同士様ぁ!
真っ青な空。アスファルトの上をふらふらとした足取りで、小さな少女が歩いている。つぅと垂れる汗を拭うと、どこを見るかわからない目で、一点を見つめた。視線の先にはこの小さなクローバーがある。この焼けそうな日差しにも負けず、誰よりも健気に天を向く。
その様子が少女にはどうしても気に食わなかった。ギッとそれを睨むと、さっきの疲労はどこへやら、どすどすと歩いて行きクローバーをむしり取った。
はっと我に返りまた少女はふらふらとした足取りで歩き出す。
無理をしたのか。少女は倒れた。かろうじて開けていた目に、何か黒いひらひらしたものが映り込み、そこからは何も思い出せなかった。
「んー、今何時だぁ?」
少女は重い体を起こし、ゆっくりとベットから降りる。
「小春ー!今日から高校よー?初日から遅れるつもりー?」
「ふぁ?こ、はる?私?」
一階から聞こえる母の声に少女は戸惑った。
自分が小春でない何かであるという思いが脳裏をよぎったが、小春でなければ一体誰だと言うのだ。そんな風に思う少女を母は声色を変え急かす。
「小春!いい加減にしなさい!」
時計を見ると7:30の文字。
「・・・。あと五分?!!」
ぐるぐると部屋を駆け回り、十分で支度を終われせ少女は家を出た。せっかくの入学式。髪を可愛く結いたかったけど、眠気には少女は敵わない。
無事に学校に到着すると、少女は安心により自分の状況を理解した。ボサボサの頭、寝すぎて腫れぼったい顏、走ったことによる汗、(ry
それを直そうとトイレに向かう。賑やかな入学式で人気のないトイレは一層地味に見えた。まぁ、おめでたい入学式。トイレに集まる方がおかしいのだが。
それでも、誰かきたら嫌なので少女は個室に入り、カバンから鏡を取り出して容姿を整え始めた。
誰か来る音がした。2人・・・?女の子かな。女の子だよね。女子トイレだからね。で男子だったら生理的に無理だから110番打っとく。何かあったら即通報!
「てか、さっきの人見たー?ちょーいけめーん!」
あ、女の子だ。よし110は消しとこ。
「みったー!もーくっそいけめーん!」
「狙えるかな?人気高いでしょ。」
「ですよねー。でも彼とくっつくのが私以下のゴミケラだったら即刻潰す。」
「きゃーこっわーい。」
2人はゲタゲタ笑いながらトイレを出た。
・・・こっっっわー!!!!いやいやいや、好きな人の幸せは祝福してあげようよ?!ね?!ね?ふつーに怖いー。やっぱ高校生活目立たないのが1番かもね・・・。1回は少女漫画みたいな恋愛して見たかったけど、潰されるよりはマシでしょ。
トイレを出ると私はクラスを確認し、教室へ向かった。羽凪氏 小春。私はこの名前でずっと苦労してきた。羽凪氏と言う珍しいこの苗字はなにを意味するか。そう!席は大体1番後ろの角になると言うことだ。すなわち、左を向いたら壁、後ろを見ても壁。右は男子!仲良くなるとしたら前の子しかいないのだ。私はこの運命を毎年クラス替えのたび乗り越えてきた。
そして今も目の前に立ちはだかる壁は去年と同じ話しかけると言うこと。
ましてや今回、前の子は内気そうでどうも苦手なタイプだ。しかしここで諦めたらクラスのはもう!溶け込めなくなる!
私の葛藤などつゆ知らず周りはどんどん会話を始める。出遅れた。完全に出遅れた。もうこのクラスでは生きていけない・・・。
ここにはそんな少女の葛藤があった_____!
「あのー。」
「ふぁ!い?」
前の子が話しかけてきた。
「私、仲のいいこと別のクラスになってしまって。よかったらお友達になりません?」
逃げる
返事をする
トイレに駆け込む
「ふぇっとー!・・・。羽凪氏 小春です・・・。」
前の子はクスリと笑った。
「百野直 佐登美です。よろしくね。」
百野直 佐登美が友達になった!
この時私の腹に激痛が走った。
「佐登美ちゃん!ちょっとごめん!」
逃げる
返事をする
▶︎トイレに駆け込む
「うぇっ?!羽凪氏さん?!」
私は今までに無い速さで走る!走る!走る!
ゴールについた安堵感、やりきった達成感とともにまたもや腹痛が少女をおそう!しかしもう私はへこたれない。走りきったのだ。教室からこのトイレまで。だからくじけない。私は強くなったのだから。これからも、腹痛の時はまっすぐトイレに向かうことができるだろう。そう、私は強くなったのだから・・・。
教室に戻ると百野直が心配した顔でこちらを見ていた。
「羽凪氏さん。大丈夫?」
「うん・・・。ごめん。昨日食べた、牡蠣が暴走しちゃった・・・。」
って、私は初対面の人になんちゅうことしゃべってんの!ほら見てみ!佐登美ちゃん引いとるやんけ!
「・・・そ、それで、羽凪氏さんはどんなことがすき?趣味とか・・・。」
「んー。基本家で本読むか漫画読むかアニメ見るかの生活だからねー。」
「!そうなの!漫画はなに読むの?」
「そうだなー。某ロードレース漫画知ってる?」
「私だいっすき!まさか羽凪氏さんも某ロードレース漫画よんでるとはー!」
少女が弱◯ペ◯ルの話で百野直と盛り上がっていると廊下の方から女子の黄色い歓声が聞こえた。
鼓膜が破れそう。
「え、だれ・・・?佐登美ちゃん知ってる?」
「誰だろ・・・。わかんないや。」
歓声の中心にいるのは、ものすごいイケメンだった。整った顔。意外と丸めのくせに、キリッとしている。女子が歓声をあげるのもわかる。関わりたくない人種だ。次元が違う。
「わぁ・・・。カッコイイー!!アイドルみたいだね!・・・受け?」
「!!???!!!佐登美ちゃん・・・?わっ、ごめ・・・。」
佐登美ちゃんは顔を赤らめた。
「まさか・・・?」
「御察しの通り・・・。」
「・・・同志様。」
「えっ。」
・・・まって?これシリアスストーリーじゃないの?!