし、場面転換などもありません。

 しかしメイドのキャラと読心術を使う魔族とのやりとりだけで最後まで読まされました。


 これが『やりとり』の力だよ!


 キャラが会話しているだけで、いつの間にか先まで読んでしまっている。

 登場キャラは二名でしたが、二人とも『いいキャラしてる』のです。


 そして、この物語は(おそらく)中世ヨーロッパ的な文明観で進んでいます。

 だというのに、最後……


 キャラでつかんで、会話で読ませて、セリフで引く。

 多少『現代環境というのは(読者にとっての)異世界ではチート』という前提知識がないとキョトンとするヒキでしたが、私の好みを語っているだけなので他の読者がどう思うかは関係ねーな!


 次話ではメイドが堕ちるシーンが入る(あるいは踏みとどまりつつ心揺れるシーンが入る)と思われるので、楽しみで仕方ない。

 キャラクターの心が壊れるのが好きです。

 続きをお待ちしています。






『アヤカシ喰い依子さんの非常食』。



 最初まともなラブコメかと思ったんスよ。

 告白シーンで始まる恋愛系ラノベ山ほどあるじゃないですか。

(山ほど確認したわけではなく、そういうのたくさんありそうな感じがする、という意味の、集合的テンプレイメージに基づく発言。こういうレッテル貼りをする人は根拠を求められても2、3例しか示せない)


 私は『青春』と『恋愛』もよくわからない人種です。

 世界観、設定、青春、恋愛、歴史、唐突な過去回想、いきなりのバトルシーン、全部ダメです。


 なので早くも『Not for me』のカテゴリに入りかけたのですが……


 なんかすげー早い段階で雲行きが怪しくなり始めた!


 主人公がヒロインに告白。

 ↓

 二人が悪漢に襲われる。


 このあと想定されるのは『主人公が悪漢を倒して』のパターンか、『主人公が悪漢に負けて』のパターンなのですが、とりあえずキャラクターが困難に遭いそうなので読むのを続行しました。


 そして叫んだね。

 お前そっち側かよ!


 まさか主人公が悪漢けしかけてる側とは思わなかった。

 正しくは『けしかけてる』っていう感じでもないんですが、とにかく最初から悪漢側、しかも『告白した彼女に男を見せるために悪漢のフリして襲ってよ』ではなくガチめな『あいつ襲ってよ』だというね。


 しかも襲ってきた連中が……ええええ?

 しかも勝つのか……(ヒロインが)。


 そして最後のキレのあるセリフ。

 怒濤の展開で読み進めさせられ、最後にセリフでスパーンと致命傷を食らいました。


 説明が難しいのですが、この種類の満足感はなかなか味わえるものではないです。

 二度読みした。


 この書き出しは『セリフ力』と、『それを出すためのキャラ力』が非常に強かった。


『主人公(視点人物)が悪漢側』というのも、そうやってレッテル貼って瓶詰めしてしまえば、さして珍しい展開のようにも思われません。

 それでも『お前そっち側かよ!』となったのは、主人公くんが『そういうことしなさそうな子』として、短い中でしっかりキャラ付けされていたからだと思います。


 この書き出しには短い中で大量の『そうはしなさそう、ならなさそう』と想像させるだけの要素が詰められていました。

 それは文章がわかりやすく、キャラのなにを見せれば『キャラが立つ』のかを、感覚、あるいは論理的に熟知しているからじゃないかなと想像できました。


 すなわち作者の地力が高いという印象です。


 作者様の今後の作品、もちろん『アヤカシ喰い依子さんの非常食』の続きにもおおいに期待しております。





 総評。


 今回私が第二、第三会場を拝読してNotと思ったものには、共通項があるように感じられました。



・キャラクターが入ってないのに過去話を始める


・キャラクターが入ってないのに戦いを始める


・情景描写がなおざりなのにいきなり複雑な殺陣を始める



 小説という媒体なので、動きを脳内で描くまでには、『文字を読み』『文字を理解し』『想像する』という手間が必要になります。

 これは漫画と小説の明確な違いで、だから『漫画のように小説を書く』と目が滑ったり、興味を惹かれなかったりということが起こりうるのだと私は考えています。


 今回『私向けではないな』と思った作品の多くが、漫画的ツカミを採用していたように思われました。

 もちろん個人の意見であり、すでに結果が出た今となっては『私が評価できないポイントが評価されている』という事実も確認しております。


 けれど


『複雑な動きをいきなり描写するもの』


『状況が特殊なのに説明を怠っているもの』


『キャラクターの思考が理解、共感できないのに、そのキャラに視点を入れてしまっているもの』


 これら三点をふくむ作品は総合結果を見てもNot for meとなる人が多かったような印象です。

 私が仮に『多くの読者に広く親しまれ、楽しまれるものを書く』というコンセプトでやった場合、このあたりに留意していきたいなと思いました。


 誤解のないよう付け加えますと、『創作はおしなべて読者のためにおこなうべきである』という意味ではありません。

 あくまでも『評価がほしいと望むなら』ということで、すべての創作に『気を付けろ』とは言わないですし、私自身、自分が自己満足で書いてるものに『こうしたら読者つくよ』と言われたら『好きにやらせろ。手首にガングリオンできる呪いかけるぞ』としか思いません。


 とにかく書き出し祭り第3回募集も今日始まるようです。


 参加者、観戦者(感想作者)のみなさまの次なる奮戦におおいに期待します。


 創作ほんと好き。



追記

あと『無駄な情報を丁寧に描写してしまっているもの』が特にNFM(Not for me)率高かったよ!

今意味ない情報は今いらないのです。

削って(はぁと)

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