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19話-誰がために戦うのか-

閲覧ありがとうございます。

今回は二本立てとなっておりますので、お楽しみください

19話-誰がために戦うのか-


村長との話し合いがまとまって、すぐ村人達は集会場へと集められた。

いやあ、そこでも最初は一悶着ありましたよ、ええ。やれ戦いたくないだの、やれ逃げようだの、そりゃもう後ろ向きなことばっかり。まあ、それでも村人達の意識を戦いへと向けることには成功したんだけどな。

え、それを詳しく説明しろって? 規模が大きくなったとは言え、村長や長老連中にやったことと全く同じだよ。

仲間の必死の訴えかけで傾いたところに、油注いで、自分達の弱さに目を向けさせて、それでも戦える道を示してやる。そんだけの話だ。


で、今現在、俺は村でも一番広い場所で、村防衛の際の戦力として志願してきた若い連中、約五十人程を見ていた……のだが。正直に言おう。


「ほんと、なんだかなあ」


うん、弱いのは分かってたけど、それでもね。一応狩猟経験のある連中が多いだけあって、弓の扱いにしても、短剣の扱いにしても、一応の形にはなっている。といっても形になってるだけで、ズブの素人よりはマシ程度。現時点で唯一戦力になりそうなのはと言うと、一人だけ。


「す、すみません、レイヴンさん。みんな、頑張ってはいるんですけど」

「ああ、それは分かってるよ」


まあ、こいつ――リリィが異常なだけってのもあるんだけどね。優れた弓の使い手であったということを差し引いても、ちょっと教えただけで、狙撃銃使えるようになったし、あとは実戦で勝手に上達していったし。

ただ、リリィ以外の若い衆には、問題がある。んで、それをどうにかせんことには戦いにすらならないレベルの致命傷。

それこそが――


「ただ、お前らにしても、人間相手にした時、腰引け過ぎ。武器にビビって過剰に避け過ぎ。そんなんで戦が出来るか!」

「「「「す、すみません!」」」」


そう、そうなのだ。これこそが一番の問題。

一応個々の能力を知るために基礎的な訓練をこなし、運命の日までに形にはなりそうだなと安堵した矢先、対人を想定した実戦訓練をしてみりゃ、これだ。

種族を通して温厚な性格ってのもあるだろうが、妙に優れた気配察知と危険察知。この二つが完全に裏目に出てる。

武器が動く気配を見せれば、動いてもいないのに過剰なまでに相手との距離を取る。当たりそうになれば、全力で避ける。

ロマーノが真正面からの戦いじゃ絶対に勝てないと言ってたが、確かにその通り。これで勝てたら奇跡だって。


ただ、不思議なのは、こいつら、皆、狩猟は出来るんだよなあ。なので、一応聞いてみたんだが、返ってきた答えはと言うと。


「「「「いやいやいや、獣と人じゃ全然違いますって!」」」」


だとよ。うん、なるほどなるほど。よっく分かりました。つまりこいつら、言葉を解すか、解さないかで分けてるのな。

なるほど、確かにそれは人として、まあありうる考え方だ。俺もそこは理解しよう。ただな、今はそんなこと言ってられる状況じゃないってことだ。

そんな状況でそういうことを言ってるってことが、なによりの大問題だ。


ただ、その価値観もきっと長年のコンプレックスが作り上げてきたものだろうから、そう簡単には変えられない。

ならばどうするか。簡単な話だ。要は価値観を変えてしまうような、そんな体験をさせてやればいい。

と、言うことで――甘くするのは、ここまでだ。


「……ら、……べ」

「れ、レイヴンさん?」

「っ、貴様ら! そこに並べ!」


軟弱な態度を見せる馬鹿共を一喝する。これ疲れるし、昔のトラウマが蘇るからやりたくないんだけど、もう四の五の言ってられない。

まあ、いきなり怒鳴られたら、誰だろうとびっくりして身体が硬直する。硬直すれば始動が遅れる。

その場で俺の指示を完璧にこなせたのはリリィだけ。あとの連中は、俺の豹変ぶりにただただ戸惑うだけで行動には移せない。

そんな時はどうするか、決まってる。


「さっさとせんか!」


ケツを蹴り上げてやりゃあいい。

そうして整列して、はいおしまい……って、んなわきゃないじゃん。むしろこっから本番ですよ、本番。


「いいか、馬鹿共。今のままで戦に勝てると思うなよ。戦いになれば、お前達が殺したくないと思っていようが相手には関係ない。相手は容赦なくお前らの首を取りに来るぞ。本当に分かっているのか?」

「「「「「はい」」」」」

「返事だけはいいな、馬鹿共。ただし、薄っぺらい」

「「「「「!?」」」」」

「戦場では女も、子供も関係ない。女だから、子供だから。そう油断して背中から刺された馬鹿を俺は知っている。粉微塵に吹き飛んでひき肉になったボケナスもだ。それが、戦争だ。お前達がやると決めたな」


俺の言葉に絶句する一同。

ただ、これは全て、俺が目の当たりにした、一切の装飾もない事実である。


互いに殺し合うだけならまだしも、平和を願い送られた使者を容赦なく殺し、情婦を用いて暗殺し、子供を使って自爆テロを仕掛ける。明らかに狂った行いと分かっていようが、それが無くなることなど決してない。何故なら、それも戦争の一面なのだから。


と言っても、こいつらにそこまでやれとは言わない……てか、やらせたくない。ならば何故、それを今ここで言ったのか。それは、全てこいつらに覚悟してもらいたかったから。

それはなにも、自分のためだけにではない。


「もしお前達が負ければ、その牙はお前達の愛する家族に、恋人に、友人に向けられることになる。それでも、お前達は人と獣とは違うと言って、殺すことを躊躇うのか?」


自分達の後ろにいる大切な者のために、戦いたいと願いながらも、歳のため、病のため、どうしようもなく適性がなかったため、今この場にいない者のために、護るための覚悟を決めてもらいたかったからだ。


その覚悟が出来ないヤツは、残念ながら、どう訓練しようが戦力にはなりえない。皆の足を引っ張り、余計な犠牲を生み出しかねない。

それ故に、この問いかけを聞いても、まだそんな甘っちょろい考えでいるようなら、この場でここより立ち去ってもらわなければならない。

だが、どうやら、そんな俺の心配は、杞憂だったようだ。


「すみませんでした、レイヴンさん」

「どうやら、自分達の認識が甘かったみたいです」

「そう、そうですよね。これは私達だけの戦いじゃない。村皆の戦いなんですよね」

「俺の女にはぜってえ指一本触らせたくないっす!」

「絶対に勝つわよ!」


各々の瞳に決意が宿る。それは先ほどまでのように中途半端なものではなく、本物の決意。

うん、これならば、戦える。そう、俺は判断を下し、そして。


「よし、んじゃ訓練再開すっか。時間ないから地獄見ることになるだろうが、覚悟、出来てんな?」

「「「「「「――はい!」」」」」」


訓練を再開するのであった。



もちろん、その後の訓練はきっちり宣言通り地獄を見せてやったがな。

俺と……途中で手が足りなくなったから、別件で準備に当たっていたベアも呼び出して、倒れたヤツは片っ端から回復魔法で強引に復活させて、寝る間も惜しんで基礎訓練と戦闘訓練と戦術指南を行いましたよ、ええ。

まあ、そのおかげかどうかは知らんが、五日目には全員、形にはなったからよしとする。


「よし、では、これで訓練を切り上げとする。全員よく付いて来たな」

「「「「「「はい、全てレイヴンさんのおかげであります! 本当にありがとうございました!」」」」」」

「お、おう」


まあ、ちょっとやりすぎちゃって、ほんとの軍人っぽくなっちゃったのは、御愛嬌ってことで。染まってないのは……


「リリィ。あなたはあんな風になっちゃ駄目よ?」

「あ、あはははは……」


そんな様子を乾いた笑みで見つめているリリィただ一人ってのも、そういうことでよろしくお願いします、はい。


………

……

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