第90話 テイマーの秘密
須藤さんが、私専属のカメラマン?
「ってぇええっ!? そっ、そんな方法で本当に大丈夫なんですかっ!??」
「ええ、大丈夫ですよ。この国の法律でも、カメラマンは探索者に含まれていませんから……撮影用のドローンが探索者扱いされないのと理屈は同じですね」
「なるほど……」
たしかに、ドローンを探索者だと言う人はいない。カメラマンは役割としては撮影用ドローンと同じだから、須藤さんが処分を受ける心配はないってことなんだね。
流石は須藤さん。
これも探索者として活動する中で培ってきた知恵なんだろうね!
「それで今日の配信なんですが、なるべくライムスくんを戦わせないようにするというのは可能ですか?」
「え? それはどうしてですか?」
「実は、テイマーという職業にはちょっとした秘密があるんですよ」
テイマーの秘密?
私はライムスを抱きかかえて、はてと首を傾げた。
「ねぇねぇライムス。テイマーの秘密ってなんだろうね?」
『きゅう? きゅぅ……ぷゆいっ!』
「そっか、ライムスも分からないか」
私は須藤さんに向き直って、答えを聞いてみることにした。
「それで、テイマーの秘密っていうのはなんなんですか?」
須藤さんは勿体ぶるように一呼吸おいてから、答えを教えてくれた。
「それは、経験値が二分割されてしまう、ということです」
「あっ……、あーーっ!」
「ふふ、初心者の内は中々見落としがちなんですけどね」
「そっか、モンスターを倒しても私とライムスとで分け合いっこになっちゃうのか。言われてみれば当たり前って感じがしますね」
「ですが、経験値の配分比率をある程度は思い通りにする方法があるんですよ」
なるほど、それでライムスを戦わせないようにしたいってことなんだね?
「ライムスの戦闘が少なくなれば、経験値の比率は変化する、ということですか?」
「さすが最中ちゃん、理解が早いですね」
「う~ん。でも、今日はライムスの晴れ舞台でもあるんですよね」
「晴れ舞台、ですか?」
私はドローンに吊るしていた荷箱を降ろして、その中からスライム・ヘッド(剣)を取り出した。
私が被せてあげると、ライムスは嬉しそうにぽよん! とジャンプしたよ。そして須藤さんは目がハートになっていた。
うんうん、気持ちはとてもよく分かるよ。
スライム・ヘッドを装備したライムスって、すーっごく可愛いんだよね。
「んきゃわいい~~~っ!! ななな、なんですかこの可愛いの暴力はっ!!」
「これはライムスのために買ったスライム・ヘッドです! 実はお掃除を始めた頃から欲しがってはいたんですけど、当時の私は金銭的に余裕がなかったので……」
「なるほど。たしかにこんなに可愛いライムスくんの活躍を減らすっていうのはあり得ませんね。仕方がありません。本当は段階を追って使う予定だったのですが――」
そう言って須藤さんが取り出したのは、銀色に煌めくネックレスだった。
えーっとぉ……なんだろう、コレ?
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