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この声を  作者: 戀情
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1話 「衝撃」

次の日、俺と礼二は放課後になると放送部が活動しているという、部活棟2階の放送室へと向かった。

部活棟は俺たちの教室がある学習棟のすぐ目の前にあって、放送室へは迷うことなく、すぐにたどり着くことができた。

放送室の前には、『新入部員募集!!』という看板が立てかけてあり、誰でも入れるように扉は開けっ放しになっていた。


「すいませーん」

いくら開け放たれているからとはいえ、勝手に入ることはためらわれたので礼二が中に声をかける。

「はーい」

そんな返事とともに出てきたのは、青色のネクタイをした3年生の女の先輩だった。

学年でネクタイの色が分けられていて1年生が赤、2年生が緑、3年生が青になっている。

その先輩は、髪を肩まで下し、身長は比較的高い方。体系は出るところはあまり出ていないが、顔はいわゆる美人という系統で、憧れの先輩感が漂っている。

「こんにちは、私はここ放送部の副部長で芦屋あしや 小町こまちっていいます。二人は入部希望者かな?それとも見学者?」

「見学です。チラシを見て興味が沸いたので、どんな部活かと思って見に来ました」

芦屋先輩の質問に俺が答える。

「そう!じゃあ、部活について説明するから中に入って。今ちょうど、あなたたちの他に一年生が二人来てくれてるの」

「結構人気あるんすね」

「そうね。毎年8人くらいは、入部してくるは」

「文科系で8人って多いほうですよね?」

「かなりね」

さすがは、全国大会に毎年出場しているだけはあるな。

「じゃあ、二人はあの子たちの後ろの椅子に座ってね」

芦屋先輩に促されて、俺と礼二は先に来ていた1年生の後ろの椅子に腰かける。

先に来ていた1年生は二人とも女子で、一人は中学からの同級生でもう一人は知らない子だ。


「お!男子か。いいねぇ。どうも、俺は放送部の部長で蓮見はすみ) けい)っていいます。今、この二人に部活の説明をしてたんだけど、新しく来てくれたし、先にこれを見てもらおうか」

前の女子二人に、説明をしていた先輩が俺たちが椅子に座ったのを見て、話題を俺たちにも振ってくれる。

「女の子二人は、話が中断しちゃうけど大丈夫かな?」

「はい。大丈夫です」

知らない方の女子が、先輩の問いに頷き、それを聞いた先輩が浅く首を縦に振ると、先輩の背後に隠されていたパソコンの画面が全員が見れるように移動する。

「今から見てもらうのは、俺たちがこの前の京都大会で準優勝に選ばれたテレビドラマだ。部門については後で説明するとして、、まぁ、とりあえず見てくれ」

そう言って蓮見先輩は、動画の再生ボタンをクリックする。


流れ出したのは、高校生男女の恋愛を描いたドラマだった。

高校生が作ったにしてはうますぎる編集技術。しかし、話の作りこみはプロには到底及ばないが高校生が考えたのであれば、しっかり作りこまれている。

時間は約8分と、長くなくサクッと見れる感じで非常に満足できる出来だった。

このドラマをここの放送部が作ったというのか?


「以上が、俺たちが作ったテレビドラマでした」

やはり、蓮見先輩たちが作ったようだ。

「今のを、先輩たちが作ったんですか?まるで、いつもテレビで見てるようなドラマを」

そう聞いたのは、中学から知っている方の女子だ。

名前は確か、『大蓮寺だいれんじ 明日香あすか』といったか。

「そうだぜ。さっき後で言おうと言っていた、大会の部門について説明しよう。

これは大会にもよるが、放送の大会は基本的に6つの部門に分かれる。

まずは、個人部門である『アナウンス部門』と『朗読部門』だ。これは自分で原稿を書いたり、本の中から自分の読みたいところを抜き出して朗読する部門だ。アナウンサーや声優さんみたいなことをする部門だと考えてもらえればいい。一般的には、読み部門って呼ばれてる。詳しくは、入部してくれてから話すことにしよう。

そして次に、団体部門である『テレビドラマ部門』と『テレビドキュメント部門』さらに『ラジオドラマ部門』『ラジオドキュメント部門』だ。

この部門は、さっき見てもらったテレビドラマのように映像作品を制作して発表する部門になる。

普段テレビで見ているような、ドキュメント番組やドラマ番組をテレビとラジオの部門に分けて制作する。

こっちの一般的な呼ばれ方は、番組部門だ。

これについても、詳しいことは入部してから話すことにしよう」

蓮見先輩は、説明に一区切りつけるとまた、パソコンに向かいさっきのドラマとは違う動画を再生する準備をした。

「次は、読み部門のアナウンス部門で賞を獲った、俺の映像を見てもらおう」

そう言って先輩は、再生ボタンをクリックする。

そして流れ出したのは、どこかの舞台の上に設置された椅子に座り、原稿を片手にスポットを真正面から当てられた蓮見先輩だった。

観客に対して一礼し、おそらく原稿に書いてあるであろう内容を読み上げていく。


この映像を見たときのことを実は、今でもよく思い出せない。気づいたら、映像が流れ終わっていたのだ。

しかし、蓮見先輩が読んでいた原稿の内容だけははっきりと頭の中に残っている。

優しく、正確な読み方。そして、人にメッセージを届けることを意識した、ボランティア団体の活動についての原稿。


放送初心者の俺は、彼の紳士な姿勢に憧れて入部を決めた。


「と、今のが去年の全国大会の俺の発表映像。どうだったかな?我々放送部では、こういったことを主な活動にしてるんだ」


誰もすぐには、先輩の問いかけに答えられなかった。

ここに来た俺を含めた4人の新入生が全員、蓮見景の読みに衝撃を受けていたのだ。


「俺…放送部に入部します」

かろうじて紡げた言葉はそれだった。


こうして俺の高校3年間が幕を開けるのだった。

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