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午後の紅茶

作者: 華城渚

※これは意味が分かると怖い話です。


後書きにて解説っぽいヒントがあります。

「午後の紅茶」ってあるじゃないですか。

あれ僕すごい好きなんですよね。

特にミルクティーが一番好きで家でも職場でもずっと飲んでるんです。


ある日の出来事なんですけど、その日仕事帰りにまた午後の紅茶を買いたくてスーパーに寄ったんです。

午後の紅茶はたくさん並んでたんですけど、一本だけラベルが違うのがあったんですよね。


「あ、ラベル変更したんだ。」と思ったんですけど、他のラベルは普通だったんですよね。

だからちょっと不思議ではあったんですが、まぁ期間限定だったら売れ残ってることもあるよなって思ってそれを買うことにしたんです。


その後は寄り道もせず家に帰りました。 夜ご飯の支度をしながら午後の紅茶を飲むことにしたんです。

ちなみに買ったのは500mlのタイプです。色も変わらず、成分とか注意書きとかも変わってないです。


いざ飲んでみたんですけど味も普通でした。いつも通りの優しい甘さです。

四分の一はとりあえず飲んで残りは後で飲もうと思って冷蔵庫に入れておきました。



それから三日後でしょうか。

仕事中だったのですが、急に体調が悪くなり何度もトイレで吐いてしまいました。

結局その日は早退させてもらって家でゆっくり休むことにしたんです。


でも変なんです。 寝て起きても体調がよくなる様子がなくて次の日も休まないといけないのかなぁって思ってまた寝ました。


寝つきが悪くて何度も起きました。 自分でもどうしたらいいかわからずとりあえず午後の紅茶を飲むことにしたんです。 午後の紅茶はいつ飲んでもおいしいですからね。

家にストックしてる分も一応あるんですけど、飲みかけが残ってたことを思い出してそれを飲みました。多分残り半分くらいになったと思います。


やっぱり午後の紅茶は美味しいですね。 気持ちもちょっと楽になった気がします。

それで何とか次の日には出社できるほど体力が回復していました。

午後の紅茶はやっぱり偉大ですね。



それから一ヶ月経ちました。

また体調が悪くなったんです。 今度は動くのが辛いほどに。

インフルエンザってあるじゃないですか、あれをもっとひどくした状態だと思ってもらえばいいです。


もちろん会社は早退して家で休むことにしたんですけど、体が熱すぎて寝ることなんて無理だったんですよ。

呼吸も荒くて、心臓もすごく痛いんです。 このまま死んじゃうのかなって思って、それなら最後に午後の紅茶が飲もうって冷蔵庫から取り出しました。


ちなみにまだ飲みかけが残ってました。 僕、ちょっと忘れっぽいんですよね。

飲みかけがあっても新品とかストックしてあるのを飲んじゃうんですよ。


これが最後の晩餐だと思って改めて午後の紅茶をよく見て脳裏に焼き付けようとしました。

すると賞味期限がおかしかったんですよね。


そこには2050年06月ってなってたんです。 今は2020年の5月なので30年持つってことになっちゃいます。 そんな午後の紅茶は聞いたことがありません。


でもこの時頭はよく働いてなかったので気にせず飲むことにしました。

やっぱりいつ飲んでもおいしいですね。 体調が悪いせいで余計においしく感じます。

飲んだ後は力尽きてそのまま床で寝てしまいました。


次の日の出来事でした。 起きてみると体は多少楽になっていました。

午後の紅茶の素晴らしさを再認識したとともに昨日あった出来事の確認をしようと思いました。


その午後の紅茶の賞味期限を見てみたんです。

すると2020年の5月でした。 その時の中身はほぼ空っぽです。


そして僕は理解しました。

ああ、この午後の紅茶は僕の命と同じなのだと。 僕は命を自分で減らしていたのだとわかりました。

でも、どうしようもないと思いました。 きっと今日が命日になるんだと。


死ぬ前に一応試しておきたかったことがありました。

それはストック分の午後の紅茶をこのペットボトルに入れてみるということです。


藁にも縋る思いで僕は午後の紅茶を注ぎました。

するとどうでしょう、満杯になったところで賞味期限が2080年07月となっていたのです。


どうやら成功したみたいでした。 僕はその場で安堵し、思わず座り込み涙を流してしまいました。

今日が命日にならず本当に良かったと思います。



その後の話ですが、特に体調が悪くなることもなくいつも通りの日常を過ごしていました。

職場の関係も良好で、昇進の話もあったくらい順調に過ごしていました。


ああ、あの午後の紅茶はちゃんと冷蔵庫にしまってありますよ。

あの時満杯に入れたままで、一度も飲んでいません。

賞味期限も変わらず2080年07月です。

きっとこれが私の命日なんだとわかってしまいますが、あと60年くらい生きられるなら本望です。




ですが最近気になることがあるんです。

午後の紅茶の中身がだんだん分離してきているような気がしてるんです。

腐ってきているのでしょうか......でも、中身を捨てるわけにもいきません。

その瞬間に死んでしまう可能性がありますからね。




それと同時に職場のみんなからよく言われることもあるんです。



「お前、ちょっと臭くないか?」って。


解説っぽいヒント


・午後の紅茶は特別仕様です。ではどう特別なのでしょうか。

(ひとまとまりでなく、ペットボトルと中身で分けて考えるといいでしょう。

 ペットボトルはなにを表していた? 中身はどんなものだった?)


・中身が分離し、腐ってきている。 職場から臭いと言われている。

(ペットボトルの中身は満タンのはずです。 ほかにも寿命を削られる要素がある?

 ペットボトルに書いてある賞味期限と中身の賞味期限は......)

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