恒星
暗い夜、私は窓の外を見つめていた。
寒空に白い息がかかって……消えていく。
「お星さまって、近づいたらどれくらい熱いのかしら」
ふと下を向くと、胸の前で黄色い何かが光っていた。
「これは……?」
手で掴もうとすると、私の手に付いてくる。
顔の前に連れてくると、その蜂蜜のような煌めきは小さな星なのだと分かった。
「あなたはどこから来たの?」
「遠い遠いお星から。遥か彼方の宇宙から。流星となって、あなたの元に参りました。あなたに届けたかったのです」
星はそう言うと、一層輝く。
さっきまで寒かったのに、もう上着もいらないくらい、あたたかい。
「とても綺麗。それにあたたかい。あなたはどうしてここへ来たの?」
「私が望んだのです。あなたの側で、一番あなたを、あたためられる方法になりたかった」
お空を見ると、いつも見ていたお気に入りの星がその輝きを落としている。
「あなたはお空にいるべきよ」
「いいえ。私はただの光の一つです」
無数に煌めく星たちの一つ。
それでも、私には大切な星。一番好きな星。
「ずっとあなたを見ていたわ。あなたがいないお空は寂しいの」
「私ならここにいます。戻ってしまっては、あなたを近くで照らせません」
星は頑なに動こうとしない。
困ったものだわ。私は、そんなあなたがいてくれるだけで嬉しいのに。
「その気持ちだけで十分あたたかいと言ったら、あなたは元の姿に戻ってくれる?」
星は少し黙った。
「戻りましょう。あなたが望むなら。けれど、私はいつだってあなたを見守っています。忘れないでください。私はいつまでも、このあたたかい光で在り続けます」
帰っていく星を見ていると、少しだけ寂しかった。
けれど、変わらず吐く息は白いのに、温もりだけは消えず私の側にあった。
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