桜の花の咲くころに
眠たさの残る頭に
肌寒さの残る朝の香り。
また今年もまた。
新しい出会いに心踊らせる季節に
身に覚えのない寂寥感。
理由は分からない。
分かりたいと思うと涙が出る。
それはもう物心ついた頃からだった。
賑やかな場所にそぐわずに
無表情にぽろぽろと涙を流す私を
両親はどのように見ていたのだろう。
───幼い頃から。
春になると切なくなる。
桜が咲くと泣きたくなる。
季節がどんなに巡っても同じ場所に来てしまう。
身に覚えのない胸を締めつける想い。
遠い夢の彼方で何度も囁く貴方の声。
「…………ら。………くら。」
何故そんなに切ない声で私を呼ぶの。
呼ぶ名は私の名では無いのに。
貴方は一体だれですか…?