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魔法使いは突然に!?  作者: ダイヤモンド・アズキ
魔法の章
2/3

魔法の実在

 撫子色の髪の少女は、天色の瞳をまっすぐ俺の方へ向けると不安そうな表情で話してきた。


「ねぇ、私たち確かに扉からでたよねぇ?」


 全くその通りだ。俺は確かにアスカが扉から出るところを見たし、俺も扉からちゃんと出たはずなのだから。

 俺は何を言ったらいいのかわからず短い返事をすることしか出来なかった。


「あぁ」


 辺りを見渡すと俺は不自然なことに気がついた。

 空を見ると雨が降りだしていた。だが、雨は地面に降っていなかった。というのも雨は球体で空中に浮かんでいたのだ。

 当たり前のことだがそんなことは通常あり得ないのだ。


 その事にアスカも気づいたらしく目を大きくして驚いていた。

 アスカは球体になっている雨を右手の人差し指で恐る恐る触れてみた。

 触れると雨は止まっていたのが動きだし地面に落ちた。

 アスカはまた一つ、二つと雨に触れていった。

 なんだか楽しんでいるように俺には見えた。つーか、こんな時に何遊んでいるんだよ。よーし俺も雨に触ってみようかな、なん――てね。


 アスカは俺を見ると真剣な表情で言ってきた。

 すごく怖い顔なんですが……


「おい、ハヤテ――何遊んでいるの!」


 俺は別に遊んでないのですが……。

 というか、なにもしないで突っ立ていたではありませんか。


「へっ?」


「暇なら私を手伝って!」


「手伝って?、雨を割ることか?はっきり言って雨を割って何になるんだ?」


「私もわからないよ」


 何言ってるんだよ。この子は…。

 わからないなら、なぜやるのか俺にはさっぱり分からなかった。

 アスカは真剣だった。決して、ふざけてなどいなかった。

 俺はそんなアスカのことを、考えずに口からため息がこぼれてしまった。


「ハァ……」


「何その呆れた表情は?」


 アスカはそう言うと撫子色の髪を触り少し考えたような仕草をするとまた話始めた。


「理由も言わずに雨を割れって言う方が無理だよね……。ごめんね」


 というとアスカは俺に謝罪してきた。

 謝罪すると話を続けてきた。


「でも、ちゃんと根拠があるわけじゃないの。なんというか、少し疑問に思っただけなの……」


「疑問ってなんだ?」


「この現象は自然とは到底思えない……ってことは誰かが人為的やったことだと思うの。でも、当たり前だけど普通の人には無理だよね?」


「あぁ、当たり前だな」


「うん。何か強大な何かがこの現象に絡んでいたら……、そして、今この現象は私たち以外の人たちは認識できているのか?もし、認識出来ていないのならそれは私たちだけを狙ってきたということにならない?」


 ならない?と言われましても、そんなの俺には分かりません。

 もし、仮に俺たちを狙ってやったとしたらどうしてだ。

 俺は、クラスの空気で、アスカは普通の……普通か?……高校生。

 そんな俺たちを狙う意図が全く分からない。


 もしこれが俺たちを狙ってやってきたということは迂闊に雨に触るべきではないのではないだろうか。

 それなのに逆に触れようなんてアスカは何を考えているか俺にはやはり分からなかった。

 ヤバイことじゃないよねぇ……?


「そんなことは分からないが、だったら雨を割るべきじゃないだろう。もしこれが何だかの罠なら尚更だ」


 俺にしては正論を言ったつもりだ。

 アスカはそれを聞くなり俺の意見を論破しにかかった。

 俺、口弱いからアスカに負けちゃうよ。


「だからだよ。もし罠なら私たちでなんとかしないと……」


 おい、私たちでって俺もいつの間にか入っているんですが……。

 そんな事を思っていても仕方ないからなくなく承諾し、無言で頷くと俺は、雨を割り始めた。


 雨を割りはじめて数分が立った。

 進展は一向にない。

 そろそろ雨を割るのにも俺はあきてきた。雨には罠がついている様子もなく割っても地面に落ちるだけを何回も繰り返す。

 それなのにアスカはやめない。なら、俺もやめるわけにはいかなかった。


 さらに数分が立った。

 いつまでこの子はつづけるんですかねぇ。

 そんな俺を見兼ねてアスカは俺に小声で言ってきた。


「たぶんそろそろだと思うから……、あと少し待って……」


「えっ?」


 何がそろそろなのか分からなかった。が、アスカが今からやることはたぶんすごいことなんだと俺には思えた。


 屋上の雨をだいたい割った。

 つーか、もう屋上には雨の球体がなくなったんですけど……。

 アスカはやりきったという表情で俺に喋りかけた。


「ハヤテ、ありがと」


 とアスカの「ありがと」という言葉を言った直後頭上から可笑しな声が聞こえた。

 俺とアスカは頭上を見ると黒マントをまとった人物が空中に浮かんでいた。

 顔はフードをしていたため見ることは出来なかった。


「君たちには失望しましたよ。君たちは無策にもほどがある、ただ球体を壊していただけ。全くもって無知すぎる。なぜ、君たちが選ばれたのか理解出来ない」


 黒マントをまとった人物は意味の分からないことを喋り出した。

 なんだよ、選ばれたとか無知だとかいみわかんねぇよ。

 俺は確かに無知なんですけどね。

 でも、アスカは違う。なぜなら、考えがあって雨の球体を割っていたのだから。


 アスカは黒マントをまとった人物を見た瞬間、一瞬だが笑ったように見えた。

 何故に笑うの、怖いんですけど……。


「やっと現れたよ。正直雨割るのあきてたんだからね!」


 黒マントをまとった人物にアスカは文句を言うと話を続けた。


「今までこそこそ見ていたんでしょ?」


 質問をすると黒マントをまとった人物は答えた。

 俺、絶対話についていけないなと思っていると黒マントをまとった人物は屋上まで降りてきた。

 それもゆっくりと。


「ああ、見ていたよ」


 うぁー、覗き……キモいんですけどっていう雰囲気じゃないことはさすがの俺にも伝わった。

 答えると話を続けてきた。


「なぜ、そう思ったのかな?」


 質問を返してきた。

 質問返しかよ。なんて思っていたらアスカはその質問に答えた。


「私たちを人為的に屋上に来させてなら、監視してるって考えるのは必然でしょ!それに監視対象が可笑しな行動をしていれば間近で見たいんじゃないかと思って」


 アスカのそんな理由を聞いて一つ俺はツッコミを入れた。


「おい、アスカもし、あいつが俺たちの前に現れなかったらどうしたつもりだよ」


「いいじゃん」


「へっ?」


「案の定現れたんだから」


 り、理不尽だ。

 と俺がアスカの言い分を聞いて一番最初に思ったことだ。

 この子ヤバくないと改めて思った。

 いや、思うの遅すぎた。

 もう絶対後戻り出来ないじゃん、トホホホ……。


 あれ、さっき理由を聞いたときは全然そんな事はいってなかったよねぇ?

 アスカさん、どうなっているんですか。と思い聞いてみた。


「アスカ、さっき理由を聞いたときは全然そんな事はいってなかったよなぁ?」


「言うわけないじゃん」


「えっ?」


「だから、私たちを監視している相手に聞かれるかもしれないのにほんとの事を言うなんてばかでしょ?」


 そのばかは俺です。

 なんて思っているとアスカは言った。


「でも、あの理由も嘘じゃないよ。ただ、ほんとの事を全部言わなかっただけだよ」


 アスカはどや顔で言ってきた。

 余計たちが悪いわ。

 何て言うツッコミはやめといた。


 黒マントをまとった人物は俺とアスカのやり取りを見ると呆れていた。


「君たちって、本当に低レベルだよねぇ?なのに何で選ばれたのが君たちなんだ……」


 アスカは低レベルと言われたのが頭に来たのか、ムカッとしたように話した。

 顔が怖いです、アスカさん。


「さっきから何、選ばれたって?」


「それを答える前に君の考えの間違っている部分を言おう。君は私が人為的に、この場所に連れて来たと思っているね。この場所に連れて来たのは私じゃない。そして、君たちがこの場所に来たのは魔法に選ばれたからだ」


 魔法って、絶対この人中二病だよ。

 俺も人のこと言えないんだけどね……。

 しかも話が全然見えてこなかった。

 あまりの意味のわからなさに俺はつい言ってしまった。


「意味が分からん……」


 黒マントをまとった人物は話を始めた。


「ここには結界があってねぇ、魔力が弱い奴は自動でここに連れてこられるようになってるんだよ。しかも入ったら出ることは困難だ。さらに、結界はそれだけじゃないこの敷地全体に時止めの結果がある。だから、雨は球体のまま空中に浮かんでいたんだ。まぁ、時が動いているものが触れば時は動き出すのだがね」


 黒マントをまとった人物は長々と説明をした。たが、さっぱり分からなかった。

 時が止まっているだの、魔力だのもう俺には理解することも出来ない。

 最初から理解出来ていないのだけれど……。

 だけどアスカは理解したのか口に手を当て考えていると一瞬瞬きをし、黒マントをまとった人物を見ると話をした。


「つまり、ここからは出ることが出来なくて時間が止まっていると……。だから、私たちが雨を触ったから雨の時間は動き出した」


 理解していることを言うとアスカはそれでも理解出来なかった部分を言った。


「本題に戻るけど、魔法に選ばれたってどいう意味?」


「言った通り魔法自身が君たちを選んだんだ。魔法とは、生きているんだ。その魔法が君たちを選んだんだということはもう君たちは普通の人間として生きていくことは出来ない」


「なるほど、魔法に私たちは選ばれたわけか。でも、魔法を使える気配は一向にないのだけれど?」


「当たり前さ、君たちはまだ魔法と会ってないのだから」


 魔法に会うだってそんなことできるのか?

 俺はアスカと黒マントをまとった人物の会話についていけなかった。

 いや、ついていけるアスカが異常なのだ。

 アスカさん、まじすげーです。


 黒マントをまとった人物はそう言うと、口元がニヤリとしたのが見えた。

 話を続けてきた。


「でも、それは正しい方法を使った場合だ。


 魔法を使うのに裏道があるんだよ」


 少し話の間があると裏道の存在を意識させてきた。


 俺とアスカは口を揃えて言った。

 揃えて言ったことに互いに驚いていたが、今はそんな事は今はどうでもよかった。


「裏道」 「裏道」


「そう裏道だよ。裏道を使えば魔法をすぐ使うこと出来る。魔法とは本来恐怖から生まれしものなんだよ。一定以上の恐怖を与えることで魔法を使うことができる」


 黒マントをまとった人物は方法を口にすると、次に恐ろしい一言を言った。

 その言葉に背筋がぞっとしてしまった。


「でも、その恐怖のせいでだいたいは自我が崩壊するんだがね」


 俺は正直怖かった。何故にこいつはそんな恐ろしい事を思い付くのかがわからなかった。

 俺は何をすればいいのか分からず固まってしまった。

 アスカは顔を怖くすると黒マントをまとった人物を睨み付けながら言った。


「あなたは一体私たちをどうしたいの?そして、……あなたは何者なの……」


「私の目的はある魔法使いを捜し出すこと。そして、私は、トルガー・エンダイブ 異世界人だよ」


「ある魔法使いって?」


「おいおい、それは言えないよ。これは重要秘密なんだよ、でも死んでもいいのなら教えてあげるよ」


 一瞬この場が凍りついた。

 このトルガーとか言うやつは今死んでもいいのならといった。つまり秘密を知ったら殺すと言うことなのだ。

 これが脅しでないという根拠はないのだが、直感という曖昧な感覚で殺されると感じた。


 アスカは『死んでもいいのなら』と聞いたとき瞳を大きくしたがそれは一瞬だったが、汗をかいていた。冷や汗というやつか、アスカもかくんだなこんな時なのにそんなくだらないことおもってしまった。

 アスカは汗をかきながらトルガーの言葉に答えた。


「いいえ、遠慮しとく」


 アスカが断るとトルガーは少しつまらなそうな雰囲気を漂わせていた。

 どんだけ俺たちを殺したかったんですか?ちょっと狂いすぎじゃないんですか?

 と色々ツッコミどころ満載である。


 アスカがいなれば俺は今こうして呑気なことを考えることができなかっだろう。

 今日知り合ったアスカを頼りすぎるのもどうかしてるけね……。

 まぁ、正確には1年前から知り合っているはずなのだが……。


 アスカが視線を俺に向けてきた。

 どうしたんですか、急に俺に視線を向けて俺は何もできませんよ。とアイコンタクトしてみるが通じていないようだった。

 俺はアスカが何を考えているのか分からない。だが、分からないままにしてはいけない……ような気がした。


 次の瞬間アスカが視線を向けてきた意味が分かった。

 トルガーを見てみると、不気味な笑みを浮かべているのが分かった。まるで今にも誰かを殺しそうな笑みだった。

 アスカはたぶんなのだが逃げる準備をしろという意味だったと思う。

 俺は考えてみた、俺に何が出来るか。だが、この場出来ることはなに一つない、俺はこの場に不要ということだ。つまり、逃げろということだ。

 実を言うと逃げたいんだよね。


 トルガーは俺の行動を察したのか、俺たちに言葉をかけてきた。


「ねぇ、君たちここから出れないのにどうやって逃げるつもりなのかな?」


 さあな!それは俺が聞きたいくらいだ。

 確かにここから出ることが出来ない。ここから出ようと扉から出ようとするとまた屋上に戻ってしまう。

 それなのに逃げようとするというのは、俺にも理解出来ない。


 逃げるための方法が思いつかない。

 アスカを見るがアスカは何か考え事をしているのか下を向き、手を顎に当てていた。

 くそ、一体何を考えているんだよ。


 俺はふと思った。それは、トルガーは何故この結界の中にいるのだろうかと……、確かトルガーはこの場所にくる条件は魔力が弱い者のはずだ。

 じゃあ、ここにいるトルガーは魔力が弱いのか?いや、魔力が弱いとは考えにくい。

 では、トルガーがどうやってこの結界に入ることが出来たのか?

 どこかに抜け道があるのではと思ってしまった。


 俺はトルガーに質問をした。

 ちょっとトルガーが怖いから小声で言った。


「おい、どうやってこの結界の中に入ってきた?」


「それを言うとでも?」


 俺は今確信した、この結界から出るための抜け道があるのだと。なぜなら、トルガーは『言うとでも』と言ったのだ。つまり、言わないということは結界から出入りするための方法があるということだ。


 問題は抜け道をどう探すかだ。

 アスカは指を顎に当て依然考えいるようだ。

 ほんと何考えてるんだろう?

 俺は一瞬アスカを見るとまた、視線をトルガーに戻した。


「言わないのなら、それでいいよ。でも、今から何かヤバイ事をするんだろ?」


 俺は、トルガーが俺たちに恐ろしい事をすると思いあえてこの質問をしてみた。

 それは当たったらしくトルガーはニヤリとすると話を始めた。


「あーぁ、するよ。それも面白いことをね!」


 そう言うとトルガーは一瞬にして、俺の視界から消えて背後に立っていた。

 その瞬間は俺は驚き目を大きくして後ろを振り返ろうとすると今度は背後からも消え元の場所に戻っていた。

 それは不気味だった。音を出さずに移動をしたからだ。


 アスカはやっと考える仕草を止めると俺の所まで来て耳に手を当ててきて小声で言った。


「どう、逃げる方法は見つかった?」


「いや、見つからない……」


 こんな状況じゃ何も思いつかない。

 俺は役立たずなのだと実感した。

 遅すぎだけどね……。


 トルガーは口を開いた。


「君たちには、もう飽きたよ。というか、私もそろそろ帰らないといけないんだよ」


 トルガーはつまらなそうに付け加えた。


「今から君たちには死んでもらうよ」


 と一言いうとトルガーは俺とアスカの前に立ち右手で俺の首を掴み、左手でアスカの首を掴んだ。

 掴む力は段々強くなり俺は息をすることも出来なくなった。

 アスカを見ると息を出来ていないようだった。

 俺とアスカは必死で足掻いていたが、意識が遠のいていくのが分かった。

 俺は足でトルガーを蹴るがトルガーはピクリともしない。


 アスカは目から涙が溢れていた。

「か……がぐ………………………………………ぐっ……」ともがきながらすかすかの声を出していた。

 何て言っているのか全然分からない。だが、早くなんとかしなれば二人とも死んでしまう。


 アスカはもがいていたが次第に力が抜け意識を失ってしまった。

 ヤバイ、ヤバイ早くなんとかしないとアスカが死んでしまう。そんな考えをしているうちに俺も意識を失いそうだ。

 あと、数十秒も持たないだろう。

 俺は諦めて目をつぶると次の瞬間、俺とアスカは解放された。俺とアスカは地面に落とされた、トルガーが手を離したからだ。

 見ると、トルガー殴らたことにより手を離したのだと理解するのに少し時間がかかった。

 もちろん殴ったのはおれでも、意識のないアスカでもない。



 俺たちの前に見知らぬ黒いスーツを来た人物が立っていた。








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