27話-仕事がすんだら仕事だぜ3-
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夏風邪に気を付けてください。今年の夏風邪は……ヤバいっす(汗)
27話-仕事がすんだら仕事だぜ3-
そして時は戻り、現在――
SIDE:レイヴン
「ひ、ひいああああああああああああああ!?」
どうやら俺のお土産を気に入ってくれたのか。黒幕の方割れは情けないまでの絶叫を上げている。
目を見開き、顔なじみの変わり果てた姿に、心の底から恐怖している。
快楽殺人を好む特殊な性癖はしてはいないが、こうも期待通りの反応を見せてくれると、思わず笑ってしまいそうになる。
「き、貴様! こんなことをして、ただで済むと思っているのか!? 俺は貴族だぞ!?」
典型的な物語の大物ぶった小悪党が言うようなセリフまで恐怖に引き攣った顔でいうのだから、尚更だ。はっきり言って、全く威圧感を感じない。
「……ハ」
だから、鼻で嗤ってやった。
それが?
結局お前は何が言いたいの?
そんな明らかな侮蔑と嘲笑の意志を込めて、そんな無意味なことが抑止力になると考えている、この馬鹿に現実を知らせてやる。
この世界の常識から言えば、それは明らかに不敬罪――死罪に直結するものだろう。
貴族を蔑ろにするとは、そういうことなのだ。だからこそ、明らかにスペックでは勝っているカーラ達、牙の一族ですらこいつに手を出すことは出来ず、内心苛立ちながらも、こいつの指示には従ってきたのだ。
まあ、カーラは、相当邪険に扱ってたみたいだが、それでも直接的に手出しは出来なかった辺り、この世界における貴族というのは、後ろ盾やらなんやらで、相当な力を持っているのだろう。
だからこそ、こいつは今この場でも、自分が貴族であると言えば、相手が引くと考えている。それが交渉の切り札になると思い込んでいる。
だが、実際はそんなもの、交渉の場――それも命のかかった場において、なんの価値もない。
そういう場において価値のあるモノはもっと別にある。それはまあ、人によりけりだが、今の俺で言うならば、ラパン村に対する多額の賠償金と、この世界に存在する魔法の一種――『強制』の魔法を用いて二度と近寄らないという契約を結ぶこと。
その二つこそがこの場においての有効な取引材料なのだが。
「き、貴様! 今、俺を嗤ったのか!? 貴族である俺を、どこの馬の骨かも分からない貴様が!?」
……うん、カーラの話を聞いて、予想はしてたけど、今はっきり分かった。こいつは『馬鹿』だ。それも馬鹿の前に『底抜けの』が就くくらいのな。
今自分がどういう状況に置かれているのかを理解し、迂闊な発言は避ける。そんな基本的なことすらも出来ていない。こんな馬鹿が、よくもまあ、継承権争いしてた連中を蹴落とせたなと、逆に感心したくらいだ。
「おい、なんとか言え! 俺に詫びろ!」
ただ、まあ、カーラから『あいつは血に狂ってる。何をするか分からん不気味さがある』なんて話を聞いた時は、若干警戒していたんだが、拍子抜けだな。
こんなもん、俺からしてみれば、まだまだ正常だ。
貴族ということに対して異常なまでの優越感を持ち、弱者と判断した者に対しては何処までも強気。そんな何処にでもいるような、テンプレートな悪役でしかない。これまでの人生の中で出会ってきた本物達と比べれば、『甘』過ぎる。
底も見えたし、興も冷めた。廃人になるくらいで勘弁しておいてやるかな、くらいの気持ちになってきた。その矢先だった。
「第一、たかが兎人族で暇つぶしをしようとしただけの俺が、何故こんな目に遭わねばならんのだ!? くそ、忌々しい!」
その余りにも自分勝手な男の言葉に、俺のスイッチは完全に切り替わる。
表情はあくまでも今までとは変わらず、中身だけがゴソッと別のモノに変わるその感覚を味わうのはいつぶりくらいかな、なんてことを考え、俺は――
「あー、お前さ」
「なんだ! 詫びるか!? いいぞー、俺様は心が広いから許して――」
「ちょっと黙れ」
瞬時に相棒を呼び出し、殺意を隠すことなく、躊躇いなくトリガーを引いた。
もちろん、これは威嚇だ。発射された弾丸は、標的の頬を狙い通り、掠めただけ。だが、こいつにとって、それでも十分だったらしい。
「あ、ああああ?」
情けない声を上げ、へなへなとその場に崩れ落ちる。俺の殺意に充てられたのか、その股間がじわじわと濡れていく。先ほどの勢いを考えると、その豹変ぶりは実に滑稽ではあるが、だからといって、俺のやることは変わらない。
「さて。お前には二つの道がある。一つは自ら命を絶つか。そして、もう一つは――」
「もう一つは?」
何故なら、こいつは『敵』だ。互いに命を賭して戦う、対等な立場の『強敵』ではなく、世界にとってなんの益にもならない『害虫』だ。
こいつは必ず、悲劇を生みだす原因となる。そして、その対象となった者達がラパン村の連中のように、その悲劇を回避出来るとは限らない。ラパン村にしたって俺の介入が無ければ、今頃どうなっていたか、分からないわけだしな。
故に――
「俺に殺されるかだ。どちらか選べ。好きに選べ。三秒だけ待ってやる。過ぎたら俺に任せてもらう。いいな?」
「は? は!?」
それ以外に道はない。
「3」
「いやいやいや、ちょっと待てちょっと待てって!?」
別に正義の味方を気取っているわけではない。『殺し』なんて汚れなことは本来なら御免被りたいものだ。
「2」
「お、俺は貴族だぞ! 分かってるのか!?」
だけどな、それでもこの世には生きているのが間違いなヤツってのは必ず存在する。
「1」
「わ、わかった。あの村には手を出さない! お前の無礼も許す! それで手打ちにしようじゃないか! うん、いい案じゃないか! なあ!?」
なら、それを始末するのは、リリィとかベア、ラパン村の連中みたいな連中じゃなくて――
「0……時間だ。回答がなかったため、俺の好きにさせてもらう」
「は、いや、ちょ、え!?」
そういったことをこれまで何度も経験したヤツがするのが筋ってもんだろう。
故に、俺は、今度こそ外さないよう、なにやら必死の形相で喚いている馬鹿の眉間に照準を合わせ――先ほどと同じようにトリガーを引いた。
………
……
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