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この声を  作者: 戀情
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プロローグ「スタート」

4月。桜が舞う季節。俺は、校門をくぐった。

中3の受験勉強を乗り切り、この4月から可もなく不可もない地元の高校に通うことになった。

特に何かをやりたくて入学したわけでもなく、ただサボれるだけ受験勉強をサボりたくて選択した進路だ。

だから、これからの高校人生があんなにも波乱万丈になるなんて、この時の俺は微塵も思っていなかった。


クラス分けの表から、『斉場(さいじょう) 一灯(いっとう)という名前を探し出し、1年2組の教室に入る。クラスの人数は38人で大体、男女比が4:5といったところだ。地元の高校だけあり、中学から顔なじみの面々も多くみられる。


『新入生の皆さんに連絡します。まもなく、入学式を執り行います。新入生の皆さんは、それぞれの教室にいる先生の指示に従って、体育館へ移動してください』


名簿で割り当てられた席に着いたのもつかの間、そんな放送が入って俺たちは、体育館へ移動することになった。


校長先生のありがたいお言葉を右耳から左耳へ流し、俺たちは再び元の教室に戻ってホームルームを受けていた。

「今日から、部活動見学ができますのでこの後は部活を見学するも良し、早く帰って体を休めるも良し。とにかく、安全には十分気を付けて帰ってください。それじゃあ、今日はこれで終わります」

俺たちの担任になった、体育教師で男子高生に人気な顔立ちの『大條(だいじょう) 蓮華(れんげ)先生』が連絡事項を告げて、教室から出ていく。

入学初日ということもあり、日直が決まっていないのでホームルームがしっかり締まらなかったが、終わりだと感じ取った生徒たちが、帰り支度を始める。

中には、「とりあえず吹部見学しにいこっかな」「サッカー部入るは」「カラオケ寄ってこうぜ」とこれからの予定を話し合ってる者もいる。

「おい、一灯この後どうすんだ?」

後ろから声をかけてきたのは、俺の中学からの腐れ縁『海道(かいどう) 礼二(れいじ)』だ。

中学時代は野球部だったので、頭は坊主に少し髪が生えた程度の毛量で、顔はいかにも野球部ですっていうこわもての顔だ。

「俺は、もう帰ろうかなって。部活やりたくて、入学したわけじゃないし」

「何かをしたくて、入ったわけでもないだろ」

「おっしゃる通りで」

「じゃあさ、チラシだけでももらって帰ろうぜ。校門の前で、先輩達が配ってるだろ?」

「あぁ、そうだな」

今日から、3日間新入生を獲得しようと、各部活の先輩たちがチラシを配ったり、大きな声で呼びかけたりする部活動アピール合戦が行われる。

入学式の後も、体育館の前に待ち構えて、俺たちが教室に戻るまでも、正直鬱陶しいぐらいに勧誘してきた。


「それにしても、本当にどの部活もすごい勢いだったな」

「そうだな。部員が入れば、部費も多くもらえるからみんな必死なんだろ」

校門の前で、勧誘している部活動のチラシを礼二と分担しながらすべて集め、俺たちは集めたチラシを見ながら帰路についていた。

「なんかいい部活あったか?一灯」

「なんか、どの部活も部活をしてるっていうか、仲良く活動してますって感じだな」

「そうだよな」

「でもお前は、野球部に入るんじゃないのか?」

「中学時代ずっとベンチだったんだから、高校じゃレギュラーとれねぇよ」

確かに、何回か野球部の試合を見に行ったことがあるが、こいつが試合に出ているところは一度も見たことがない。

「でもな、せっかく部活するなら本気で打ち込みたいし…」

果たしてそんな部活はあるのだろうか?

チラシをみている限りでは、どの部活も全国大会を目指して全力で取り組んでいるわけではないかんじだ。

「そんな部活はなさそうだなぁ…ん?」

チラシをパラパラとめくっていると気になる文字が目につき立ち止まってしまう。

「どうした、一灯」

同じペースで歩いていた礼二が、俺が横にいないのに気づき、振り向いて俺の名前を呼んだ。

「なぁ、礼二。5年連続で全国大会に出場している部活があるらしい」

そう、うちの学校には唯一全国出場常連の部活動があった。

「何部なんだ?」

それは、

「放送部だ!」


果たして俺が高校で選んだ道は、正しかったのか今でも分からない。

でも、何もなかった俺にこの3年間は本当に意味のあるものだったのだろう。


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