プロローグ
初投稿です。語彙も少なく、文も稚拙ですがご容赦ください。
どんな者にとっても、人生は困難の連続だ。
時には、それを乗り越える理由すら分からなくなってしまうことさえある。
そこで、こう考えたことは無いだろうか。
せめてこの苦悩が、誰か本当に大切な人のためであったのなら、と。
壁の様に立ち昇る炎の向こう側から、微かに消防車のサイレンが聞こえる。しかし、もう手遅れであることは、全くの素人である鍵野海斗、彼自身にもはっきりと判った。
原因は分からないが、異常に火の回りの早い火事だった。それで、彼もあっという間にここまで追い詰められてしまって今に至る。
命の終わりを意識したからだろうか。彼は、ふと彼自身の人生を振り返ろうと思った。もしかしたら、自分が死後に惜しまれるような人間なのかどうかが気になったのかもしれない。でも、すぐに自分の一生が「不完全燃焼」の一言で言い表せることに気が付いて、ため息が出た。
彼にそう思わせる最大の理由は、何をするのにも動機不足に思えて、このままでは何も残せないまま終わることがわかっていたのに、それでも何かに本気で取り組まなかったことだろう。
もしかしたら何か自分の動機になってくれるような、例えば大切な人の一人でも居れば何か違ったかもしれない。彼はそう思った。
しかし、そんなことを考えていた彼の意識も、照り付けが耐え難くなる程に迫ってきた炎によって現実に引き戻される。反射的に後ずさりしようとしたが、半歩程で壁にぶつかってしまった。
もう逃げ場は無い。その事実が彼に、自身がこれから焼死することを一層強く思い出させた。
焼死。彼はこの死に方が溺死と並んで最も苦しい死であることを知っていた。以前、彼は友人とこの死に方につい話したことがある。その時は「絶対にそんな死に方は御免だ」と彼は言ったし、今もそうだ。
皮膚と肺を焼かれ、その苦痛に泣き叫ぶ自身の姿が彼の頭に嫌でも浮かんでくる。
そうして彼の焼死への恐怖が最高潮に達したとき、急に彼の視界がぼやけ始めた。恐らく一酸化炭素によるものだろう。
もう少し耐えることもできたが、彼はむしろ積極的に意識を手放した。