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この声を  作者: 戀情
3/3

2話 「入部!」

放送部を見学した次の日、俺は宣言通り入部するために入部届けを持って再び放送室を訪れた。


部室の前には昨日同様、『新入生募集!!』の看板が立てかけられていて扉は開けっ放しになっていた。


「すいませーん」

入部届けを持って来たとはいえ、まだ入部していない上で勝手に入っていくのは失礼だろうと思い、礼二が声をかける。

礼二も蓮見先輩のアナウンスに衝撃を受け、入部を決めたらしい。

「はーい。お、来たね。みんな待ってるから入って入って!」

昨日と同様、芦屋先輩が俺たちを出迎えて、部室に入れてくれる。


「お!君達が噂の新入生君たちだね!」

「来た来た、こっちこっち!」


部室に入ると、昨日はいなかった10数人程度の先輩たちが俺たちを迎えてくれた。

てか、こんなに部員いたんだな。

昨日は、芦屋先輩と蓮見先輩しかいなかったから部室が小さく感じる。


部室の広さは、40人入れる教室の1/2程度。

先輩たち10数人と俺と礼二の2人が入ったら、だいぶ狭くなる。


でもどうして、他の先輩たちは昨日部室にいなかったのだろう?


「なんで私と景以外の先輩たちが昨日、ここにいなかったんだろう?って思ってるでしょ?」

表情に出ていたのだろうか、芦屋先輩が俺に声をかけてくる。

「はい」

「この時期になると、よくあることなのよ。去年も新入生が見学に来た時に部員が部室に少なくてね、入部しに入って来た時に驚いていたは」

芦屋先輩は、笑みを浮かべてそう言う。

「どうして、この時期になると部員が部室にいなくなるんですか?」

「それについては、今回のリーダーに説明してもらおうかな。雪ちゃんお願いね」

「任せてください!初めまして、二人とも!私は2年の土岐とき ゆきです!」

芦屋先輩の振りに答えるように、奥にいた小柄な先輩が元気よく俺たちの前へ飛び出してきた。

「初めまして。俺は、1年の斎場 一灯です」

「同じく1年の、海道 礼二っす!」

「よしよし!よろしくね、二人とも。じゃあまずは、なぜこの時期に放送部員が部室からいなくなるかだね」

「はい」

「二人は、放送については全くの素人さんかな?」

放送部なんて昨日、ちらっと説明を聞いたのが初めてだ。

「自分は、全く知らないっす」

「俺もです」

「なるほどねぇ。いいよぉ。放送部なんて、ほとんど全員が初心者だからねぇ」

「そうなんですか?」

てっきり、中学からやっている人が、高校でも継続していやるものだと思っていた。

正直なところ、中学では全く聞いたことがないし、マイナーな部活だと思うから。

「そうだよぉ。ここにいる大半の先輩が、中学時代は運動部だったぐらいだよ。かく言う私も、中学時代はバレー部なのだぁ!」

だぁ!と、ない胸を強調して、どや顔で言ってくる土岐先輩。

運動部から、文化部か。俺も中学時代は、卓球部だったのだけれど。

「でも、どうして運動部から、放送部に流れてくるんですか?」

「たぶん、君たちと一緒だよみんな。先輩たちの発表を、見たり聞いたりして入部を決める。私も、蓮見先輩にあこがれて入ったからね」

そうなんだ。確かに、あの発表を見ると、あこがれてしまうよな。

見る人のこころを掴むのが、放送というものなのだろうか?

「雪ちゃん、話ずれてるわよ」

「はわわ、そうでした!」

芦屋先輩に注意され、慌てて話を切り替えようとする土岐先輩。

「えっと、なんでこの春の時期になったら、部員が部室にいなくなるかだったね。それはね、とある大会が目前に迫っているからなのだよ」

「大会・・・ですか」

「そう!放送の大会は大きく分けて、3つある。夏前に開催される大会と、秋に開催される大会。そして、春前に開催される新人戦。そしてこの時期は、年度初めての夏前の大会の目前であるのだよ。ちなみに大会の名前は『NBK 全国高校生放送コンテスト』略してBコン。このBコンで私たちは、全員でテレビドキュメント、ラジオドキュメント、テレビドラマ、ラジオドラマの4つの作品を出すの」

部門については、軽く昨日聞いた。

個人部門の、アナウンス・朗読。

団体部門の、テレビドキュメント、ラジオドキュメント、テレビドラマ、ラジオドラマに分かれるんだったか。

「で、作品のための取材とか、撮影とかでみんな出ていくの」

「取材ですか?」

撮影は何となくわかる。ドラマをどこかで撮るのだろう。しかし取材とは、聞きなれない言葉だ。

「そう。テレビでドキュメント番組って見たことないかな?ボランティア団体の活動とか、頑張っている学生なんかに迫る番組。それを作るには、まず対象になる人に話を聞くことが必要なわけ。その話を聞くことを取材というのだ!で、昨日は、テレビドキュメントを作るために、外部の人に取材しに行っていたの」

さっきから思ってたけど、語尾がところどころ安定しない人だなぁ。

なるほど、だから昨日は、芦屋先輩と、蓮見先輩しかいなかったわけか。新入生が見学に来る可能性があるから、部長と副部長は残っていたのだろう。


「そういえば、なんで土岐先輩がこのことについて、僕たちに説明してくれてるんですか?さっき、芦屋先輩が今回のリーダーって・・・」

「俺も気になってたっす。部活の説明なら、普通は部長がするもんじゃないんですか?」

「普通は景が説明すればいいんでしょうけど、あいつは今部長会議に出てるからね。それに、こういうのは各番組の監督が説明したほうがいいの」

「監督、ですか?」

「そうだよ。私は、今回のテレビドキュメントの監督をしているの!」

「番組を企画して、みんなに指揮して製作するリーダーのことよ。ドラマやアニメの最後にテロップで、監督○○って出てくるでしょ?」

「俺、見たことあるっす!」

俺も確かに見たことがある。主にはアニメだが、エンディングテロップの最後に必ず、監督の名前が書いてある。あれのことか。

「基本的にはほとんどの先輩が、ドラマやドキュメントの監督をしたことがあるから説明できるんだけど、ちょうど当事者の雪ちゃんに説明してもらったほうがわかりやすいと思ってね。と、まぁそんな意味でこの時期には、部室から人が減るの。ごめんね、びっくりさせちゃって、人が増えててびっくりしたよね」

芦屋先輩が、柔和な微笑で俺たちに謝る。

「そうだ、二人とも入部希望だったわね。入部届持ってきてるんでしょ?預かるは」

「あ、そうでした。じゃあ、お願いします」

俺は、背負っていたリュックサックを一度地面におろし、クリアファイルの中から入部届を取り出して芦屋先輩に渡す。礼二もブレザーのうちについているポケットから取り出して渡していた。

「そういえば小町先輩、昨日来てたっていうもう二人の一年生は今日は来ないんですか?」

俺たちが入部届を渡し終えると、土岐先輩が芦屋先輩に質問する。

そういえば、昨日来てた女子二人が部室に来ていない。

あの二人も昨日の、蓮見先輩の映像を見て衝撃を受けたはずだから入部すると思うのだが…。

「あぁ、あの二人なら昨日見学に来た後で入部届持ってきてくれたから、今日はもう発声練習に行ってもらってるは」

「発声練習ですか?」

発声練習は、何となく聞いたことがある。

名前の通り、放送部だから声を出す練習のことだろう。

「そうねぇ、言葉では説明しづらいから実際にやってもらいましょうか。琢磨君、今暇かな?二人に発声練習を教えてあげてほしいんだけど」

「任せてください、姐さん」

芦屋先輩が、声をかけるとさっき土岐先輩が出てきたあたりから男の先輩が出てきた。

「初めまして。俺は2年の岸田きしだ 琢磨たくまです。よろしく。じゃあ、さっそくだけど中庭に行こうか」

俺と礼二は、岸田先輩に付いて中庭に移動する。


これからの部活生活に思いをはせながら。




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