Ⅲ 『始まり』
序章はこれでおしまいです。
次話から主人公兼ヒロインがほのぼの生活を送っていきます。
~作者から~
どうも作者の“みず。”です。
まだ序章なのにもうPVが2000を超えました。ありがとうございます。
これからも頑張って書くのでよろしくお願いします。
息が苦しい。どうやらボクは今用水に包まれているようだ。意識がこのときから存在することに疑問を抱いたけど、こんな経験なかなかできることではないのでとりあえず楽しむことにした。外からなにか諭すようなこえが聞こえる……ような気がした。どうやらこの体の人は声をかけているようだ。これは多分蹴ろっていってるんだよね。
ご要望にお答えして子宮を軽く蹴ってみた。
時間の経過が解らないがもうすぐ出されるみたい。なんか排出されるような感じがする。ほら、縦横前後にも揺れている。おそらく母になるであろう人が食いしばっているんだと思う。
あ、右足が外気に触れた。ずっと液体に浸かっていたせいか幾分冷たく感じた。
これからボクの新しい物語が始まる。神様は最後にわけのわからないことをいっていたけれど、運命には逆らえないことなんて病気だったあの時に百聞も承知だ。
あ、だれかの手で引っ張られる。じゃあまた後でね
序章Ⅲ『始まり』
ずるりと効果音を付けたくなるくらい最後の方は呆気なく子宮から出された。いろんなこえが聞こえる。スタッフが沢山いるのだろうか…。
っと、その前に赤ん坊は泣いて生死を確認すると聞いたことがある。ここで泣かないとボクは何をされるかわからない。じゃあ一発いきますよー!
「お、おぎぁ…、おぎゃああああぁぁぁあっ!」
うん。我ながら上出来だと思う。
前も思っていたことだけど死んでからボク落ち着き過ぎじゃないかな。別に悪いってわけじゃないけどこんなんでいいのかなって思う今日この頃。
今日は私の出産予定日なんですの。あ、申し遅れました。私のお名前はシャトレーゼ=ベレエモル=ド・アンソワール=ベネゼッガー・ルワルソンと申します。名前の長さからお分かりになされるお方もいらっしゃいますでしょうが私、このケルデン大陸一大きいルワルソン王国の第一王女なんですの。だからこのような話し方になってしまっているのですが、お気に召さないお方がいらしたら申し訳ございません。生まれてからこんなかんじなので…(苦笑)。
はっ、話が大分ずれてしまいましたね。いま私は大きく膨れ上がったこのお腹に優しく摩りながら声をかけているところです。そうすると控えめに蹴ってくる。そんな感じがします。
………多分私、親馬鹿といわれるものになるんでしょうね。子供が一番ですもの。そんなものきにしてられませんわ!
それから一週間ぐらい経ち、その日の正午。ついに出産の日がやってきた。
はぁ…はぁ…。とても苦しいですわ…。赤ん坊を生むことは物凄く大変だとは聞いたことありますがここまでとは思いませんでしたわ!今にも投げ出したくなってきました。
「痛い…。痛いですわっ――――」
苦しくてつい声が出てしまう。
「奥様、後もう少しですよ。頑張って下さい!せーの、」
“ひーひーふーっ。“
メイドの方に掛け声をかけられて、息を吸っては吐き吸っては吐きを繰り返す。今私の体からはとてつもなく汗がでていますわ。つらい、つらいですよう。
シーツを握りしめる。
「う゛~っ!」
迷惑事とは考えられなくなり大きな声をだす。
「お、奥様っ!頭が出てきましたよ。あともう少しです。頑張って下さい!」
「くう…ああぁぁぁっ!」
最後の力を振り絞って踏ん張る。
そして―――
はぁ…、はぁ…。
「おぎゃあああぁぁぁっ!」
産声が今いる部屋に鳴り響く。新たな生命(?)が誕生した。
「はぁ………はぁ………。良かっ…たで…すわ。無事に生まれてくれて。」
よくは見えないがの視線から微かに赤ん坊の姿を見ることが出来た。
「おめでとうございます。シャトレーゼ様。可愛い可愛い女の子でございます。」
やはり“彼”は神様の言うとおり、女の子として転生した。
「本当ですの…?では可愛いお服を一杯着させてあげなくちゃいけませんわね。…ふふふ。」
「はい!奥様。…ふふふ。」
にやにやする私とメイド。
「私の赤ん坊を抱かせてもらえませんか?」
「ええ。もちろんですとも。」
タオルで包まれている私の赤ちゃん。生まれたてとはこんなにも可愛いのですね。貴族のお知り合いの言うとおりですわっ。
先程のにやにや顔とは異なり、微笑ましい空気で充満していた。
「やっぱりかああああああああっ。」
ボクはそう叫んだはずなんだけと“おぎゃあ“としかまだ言えなかった。
まぁ性別を人生で二度も経験することなんてないから割り切るか…。
いやでもそう思わないとやっていけないもん!ぐすん。