第67話 隠された秘宝を探せ、お宝発掘競争配信!!
「んにゅやぁ~~~~、ライムスきゅぅぅうううんんっっ♡♡♡」
数時間後。
我が家へ訪れた内山さんは、例の防音魔法を発動するや否や早々にご乱心なされた……。
『ぷゆゆんっ』
「ううううう。こんなにカワイイ子と毎日一緒にいられるだなんて。やっぱり最中さんが羨まじいですぅぅぅぅッ!!」
「あ、あははは……。内山さん、気持ちは分かりますけど、そろそろ本題に入りませんか?」
「はっ! も、申し訳ありません。つい取り乱してしまいました」
ま、取り乱しちゃうのも無理はないよね。
だってライムスの可愛さは世界一だし?
私が内山さんの立場だったら全く同じかそれ以上の反応になっちゃうかもだし。
内山さんは心苦しそうにライムスを手放したのち、二枚の書類を取り出した。
そこには、第1条(キャラクターの表示)、第2条(使用許諾)、第3条(許諾料の支払い)などといった文字が並んでいる。
「そちらが契約書になります。ご精読のうえ、納得できましたらサインと印鑑をお願いします。もちろん本日中になどと無理を言うつもりはありませんので、ご安心ください」
「わざわざ丁寧に、ありがとうございます」
それにしても、思ったよりも普通の契約書だなあ。
これなら普通に送付すれば良かっただけなのでは?
私が疑問を投げかけると、内山さんはギクッと身を震わせた。
「あっ、いや、しかしですね。ほら、田部だって直接契約書を持参してきたでしょう?」
「まぁ、確かに。でも田部さんの場合は熱意に突き動かされて……って感じでしたから」
「わわっ、私だってそうですよ! なんというかこう、気合いが入りすぎちゃって、溢れ出る激情を止めら――」
「そんなにライムスに会いたかったんですか?」
私が言うと、内山さんは「ぐはっ」と撃沈した。
うん、どうやら的中だったみたいだね。
「うううう。だって、だってえ。ライムスきゅんが可愛いすぎて、どうしても直接会いたくて、触りたくてぇ……」
内山さんは丸眼鏡を取り外すと、両目をウルウルさせながら、この時間を確保するためにどれだけ頑張ったのかを語り始めたよ。
聞く限りによると、けっこう残業とかもしちゃったみたいだね。
「内山さん。ライムスを愛してくれる気持ちはとっても嬉しいですけど、無理はしちゃいけませんよ? もし身体を壊しちゃったら、それこそライムスに会えなくなっちゃいますし」
「そ、そうですよね。うう、頭では分かっているのですが、どうにも感情が追いつかなくて……」
「でしたら、たまにならウチに来ていいですよ?」
「えっ?」
「だって、ライムスのために倒れられたりしたら、そっちのほうが悲しいですし。っていうのは半分建前。本音は、内山さんと私ってちょっと似てるなあって思ったんです」
私も、Dtuberになる前まではライムスのために必死だったし。ライムスのためなら自分の身体がキツくても苦しくても、全然平気だった。
もちろん今でも、ライムスのためなら喜んでこの身を捧げる覚悟だけどね。
そういう意味で、内山さんと私とはちょっと似てるなって思ったんだよ。
「そりゃ、毎日のように来られたら困りますけどね。でも月に1回程度であれば大丈夫だと思います。ご友人としてお茶でもしながら、ライムスがいかに尊いのかを語りましょう! 言うなれば、ライムス友達――略してライ友って感じですね!」
「ライ友……。ふふっ、いいですねそれ、最高です。うふふふ、これから月1でライムスくんに会えるかもって思うと、それだけでもっともっと頑張ろうって思えますよ! 最中さん、ありがとうございますっ!!」
#
そして3日後。
私とライムスは、田部さんから送られてきた企画書を元に、とあるE難度ダンジョンへとやってきた。
ホールを潜り抜けると、既にフーラちゃん、ふらんちゃん、咲ちゃんの三人が待っていたよ。
「わあ~~い、モナちゃんとライムスきゅんだあ! えへへへ。あのねあのね、こんなに早く再会できるだなんて、ふらんすぅっごく嬉しいんだぁ!」
またもやダイブしてくるふらんちゃん。
今日も今日とて白熊パーカーが似合っていてとっても可愛いね。
「ライムスきゅん、ナデナデしてあげるね~~?」
『ぴきゅーーっ!!』
ライムスは両目を吊り上げて、口を大きく開いてふらんちゃんを威嚇した。こういうライムスもカワイイなぁ。なんだか鳥さんみたい?
「うゃあ!? ライムスきゅん、怒ってるの?」
「ふらん、お前はライバル視されてるんだよ。ま、ふらんもライムスくんも属性が近いというか、似た者同士だからな。――やあモナカちゃん。また会えてうれしいよ」
「私のほうこそ嬉しいです!」
そんな私たちのやり取りを微笑ましく見守りながら、フーラちゃんがこちらへとやってきたよ。
相も変わらずの綺麗な蒼髪、そしてスタイルの良さ。3人ともそうだけど、実物を前にすると圧倒されちゃうよ。
「さて、これでメンバーは揃ったね。それじゃ3、2、1で企画を発表しようか!」
フーラちゃんの目配せを受けて、スタッフさんが頷きを返す。そして3カウントの後、4つの声が重なった。
「「「「隠された秘宝を探せ、お宝発掘競争配信~~~ッ!!」」」」
今回の企画にあたって、サニーライトさんはこのE難度ダンジョンを買い取った。
そして宝箱の中身を全部回収してから、別のお宝を隠して、さらには宝箱自体も見つかりにくいところに隠したんだね。
今回の企画の軸になっているのは『競争』。
つまりは、私とフーラちゃんとふらんちゃんと咲ちゃん、4人によるお宝争奪戦ってわけだね。
「リスナーのみんなには、誰がお宝を手に入れられるかを予想してもらいます。そして的中すると、抽選で4名様にサイン入り色紙が送られるよっ! リスナーのみんなも、サイコーのお宝を目指して頑張って予想を的中させてねっ!!」
こうして、初めてのコラボ配信が幕を開けた――!




