第一話
第一話ではまだ転移してません。
ぶっちゃけ言うと読み飛ばしても多分問題ないです。
深夜零時。小さな街の外れにある、何年も放置された廃工場。
誰も寄り付かないそこに、大量の荷物を運び入れている青年がいた。
「……今日の所はここまでだな」
青年は運び込んだ荷物を一通り確認した後、落ち着かない様子で周囲を見回す。
浮浪者や不良が出入りしている噂は聞いてはいないが、万が一邪魔でも入ったら……。
「もう少しで…準備は終わる」
持ち込んだ折り畳み式の椅子に座り、独り呟き続ける青年の目は狂気を孕んでいる。
「あの胡散臭い野郎……いや、女の言ってた事が嘘だったら首括って死ぬ。
どっちにしろこんなクソみてぇな世界とはおさらばだ……」
壁に掛けられた工場の見取り図を確認し、放置されていた台車に荷物を載せ
用務員室へ向かう青年。
古びた扉を開くと湿っぽい不快な空気を部屋の中から感じる。
何年も使われていない用務員室はうっすらと埃が積り、薄汚れている。
家具は本棚や机、椅子が放置されており、照明は電気が通っていないので点かなかった。
窓を開け、網戸を閉めてブラインドを下げると、多少の埃と湿った空気が外に流れていく。
灯油ランタンを机の上に置き、点火すると光が室内が明るく照らす。
台車に積んだ大量の荷物を部屋の中に運び入れていく。
「あとは鍵を閉めて終わりにするか…」
南京錠を持ち、用務員室を出て工場の門へと向かう。
足早に門に近づき、閉じている門に南京錠を掛けて次は裏門へと向かう。
この工場は正門と裏門しか出入り口は無く、周囲はコンクリート塀に囲まれている。
昔軍需工場だったここを企業が買い取り、その企業が倒産したせいで放置されたままになっているらしい。
放置されて2年ぐらい経った頃は、肝試しスポットとして学生や若いカップルが出入りしていたそうだが…
物が撤去され、がらんどうになっている廃工場内を抜け敷地内の裏手に出る。
正門と同じように南京錠を掛け、用務員室へと戻る。
「……寝よう」
ランタンの明かりを消して、目を凝らして運び込んだ荷物の山から
寝袋を引っ張り出して、中に潜り込み瞼を閉じる。
数分も経たないうちに睡魔がゆっくりと意識を闇に引きずりこんでいった。
…………。
……。
―おいテメェ!まだ飯出来てねぇじゃねぇか!どういう事だ!―
―ごめんなさい…勇人を迎えに行ってて…。すぐ作りますから…―
―…チッ。この!―
―痛痛っ…。ごめんなさい…。―
―フン!俺はパチンコ行ってくるからな…飯作っておけよ!―
―ごめんなさい…。お母さん…―
―ううん、いいの。大丈夫だから…―
……。
―おい春川ァ…。俺ァ5万持って来いっつったよなァ?んだよコレ。
1万しかねぇじゃねぇかよオイ?ぶっ殺すぞ?―
―それが限界なんです…。先々週も渡したじゃないですか…!
もうお金が無いんです……!―
―知らねぇよカス!日曜まで5万持って来いよ!?
持ってこなかったらぶっ殺すかんな?…オラ!―
―うぐッ!?―
―この後どうするよ?―
―んー?とりあえずゲーセンでも行こうぜ―
……。
―君、この資料、ここの欄に脱字があるんだけど?―
―す、すみません。今すぐ直してきます―
―作り直すって君さぁ……紙だってタダじゃないんだよ?
それを君のミスで無駄遣いって……―
―すみません、以後気を付けます……―
―全く、大体君はそんな軟弱な態度で……―
―可哀想に、また春川君が部長に絡まれてるよ―
―気にくわないからってあんな小さなミスであんなにしつこく……―
―あの資料だって見学の学生さん……7人程度に渡すものでしょうに―
……。
…………。
ブラインドの隙間から漏れる光と鳥の囀りで目が覚める。
じっとりと掻いている嫌な汗でシャツが肌に張り付き、微かな隙間風で体が冷えているのを感じた。
「……クソ、昔の夢とか。最悪だ」
ぶつぶつと呟きながら寝袋から出て、身体を伸ばす。
荷物の中から財布を引っ張り出し、スマホで時刻を確認して用務員室を出る。
「8時……回収するか」
部屋の中に放置されている廃工場の鍵束を取って用務員室を出る。
用務員室の鍵を閉め、辺りを忙しなく見まわしながら裏門を開けて廃工場を出る。
廃工場の裏手にある森に足早に向かう。
森は廃工場からそう遠くなく、数分歩くと森に到着した。
真っ直ぐと森の踏み固められた道を通り、森の中をしばらく歩くと
事前にある物を隠しておいた小屋に到着した。
小屋の中からは特徴的な鳥の鳴き声が複数聞こえてくる。
室内に入り、その鳥が入った車輪付きの大型のケージを小屋の外に出す。
「……やっぱ十羽いると少しうるさいな、鶏」
ケージに閉じ込められた鶏はその全てが落ち着きなくケージ内を歩き回っている。
だが今日にはもう"儀式"をやる予定だ。この鶏共は廃工場に運ぶ必要がある。
森の中を今度はケージを押しながら歩く。
踏み固められているとはいえ舗装されていない道を歩いていると
ケージは小刻みに揺れる。鶏たちに更に落ち着きがなくなり、うるさく鳴き始めた。
「あぁクソッ…。やかましいな…だがまだ儀式の時間じゃないし…」
イライラしながら廃工場へと戻り、ケージを敷地内に入れて裏門を再び閉める。
ケージを廃工場内に放置し、用務員室へと戻る。
「……一応シャッター閉めとくか」
裏門側の出入り口のシャッターを閉じ、次に正門側のシャッターを閉じる。
ポケットからスマホを取り出し、時刻を確認する。
「……9時。気が早いが、もう描いておくか」
用務員室に戻り、荷物の山の中から一冊の本とローラー、刷毛、黒ペンキを引っ張り出し工場内に戻る。
ペンキやローラー、刷毛を床に置き、本を開いて目的のページを開く。
ローラーと刷毛に黒ペンキを付け、本の図解の通りに円を中心とした図形を床に大きく書いていく。
黙々とただ只管に床にそれを描きつけていくこと数分、工場の床には大きな魔法陣が完成した。
「よし、完成したな。
……儀式は真昼だな」
時刻はもうそろそろ10時に差し掛かる頃だった。
魔法陣の作成で凝った体を伸ばした時、外から車の音と騒音の様な音楽。
そして複数の人間の騒ぐ声が聞こえてきた。予想していた最悪の事態に血の気が引く。
「クソが…冗談だろ?」
悪態を呟きながら急いで工場の窓に近づき、慎重に外を覗くと
工場の正門前に4人の男が立ち、工場内を見ながら会話している様子が見える。
「なー?雰囲気出てるだろー?」
「おーいいじゃんいいじゃん!肝試しにぴったりだな!」
「どうするコレ?門閉まってっぞ?」
「んあー?…南京錠かー。なんか新しくね?」
4人の男たちは如何にもロクな人間ではないという見た目をしており
ここにはどうやら肝試しのつもりでここに来たらしい。
「はは…どうしよう。マジでついてねぇな俺…」
工場の窓から男たちを眺め、ため息交じりに呟く。
その時、窓からわずかに見えるこちらの顔に気付かれたらしく
男の一人がこっちを指さす。
「…おい、あの窓から顔覗いてねぇ?」
急いで顔を引っ込め、男たちの会話に全力で聞き耳を立てる。
「マジで?」
「どれどれ……んだよ、顔なんてねぇじゃん。
ビビって見間違ったんじゃねーの?」
「いや今確かに人がこっち見てた…
っし、俺いっちょ見てくるわ」
「おーマジ?でも門閉まってるぜ?」
「こんなのすぐ乗り越えられるって」
男が「見てくるわ」といった時点で服が汚れるのもお構いなしに
ローラーと刷毛、ペンキと本を抱えて用務員室に走る。
急いで部屋の中に入り、鍵を閉めて荷物の中から手斧を取り出す。
ドアに耳を当て、息を殺して工場内の気配を探る。
数分もしないうちにシャッターが開けられ、人の足音が工場内に響いた。
「確かこの窓だよな…」
「…………」
男はさっきまで俺が覗いていた窓のあたりにいるらしい。
工場の外から男の仲間がヤジを飛ばす。
「おーいなんかいたかー?」
「どうせなんもいねーだろー?」
「うっせー!今探して…んだこりゃ?」
分かってはいたが、どうやら描いたばかりの魔法陣が見つかってしまったらしい。
「何もしてくれるな…何もしてくれるなよ…!」
手斧を持ち、暗くした用務員室のドアの窓から男を覗き、必死に祈る。
魔法陣を見つけた男は外にいる仲間を呼んだ。
「おーい!なんか変なのあるぜー!
お前らもこっち来いよー!」
「マジで?よっしゃ、俺も行くわ」
「俺も俺も」「ちょ、置いてくなって」
男に呼ばれた男たちは門を登って次々と敷地に侵入してくる。
直に工場内に複数の足音と声が響く。
「ほら、見てみろこれ」
「うわマジだ…何だこれ?魔法陣ってヤツか?」
「おいこっちに鶏いるぞ?」
「お、おい…なんかやばいって…帰ろうぜ?」
男たちは工場の中を歩き回り、がやがやと騒いでいる。一名を除いて。
息を殺して監視していると、魔法陣を眺めていた二人の男がある事に気がついた。
二人は他の二人に気付いた事を教える。
「おい、これ…ペンキ全然乾いてねぇぞ?」
「これ描かれてから時間たってないって事か?」
「じゃあこれ描いた奴が近くにいる?」
「俺もう帰りたい…」「うっせぇ黙ってろ」
男たちはどうやら魔法陣を描いた者…俺を探し始めたらしい。
工場内に足音が響く。数分後には用務員室に足音がゆっくりと近づき、やがて扉の前で止まる。
「裏門の方は見たよな?」
「あぁ、門閉まってたし隠れられるようなところも…」
「じゃあここしかないか…閉まってるし」
「…あいつは?」「入口の方で隠れてる」
荷物の中から手製の黒いフード付きローブを引っ張り出し、服の上から着る。
手斧をしっかりと両手で持ち、扉の窓から見えなくなる様に、荷物の山の陰に隠れる。
「暗くて窓から中は見えねぇな」
「鍵かかってるぞ?」「マジで怪しいな」
「…ぶち破るか?」「キチガイでもいたらどうするよ」
「どうにかなるっしょ」
「んじゃせーので行くぞ…せーのッ!」
大きな音と共にドアが蹴破られ、明かりが用務員室に差し込む。
「ここまできて邪魔されて堪るか…!」
手斧をギリギリと握りしめ、息を深く吸い込む。
緊張のあまり乱れた呼吸を整えるために深呼吸する。
男たちが用務員室に入るその前に、荷物の影から飛び出した。
「がぁあああああああ‼」
突然叫びながら飛び出してきた黒ローブの男に度肝を抜かれたのか
男たちはただ飛び出しただけでパニックに陥り、悲鳴を上げながら逃げだした。
余程脅かしが効いたのか、こちらを少しも振り返ることなく
一目散に逃げていく男たちを尻目に、急いで儀式の準備を進める。
まずは急いでシャッターを閉じ、鍵を閉めてから供物の用意を始める。
「通報されて警察が来る前に早く…」
ぶつぶつと呟きながら手早く供物の用意を進めていく。
金の延べ棒五つ、大量の紙巻き煙草、黒胡椒を魔法陣のすぐそばに置く。
次に鶏のケージに近づき、暴れる鶏を一羽取り出して押さえつける。
「……」
暴れる鶏を片手で抑え込み、首に手を掛け絞め殺す。
絞め殺した鶏を脇に置き、次の鶏を絞めにかかる。
黙々と作業する事数分、十羽の鶏の死体を他の供物の傍に置く。
次に、荷物の中からバケツと大量の水を引っ張り出し、バケツの中に水を空ける。
魔法陣からかなり離れたところで衣服を全て脱ぎ、水を頭から被って体を清める。
次に儀式用の装身具一式を身に着け、最後にローブを着る。
そして、成功した時に"向こう"に持ち込む物一式を魔法陣の中に置き、
蝋燭を円形に配置して火を点けて、その次に豚肉の塊を大きな皿に乗せ、魔法陣の中に置き、
本と凝った装飾が施された短杖を手に持って、魔法陣の中心に立つ。
しばらく待つと、少しずつ鳥の鳴き声や遠くから聞こえる車の音が段々と消えていく。
やがて、強烈な威圧感と寒気が襲い掛かってきた。
逃げ出したくなるのを堪え、強く気を持つ。
「ここで逃げ出したら水の泡だ…振り返るな…。
すぅー…はぁー……よし」
深呼吸し、唇を舐めて湿らせ、本を開き呪文を唱える。
「…"魔界に座す者よ、我は汝を召喚する。
深き闇の底から現れ出で、我が願いを聞き届けよ。
封じられし者よ、我が求めるままにその力を振るい、我に仕えよ。
言の葉の契約に基づき現れ、契約のままに真を語れ。
我が契約のままに力を振るい、契約に従い闇の中に消えよ。
我が求めに応じて可視の姿を持ち、我が前に真を持って現れ出でよ"」
呪文の詠唱を終え、そのまま立ち尽くして待つ。
すると、やがて工場内に差し込んでいた光が何かに遮られていき
工場内を照らすのは蝋燭の光のみになった。
「はぁー…はぁー…気を強く持て…」
そして、魔法陣の前方に突然黒い穴が出現する。
最初は拳ほどの大きさだったその穴はどんどんと広がっていき、やがてその大きさは
民家一つを容易く飲み込むほどの大きさに広がった。
大穴の中からは風が吹き荒れるような音が轟々と響き、工場内を震わす。
やがて完全にその音は止まったが、大穴から吐き気を催すような悍ましい気配が放たれ、今にも逃げ出したくなってくる。
自身の身体の震えを感じながらも、大穴を凝視して短杖を構えていると
突然大穴の中から黒い煙が噴き出し始めた。
音も無く噴き出すその黒煙は大穴の上に留まり、巨大な何かの輪郭を形作っていく。
ゆっくりと形作られていくそれは、象を遥かに超える巨体の、直立する大きな蠅のように見える。
「う……」
完全に形を持ったそれはこちらをじっと見据えている。
ただ見られているだけだというのに、まるで全方位から凶器を突き付けられているような恐ろしい気配。
気圧されながらも唾を飲みこんで、声の震えを必死に抑えて呪文を唱える。
「な、"汝、言葉の契約に基づき、その位と真名を名乗り給え"」
悪魔はその手に持っている人骨と金銀宝石で装飾された杖を弄びながら名を名乗った。
老人の声に金属音が混じったような、その悍ましい声が名乗ったその名は、予想通りの者だった。
『…我が名は、"ベルゼブブ"。
魔界の総裁にして魔神である』
ベルゼブブ、魔界の最高権力者であると言われており
悪魔の王、サタンや堕天使ルシファーと肩を並べる程の力を持つと言われている。
おおよそ悪魔の中でも最大級の力、知名度を誇るそれを呼び出してしまった恐怖。
そして、それが今眼前に現れているという恐怖。
それを目の前のそれに気取られぬよう、強く呪文の続きを唱える。
「"汝、我と契約を交わし、我が願いの為に力を振るい給え"」
悪魔は呪文を聞くと、こちらを品定めでもするかのように見つめる。
数十秒立った頃、悪魔は答えた。
『貴様の願いと、その願いに対する対価を言え』
「金が5キロ、それと煙草と胡椒、そして鶏十羽」
『ふむ…中々…願いは?』
その問いに対して、拳を強く握りしめ、はっきりと答える。
「…異世界への転移」
『は?』
意表を突かれたらしく、多少間の抜けたような声で悪魔は俺の願いを聞き直した。
「異世界への転移だ」
聞き間違いでないことを確かめた悪魔は面白がっているかのような口調で話す。
『ほう…これは…面白い。
そのような願いを聞いたのは初めてだ。
ふむ、異世界への転移……。不可能では、無いだろう』
「本当か!?」
俺の問いを聞き、悪魔は笑みの混じった声で続ける。
『だが、この供物の量では見合わんなあ…』
しばらく黙った後、悪魔はゆっくりと告げた。
『片手片足か…目のどっちかを貰おう』
「……」
要求を聞き、悪魔を見据えたまま考え、悪魔の要求に答えた。
「……左目を渡そう」
『いいだろう…では呪文を唱えよ』
「……"我、契約に基づき、汝の求めし物を与えん"」
呪文の詠唱と共に用意した供物が次々と発火、炎に包まれて燃えていく。
まず金が燃え尽き、次に煙草、胡椒と燃えていき、鶏の死体も燃え尽きた。
そして、激痛と共に左目から炎が噴き出す。その炎は左目だけを焼き尽くしていく。
あまりの苦痛に床に崩れ落ち、悲鳴を上げる。
炎の吹き出続けている左目を痛みのあまり片手で抑え、片膝をつく。
だが炎は衣服や手を焼くことなく、左目だけを焼いている。
「ぐ、うぁあああああアあああァあ!?」
やがて激痛は収まり、吹き出ていた炎も消える。
片膝をついたまま、恐る恐る左目のあった場所に触れると
そこには義眼らしきものが埋め込まれていた。
『それは我の親切心からの贈り物だ…くれてやる。鏡を見てみるがいい』
悪魔がそう言い、杖で床を突く。
すると魔法陣の少し前…目の前に浮遊する大きな鏡が現れ、今の姿が映された。
鏡に映された自身のその姿に思わず呟く。
「何だこれ…」
『"暴食"の象徴石…ルビーだ。
どうだ、素晴らしいだろう?』
悪魔の言う通り、左目のあった場所にはルビーでできた義眼が埋め込まれていた。
義眼の表面は美しく整えられており、光を受けて赤く輝いている。
呆然としている俺を余所に、悪魔は一人続ける。
『さて…供物は受け取った。
次は貴様の願いを叶える番だな』
悪魔のその言葉で我に返り、制止する。
「待ってくれ!」
『んん?なんだ今更…まだ何かあるのか?』
悪魔に問われ、足元に置いたリュックから一冊の本を取り出し、悪魔に投げ渡す。
「行く先の世界は出来るだけその小説のような世界にしてくれ」
本を受け取った悪魔はそれをパラパラとめくり、閉じた後それをこちらに投げ返す。
『まぁいいが…捜索に少し時間がかかるな』
そう告げた悪魔は再び杖で床を突く。
鏡が消え、工場の床一面に紅く光り輝く魔法陣が出現する。
「おお…」
その幻想的な光景に心奪われていると、次第に魔法陣は
ゆっくりと回りながら俺が描いた魔法陣に収束し、さらに強く輝いていく。
『さぁ…今から貴様を転移させるぞ…』
悪魔の生み出した魔法陣の回転が止まり、一層強く輝き始める。
そして、カウントダウンが始まる
『3……2……1……0!』
魔法陣の放つ真紅の光で部屋が満たされ、雷鳴のような音が鳴り響く。
次第に光が弱まり薄暗くなった廃工場には、何者の姿も無かった。
……そう、召喚されたベルゼブブの姿すらそこにはなかった。
かの大悪魔は魔界へと帰ったのか、それとも世に解き放たれたのか。
それは、この物語では語られることは無いだろう。
こんな感じでのんびり更新していきます。
もしかしたら更新が滞る事もあるかもしれませんが
その時は気長に待ってくれると嬉しいです