第69話 迷路の森2(加賀美咲視点)
「ねぇねぇ早く早くー、咲ちゃん走ってよ~~! こんなにのんびり歩いてたら負けちゃうよ? あっ、もしかしてふらん負けさせるためにチームになろうって言い寄ったの??」
「そんなワケないだろう。ただ、今は体力を温存しておくべきと言っているんだ」
紙もペンも無い現状、地図の作製は不可能。
イタズラに歩き回ればその分だけ体力を削られるし、モンスターとの戦闘になれば時間も浪費されるだろう。
フーラはああ見えて打算的な性格をしているし、おそらくは最中ちゃんとチームを組むだろう。
最中ちゃんは細かい点に気付くし、行動をともにしていれば宝箱を見つけやすくなる。
宝箱を見つけた後は最中ちゃんを拘束してしまえばいいだけだしな。
とはいえ、最中ちゃんが黙ってやられるとも考えにくい。
「いずれにせよ、だな。ふらん。私たちは共に行動し、モンスターと接敵した際には協力して迅速に討伐する。そうすればより多くの体力を温存できるし、漁夫の利を狙いやすくなるからな」
「ギョフノリ? なにそれ」
「いいとこ取りって意味だ」
「ナルホド! えへへ、咲ちゃんってば頭良い~~」
まあ、モンスターとの戦闘は全部ふらんに押し付けるがな。ふらんは目立ちたがりだし、率先して前衛に出るだろう。
フーラと最中ちゃんでやりあってもらって、ふらんはモンスターで削る。
全員がそこそこに疲弊したら、それこそまとめて拘束してしまえばいい。
この企画は、最初からそういう企画だ。
リタイアが3人出た時点で必然的に残った1人が勝つ。
どんな迷路だろうと、どんなに入り組んでいようと、競争相手がいないのであれば勝利は確定だ。
『ゴブ? ゴブッ、グギギィッ!!』
『グィギギギ……!』
『グルルルッ』
『ゴブゴブ!!』
お、さっそくゴブリンの群れが出たか。
「ふらん、ゴブリンが出たぞ!」
「分かってるよ! でも大丈夫、ここはふらんに任せて! 出でよ、シロクマちゃんたち!!」
ふらんが両手を元気いっぱいに天に掲げる。
すると天空に大きな雪の結晶の紋様が浮かび上がり、大量の白いモフモフちゃんが降り注ぐ。
『がおーーーっ!』
『ぷぉーーーーっ!!』
『わふう!!』
『がるるるる……!』
『わおうっ!!』
『ぐるるぅッ!!』
『ふにゃーーー!』
「ふふっ。相変わらずお前の【精霊】は可愛らしいな」
「でしょー? たくさん召喚するとちょっと疲れちゃうけど、でも大丈夫。私が疲れても咲ちゃんがいてくれるもんね!」
「……ああ、そうだな」
さてと。
視聴者の手前、なにもしないというワケにもいかない。
ほどほどに手を抜きつつ、ファン獲得に向けてアピールしなければな。勝敗も大事だが、リスナーからのイメージを損なっては元も子もない。
「スキル【オート・パイロット】発動!!」
私はスキルを発動したフリをして、臨戦態勢に入った。
ここまで読んでいただきありがとうございます!!




