15話-宴の席で泣いてる子だっているんですよ-
15話-宴の席で泣いてる子だっているんですよ-
さて、アンナとアメリの双子姉妹救出作戦も成功、おまけに森の主であったらしいアイアングリズリーの討伐も成功し、意気揚々と村に戻った俺達を待っていたのは――
「えーと、モテモテね?」
「変わるか?」
「いや、遠慮しとくわ」
なんか泣きたくなるような現実でした。うん、主に俺がね。
現在、俺とベアとリリィは、救出に貢献した英雄としてささやかだが村を上げて行われている宴の席にいた。宴のメインディッシュはアイアングリズリーの肉を使った串焼きだ。よく熊肉は硬いなんて言われてるが、こいつの肉は違う。柔らかくてジューシー。早い話がすっげえ美味い。なんでとは思ったが、まあ異世界だしってことで納得しとく。美味いは正義です。
ちなみに、見た目人族の俺に対する村人達の偏見は、今回の一件で多少はぎくしゃくしたものは残っているものの、かなり改善されている。
少なくとも、向こうからお礼の声と空になったグラスにお酒を注いでもらえてる辺り、大きな進歩だろう。そういや、なんか村の若い娘さん数人から趣味や好みの料理とか聞かれたけど、ありゃどういう意味なんでしょうなあ、ちょっと期待しますよ、ええ。
状況は少しずつだが前に進んでる。大変喜ばしいことに。
だというのに、何故俺が泣きたくなるのか。それを説明するには、今の俺の外見がどうなっているのか聞いてもらうのが手っ取り早い。
戦闘では一切汚れを付けなかったお気に入りの黒コートはべたべたのよれよれ。髪の毛は、まるで起きたばかりのベアのようにぼっさぼさに乱れ、黒いTシャツはビヨビヨに伸びている。
まさにボロボロといったような見た目を、今の俺はしているのだろう。
可哀想なものを見る目をしてるのは、ベアだ。まあ、その口元が若干緩んでる辺り、同情よりも面白さが勝ってるんだろうよ。変わってくれるかと言う提案の際に、即答で断って来たのがいい証拠だ。
「……はあ」
思わずため息が出てしまうが、それは仕方ないというものだろう。地球にいた頃よりおよそ二十年は戦場暮らしを続けていた俺が――
「レイヴンにいちゃん、さっきのまじっくっていうのまた見せて?」
「ちょこくれー」
「きゃんでぃも」
「あー、ずるいぞ、お前ら。にいちゃん、おれにもおれにも」
子供の面倒見ることに慣れてると思うか? それも一人や二人じゃない、十は軽く超える人数をだ。普通に考えて、無理だろうがよ。
周囲に助けを求めようと視線を向けるが、村人たちは我関せずで酒を酌み交わすか、まあまあ勘弁してやってくれと言わんばかりの生温かい視線を向けてくるかのどちらか。中には自分の子供を預けてくるヤツまでいた。なんでも強い人の加護で子供が強くなるかもとかなんとか。
やたら顔赤いし陽気だし呂律も怪しかったしで、だいぶ飲んでるんでしょうね。俺? ハッ、子供集まり出してから、間違って飲んじゃ大変だと思って一滴も飲んでねえよ。危ないから串焼きの類いも平和だった最初の方に口にしただけで、それ以降は全然食えてねえよ、チクショウメエエエエエエエ!
てか、なんでこんなに懐かれてんだよ、俺。意味分かんねえよ、ほんと。どこかに原因があるはずだと思い、髪を引っ張られーの、身体をよじ登られーのしながら、周囲を見渡すと。
「ほんとかー、アンナ。お前ら嘘言ってんじゃねえだろうな」
「ほんとよ、おじさん。おにいちゃんが出すおかしって甘くてとっても美味しいの。ね、アメリ」
「うん、ちょことかきゃんでぃとか今まで見たことない綺麗で甘くてとってもおいしいおかしをたくさん持ってるの」
「ほら、あの子達見て。珍しいもの持ってるでしょ?」
「言われてみりゃあそうだなあ。おっしゃ、んじゃ、英雄様にうちの倅も頼んでみましょうかね」
……はい、即効見つかりました。アンナとアメリの二人が、発生源でした。うすうすそんな気もしてたけど、やっぱりそうですよねー。
はい、そうですよ。助かったと分かってわんわん泣いてる二人をあやすために、ベアやリリィにしたみたいに、でも母親も心配してるだろうから、村に向かって歩きながら簡単に食べられる甘いものってことで、キャンディやらチョコレートやらを創ってやりましたよ。それも地球産のな。明○のミルクチョコや不○家のぺ○ちゃんキャンディとミ○キーですよ。もの欲しそうに見てるベアやリリィにもくれてやりましたよ。子供二人よりも幸せそうな顔して食べてましたよ。それがなにか?
「あとね、まじっくっていうのも見せてもらったの」
「マジック? 魔法のことか? それは別に珍しくなんかないだろう?」
「ううーん。よくわかんないんだけど、魔法みたいに魔力をつかうんじゃなくって、あくまでも手先の器用さでやるんだって」
「なんか、俺も興味湧いて来たぞ、それ。倅と一緒に行ってみるか」
はい、その時調子に乗ってマジックも見せました。手からパッとトランプ出てくる簡単なヤツです、はい。
自業自得だって? ああ、そうとも。そうとも言うな。でもさ、ちょっと考えてみてほしい。泣いてる子供ってなんとかして泣きやんで欲しいじゃん。そのためにお菓子あげたりするじゃん。少なくとも俺はガキの頃、そうしてもらった経験あるからそうした。それの何が悪いってのさ。俺はわるくねえ、俺はわるくねえ!
「なんか悶々と考えてるみたいだけど……新しいお客さん来たみたいよ」
「あん?」
そのベアの言葉に現実に引き戻され、視線を上げたその先に――
「あーその、なんだ。もしよかったらうちの倅にもそのきゃんでぃとちょこってヤツくれるとありがたいんだが」
「お願いします!」
若干遠慮しがちに、しかし自分の要求はしっかり口にしてくるおっさんと、にこにこと笑みを浮かべる子供の二人が並んでいる。
あー、はいはい。そうですか、そうですか。ゆっくり現実逃避もさせてくれないってか。オーケー、了解した。ならば、よろしい。
「……ふはははははははは! よかろう、全力でもてなしてくれるわ! さあ少年、まずはこいつを食え! おっさんもどうぞ!」
そう叫んだ後、一時間程記憶が曖昧となっている。
気付いた時には、俺はぐったりと床に倒れ伏し、そして――
「すいません、レイヴンさん。パパったら話が長くて――って、どうしたんですか、そんなボロボロになって!? 誰にやられたんですか!?」
「あー、リリィ。とりあえず、あなたの思ってることとは違うから安心しなさい。で、レイヴンなんだけど……プ、フフフフ。ダメ、思い出しただけで、おなかがっ!」
「ええええ!? なにがどうなってるんですか!?」
笑いを堪えようと必死のベアと、状況把握が出来ず困惑しているリリィの会話を、ぼんやりと反論することなく聞いているのだった。
まあ、それも――
「って、そういえば、レイヴンさん。パパがお話があるそうなんですが」
「あん? ロマーノが?」
リリィのその一言までだったんだがね。
しかし、一体何の用があるのかねえ。ま、聞いてみりゃ分かるか。
………
……
…
閲覧ありがとうございます。
もうすぐお盆ですね。楽しみです。
今回はギャグ回にしてみようってことで、このような形に。
それに伴い、主人公には酷い目にあってもらいました。まあ、最後はやけくそでも乗ってくれたので、作者としては満足です、ええ。
次回からはちょっとシリアスめな話が続く予定ではありますが、あくまでも予定ですので、変更の可能性も。まあ、そこはノリとバランスを考えつつやっていきたいなーと。
それでは、また次回にお会いしましょう。




