12話-何処に行っても馬鹿は馬鹿-
12話-何処に行っても馬鹿は馬鹿-
「んで、朝っぱらから何の用だよ。お前さん達」
目を覚ました二人組の男に、聞くことと言えば、さっきまでの騒動の原因。これしかないが、他にもありましたなんて可能性もなくはないので、まあ一応ね。
あ、ちなみに現在二人は両手両足縛って床に転がってる状態。またさっきみたく暴れられるのも面倒くさいし。
で、肝心の俺達はと言うと折角リリィが用意してくれた朝食を冷ませるわけにもいかんので、いつものように四人で食卓を囲っている。まあ、こんな朝食の時間に押し掛けてくる方が常識知らずなわけだし、なにより――
「それは……って、お、おい。お前ら、いつまで寛いで――」
「あら、また五月蠅いネズミがいるわね。次は燃やしてみようかしら」
「「ひっ!?」」
なにか抗議しようと動きを見せた瞬間に、ベアトリスが釘を刺し、それを即座に封じる。笑ってないめっちゃいい笑顔で、物騒極まりないこと言ってな。
ここ数日一緒に過ごしてきただけだが、こいつのマイペースっぷりは完全に把握したし、そしてそれを乱されることを極度に嫌う性質だってのも理解した。
なので、こいつはヤると言ったら絶対にヤる。命を粗末に扱うヤツじゃないのも分かってるので、処刑なんてとこまではいかんが、相手の心にトラウマ植えつけるくらいのえぐいことは平気でな。
その証拠に、さっきの発言の際、顔は笑顔なのに、目は全く笑ってなかった。なまじ美人なだけに、その迫力はすさまじい……てか、ぶっちゃけ俺でも怖いです。ビビってます。リリィとロマーノに至ってはドン引きです。目が死んでます。
生前、戦場駆け回ってた頃にもお目にかかったことねえよ、こんなおっそろしい女。正直敵に回した時のことを考えなくて済む現状がありがたくて仕方ないです、はい。そう考えると、あの転移してすぐドラゴン戦突入なんていうクソゲー真っ青な体験も悪くなかったってことになるな……いや、もう一回はごめん被りたいけどな。
話を戻そう。
まあ結局のところ、二人組が言いたかったことは、一つしかなかった。つまりは――
「俺が奴隷商の身内で、この土地のことを調査、その後に奴隷商の手引を行うと。あんたらの言いたいことは、これでいいな?」
「あ、ああ」
「ふーん」
これに尽きる。俺の何の感情も感じさせない確認に、男の内一人が戸惑いつつも頷くが、残念ながらその行為にまるっきり興味はない。興味があるとすれば、その男達が自分達の推論の証拠として持ってきた、一枚の手紙。
あ、ちなみに男達はこの村の自警団に所属してるらしく、この手紙もその関係で、村に届いた荷物を点検してる際に見つけたそうな。差出人の名前も書いてないしで、不思議に思って確認してみるととんでもない内容が書かれてたので、慌てて村長への報告と、俺への怒りをぶちまけにこの家にやってきたってのが、さっきの騒動の原因。
で、その肝心の内容なんだが……
『この手紙が到着してより七日後の夜、見目麗しい女を用意して待つべし。抵抗せぬなら危害は加えぬ。
しかし、抵抗するならば容赦はせぬ。逃げた場合も容赦はせぬ。どこまでもお前達を追い回し、狩り尽くすことを約束しよう。
まあ、俺としてはどちらでも構わんがな。せいぜい俺を楽しませてみろ。では、また七日後、ラパン村にて会おう』
なんていう、なんともド直球な内容の脅迫状だった。
「……はぁ」
いや、もうなんつうか。あまりにあほ過ぎて脱力するくらいにな。
「うっわ……」
横からどれどれと、行儀悪くパンを頬張りつつ、覗き込んできたベアトリスも明らかに馬鹿を見るような目で文面見つめてる辺り、その馬鹿さ加減は筋金入りだ。
「これは……」
「うそ……」
一方で顔を青くしてるのが、村長のロマーノとその娘のリリィだ。まあ、内容は馬鹿らしいが、書かれてることは、要は仲間を売って平穏を取るか、それとも皆殺しかっていう究極の選択だからな。その動揺や恐怖は十分に理解出来る。理解出来るんだが、うん。やっぱ何度見ても書いたヤツの頭の悪さと品性の無さが滲み出てんな。呆れてなんも言えねえわ、これ。
「いや、なんでそんな初めて知ったみたいな顔してんだよ、あんた!?」
「あんたが手引したんじゃないのかよ!?」
そんな俺に、自分達の推論が間違っていることに内心は気付いているが、それを認めたくない二人組が悲痛な叫びを上げてるが……いや、ほんと。
「知らんがな。てか、あんたらの監視厳しくて外部ともまともに連絡取れん、外出出来る場所もこの家の庭と近くの森だけな俺が手引出来るかどうかなんて、普通に考えたら答え出るじゃん」
「し、しかし。お前も魔法が……」
「魔法だって万能じゃねえよ。顔と顔合わすような近距離でならまだしも、顔も見えん相手と遠距離でやり取り出来る魔法なんざ、現在発見されてない」
「なら――」
「そう言う魔道具をお前が創ったか? ははは、そんなこと出来るほどの天才がこんな田舎の村でのんびりしてるわけねえだろ」
「うぐっ」
思い込みが激しいって言うか、現実見えてないっていうか、色々酷過ぎるわ、こいつら。んで、論破されて現実知らせれたら、今度はダンマリ。これまでのことがあるとはいえ、あそこまで思い込みのみで他人を批判しておいて、それってのはあまりにも情けないんでないかい、なあ?
いつも世話になって、内心では凄く感謝してるロマーノやリリィの前で、同族相手にこんなこと言いたくはなかったが。
「ほんっと。馬鹿を相手にすると疲れるのはどこに来ても一緒だな」
まさにその一言に尽きる。
ロマーノもそう思ったのか、俺の言葉に対し、一切否定しない。というか情けないと言わんばかりに顔を顰め、申し訳ないとこちらに頭を下げてくる。
リリィはリリィで、怒りと悲しみでマジ泣き一歩手前のとこにきてるし、ベアトリスはそんな二人の状況を前にしても、あくまで被害者面をして自分達の非を認めようとしない二人組を、まるでゴミを見るような目つきで見つめてるしで、場の空気が悪いことこの上ない。
なんか、空気を変えるきっかけが欲しいな、なんて俺が天にも縋る思いで天井を見つめていると……
「そ、村長! た、大変だ!」
「っ、今度はなんだ!?」
「と、とにかく、大変で。森が、子供で。母親が、混乱で!」
「ええい、落ち着け! それでは、まるで意味が分からんよ!」
「っ、ああもう! と、とにかく、森の入口まで来てくれ!」
また新たな村人が、血相を変えてやってきた。やって来た理由は残念ながらよく分からんが、その慌てっぷりからして、どうにも良くないことが起こったのは確かなようで。
「っ、分かった。すぐ向かう。リリィも準備を。レイヴン殿とベアトリス殿は――」
「いや、まさか留守番しろって言うつもりか?」
「私達も行きますよ。水臭いこと言わないでください」
「い、いやしかし」
「っ、そうこう言ってる間にも事態は進行する……グダグダ言ってんじゃねえよ! 行くぞ!」
「っ、すまん。感謝する。君、案内してくれ」
「っ、ああ。分かった!」
俺達は慌ただしく、その場を後にする。背後から……
「って、俺達このままかよ!?」
「せめて縄解いてから行ってくれえ!?」
なにか必死の叫びが聞こえたような気もするが、緊急事態なので無視することにした。別にさっきの言動で頭に来てたから無視したとか、そんなわけじゃないのであしからず。
………
……
…
閲覧ありがとうございます。
本日は二ページ更新目標にしてましたので達成出来て何よりです。
今回の話はギャグパートの前回とシリアスパートの今回との二本立て。
お約束を取り入れつつ、いままでのらりくらりやってきた主人公の熱い側面も描写出来たらなと思い、このような形になりました。
さて、次回は、馬鹿共とは違ってまだましな人が血相変えて飛んできた理由が明らかになりますので、お楽しみに。




