表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/31

1話-準備完了-

1話-準備完了-



仕事を引き受けると答えて一カ月が経過した。肝心の仕事はまだ行っていない。と言っても、別にサボっているってわけじゃない。

クライアントであるヴァルハラ指導の下、俺はこの一カ月の間、ひたすら準備と言う名の、厳しい訓練を行っている。

全ては地球とは全く異なる理と文化を持つ異世界へと渡るために。


第12管理世界『イリアス』――それが、俺が赴任することとなる世界だ。

文明レベルは地球で言う中世ヨーロッパのそれと近い。戦争、飢饉、疫病、奴隷といったものが存在するのは当たり前。

これだけでも準備を念入りに行うには十分すぎる理由になるが、俺を含めクライアントが慎重になっている最大の理由は、その世界にはファンタジーのお約束である魔法や人とは異なる存在が多く存在しているということだろう。


まあ、人とは異なる存在は人種に置き換えればどうとでもなるとは思うが、今までフィクションの中でしか目にすることのなかった魔法と言う概念は、一朝一夕と言う訳にはいかない。

訓練の内容も、ほぼこの概念の理解と習得、そして習得した後はひたすら実践というもので埋まっていた。その甲斐あって、魔法の扱いはもう全く問題ないと言ってもいいほどのレベルになっている。

あとの残りは――


「肉体と魂のリンク、本日も問題なしと。うん、お疲れさまでした、九郎さん」

「おー、サンキューな、ヒルデ。まあ、素は自分の身体だからな。違和感もちょっとしたもんだし」


仕事を引き受けるにあたって提示された報酬の一つ。より高次の存在として生まれ変わったこの肉体に慣れること。

といっても、これ自体は、俺の身体の定期健診を担当しているヒルデにも言ったように、比較的容易だった。

強化されたとはいえ、素は自分の身体なわけだしな。違和感も40代で衰える一方だった身体が、急に17、8歳くらいまで若返ったことで生じたごく些細なものだったし。

慣れてからは……うん、もうなんて言うの。ほんと若いって素晴らしいと思えるね。しかも、なんともご都合主義なことに、今後はずっとこの若さを維持出来る――つまり『不老』って言うんだから、ほんとこれだけでも仕事受けた甲斐があるってものだ。

まあ、不老ってだけで不死ではないから、致命傷受けたらあっけなくぽっくり逝くらしいから過信は出来ないが、まあ必要以上にビビることもないだろう。


それよりもだ。いつもは定期健診が終われば、二、三言話して帰っていくヒルデが、今日に限って、まだ俺の部屋にいる。しかもすんげえ真面目な顔をして。

と、いうことは、いよいよ来たってことかね。


「さて、九郎さん。これまで一ヶ月間の訓練と定期健診の結果、機は熟したと私達は考えております」

「お、てことは、もしかして?」

「はい。お察しの通り、『旅立ちの時です』。本日はこのままお休みになられ、体調を万全に整えた上で明朝8時にゲートの前にお越しください」


そして、その予想はどうやら正しかったらしい。まあ、数日前くらいからだいぶ軽めの

ものに切り替わってたから、そろそろじゃないかとは思ってたんだよな。

だからこそ、ここで俺は今一度彼女に確認しなければならないことがある。


「なあ、ヒルデ。最終確認させてもらっていいか?」

「はい、どうぞ」

「まず、向こうでの目的。それは大規模な戦乱に繋がるだろうモノを早い段階で摘むことでいいんだな?」

「そうですね。仮に間に合わず起きてしまった場合は、拡大する前に最小限で防いでください。そういったものがない限りは向こうの世界で常識の範囲内で、お好きなようにお過ごしください」

「オーケー、オーケー。んじゃ、後一つ」


目的を確認したところで、最後の確認を行うために。俺は、生まれ変わる際に教えられたある魔法を唱える。


「『ステータス』」


そう唱えると空中に、まるでゲームのウィンドウのようなものが浮かび上がる。

どんな魔法の才能がない者でもこの魔法は例外なく使える。いや、使えなければならない。なぜならこれは、今の自分の実力を客観視する上でなくてはならないものなのだから。

ウィンドウ内に書かれているのは、魔法の名が示す通りその者のステータス。名前や種族はもちろん、スキルやパラメーターといったものがこれを見れば一目で分かる。自分にも、そして他人にも。


「俺の実力って、その世界でどんなもんなのさ?」


そう言ってヒルダに見せる俺のステータスは、以下の通り。


名前:

烏丸九郎(カラスマ クロウ)


種族:

???族(人族ベース)


ステータス:最高S、最低E

体力S、筋力A、魔力A、技量S、耐久A、耐性A、敏捷A、知性A、幸運A


スキル:最高S、最低E

ユニーク

地球の知識、異世界の知識

創造魔法S、ウェポンマスタリー:銃器S、多人数戦の心得、暗殺の心得

不老、眷族化

一般

格闘術S、医学B、薬学B、危険察知S、気配察知S、鑑定A、教導A

魔法B(攻撃E、防御E、回復S、強化S)

戦略A、罠作成A、指揮A、サバイバルS、隠密A、狙撃S


※なお、異世界転移後には秘匿情報は全て改竄される。

名前はレイヴン、種族は人族、スキルは一部隠蔽。秘匿情報の閲覧は本人と本人に許可された者にのみ可能。


自慢するってわけでもないが、一見かなり高い部類に入ると思う。ただ、仕事の内容が内容だ。もしかしたら自分以上の存在が多くいる場合は、立ち回りを色々と考える必要がある。

こっちとしてはあくまでも真剣に聞いたことなのだが、そんな俺のステータスを見たヒルデは、フッと短く笑い、そして一言。


「魔法関連に偏りはあるものの、十分チートですので、ご安心ください。では、私はこれで失礼しますね」


そんなことを口にし、さっさと支度を整え、俺の部屋より退出するのであった。

『明日の朝、遅刻することのないように』という一言も忘れずに。

そうして残された俺はと言うと。


「……よし、寝るか」


明日に備えて早めの就寝するために、ベットに潜り込むのであった。一応念のために言っておくが不貞寝じゃないからな? あくまで体調管理のためだからな。別にまともに取り合ってもらえなくて、悲しくなったわけじゃないからな!


………

……


閲覧ありがとうございます。


育成要素のあるゲームをしていると、ついついステータスを長時間眺めてしまうことってありませんか?

私はよくあります。

今後どういう方針で育てるのか。また予定してた通りの成長をしてくれているのか。そういったものって気になりますよね。


今回は最後にちょろっと主人公のステータスがありましたが、彼のような存在がゲームで出てきたら、大抵は色々複雑なフラグを回収することによって終盤で仲間に入る超強力助っ人か、序盤で主人公を導くために登場し、なんらかの理由で離脱してしまうお助けキャラかのどっちかだと思います。

まあ、そんな存在が今作では主人公張っているわけですが、まあ今後色々苦労するでしょうから、多少はね(苦笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ