第66話 参考程度にお教えしておきましょうか
それから私たちは、宝石みたいにキラキラと光る素敵な夜景を眺めながら美味しいご飯を楽しんだよ。
フーラちゃん、ふらんちゃん、咲ちゃんの他にもたくさんの所属Dtuberが歓迎の言葉を掛けてくれて、中にはファンですって言ってくれる子もいて。
スタッフさんやシェフさん、司会者さん、たくさんの人のおかげで最高の夜を過ごせたよ。
ライムスもいっぱいモミクチャにされて、すごくふにゃふにゃになってて可愛かったなあ。
こんなに楽しいのは生まれて初めてだったよ。
「ライムス。今日は一生の思い出になったね!」
『きゅるぴいっ!!』
ふふっ。
ライムスにとっても、今日は最高の一日になったみたいだね!
#
そして翌日。
目が覚めた私はスマホを片手にぷるぷると震えていた。
「あわわわわっ、ら、ライムス、らいむしゅうっ!! どどどどーしよぅ、どーしようっ!」
『ぷゆいぃぃ??』
慌てふためく私の横で、ライムスがころころと床に転がって、ペちゃん! と壁にぶつかって止まった。
私はライムスを救出してから、もう一度スマホ画面に視線を落とす。するとそこにはやはり、同じ”数値”が記載されていた。
【もなチャンネル】
@Monaka.0709
チャンネル登録者数 53万人・7本の動画
「ご、ごごっ、53万人!?!??」
『ぴぇえ~~っ!?!??』
えーと、えーっと歓迎会の前までで50万人だったから、ていうことはつまり……。
「昨日の歓迎会配信のおかげで、たったの1日で3万人も登録者が増えてるよ」
しかもこうしてる間にもD・Dの通知音がピコンピコン鳴り続けてるし……。
「とりあえず通知は切っておこうか。それにしてもすごいことになっちゃったなぁ」
私はすっと立ち上がり、ピシッと身嗜みを整えてから咳払いを一つ。縦長の鏡の前でニヤリと唇の端を上げる。
「参考までに、この私のチャンネル登録者数をお教えしておきましょうか。私の登録者数は、530000です」
…………きゃーーーーー!!
恥ずかしーーーーー!!
「ライムス。今のは見なかったことにしてね」
『……ぴゆ』
「うん、アリガトネ」
私の呟きと同時に、何処からか冷えた風が吹き込んできた――ような気がする。
#
それから数分後。
田部さんからの着信があったので出てみると。
「天海さん、D・Dのアプリ見てますか? いま、どういう状況か理解できてますかっ!?!??」
興奮しているのか、通話口の奥の田部さんは大きく息を荒げていたよ。私は「一応は」と前置きしてから応じる。
「私も朝起きてビックリしちゃいましたよ。たったの1日で登録者数が3万人も増えるだなんて、思ってもみませんでしたから」
「天海さん、これはチャンスですよ。この機を逃す手はありません」
「え?」
首を傾げる私の姿なんてものは見えるハズもなく、必然、田部さんは勢いそのままに言葉を重ねた。
「やっちゃいましょう、コラボダンジョン配信! もちろんコラボ相手は我が『きららアカデミー』が抱える三人娘、フーラちゃん、ふらんちゃん、咲ちゃんです!! 天海さんも含めると四人娘ですけどね」
「そっ、それは願ってもない提案ですけど……」
「でしたらやりましょう! いま天海さんのチャンネルには、フーラちゃん、ふらんちゃん、咲ちゃんのファンはもちろん、『きららアカデミー』箱推しユーザーやサニーライト筆頭株主までもが濁流のように押し寄せている状況です。鉄は熱いうちに打て。行動は早い方がいいに決まってます!」
ううう、やっぱり田部さんってば凄い熱量だよ! でも、だからこそ信頼できるんだよね。
「分かりました。是非、コラボ配信させてください!」
「その言葉を待ってましたよ。そうですね、企画に関しましては2日ほどで立てますので、それまでは好きなふうにやっちゃってください。それと本日中にキャラクターライセンスの件で内山が伺うと思いますので、その際は対応のほどよろしくお願いします」
「はい、分かりました」
「ふふふふ。随分と楽しくなってきたじゃありませんか、天海さん! よぉーし、気合い入れて頑張っちゃうぞ~~。それでは私はこれにて失礼します!!」
通話が終わると同時に、私は即座にライムスを抱きかかえて頬ずりをした。
フーラちゃん、ふらんちゃん、咲ちゃん。
まさかこんなに早くあの三人とコラボできるだなんて思わなかった。嬉しい気持ちが爆発しちゃって止まらないよ!
「ライムス、ライムス、ライムス♪ すごいよ、またあの子たちに会えるよ! ああ、コラボ配信楽しみだなぁ」
『ぷゆゆっ、きゅゆいっ!!』
「ふふっ、ライムスも燃えてるみたいだね?」
『きゅぴぴぃ!!』
「そっかそっか。たしかに、ライムスにとってはチャンス到来だもんね」
ライムスはふらんちゃんをライバル視しているよ。
『コラボ配信ではぼくのほうがカワイイってことを証明してやる!!』
そんなふうに意気込んでいるんだね。
そんなに気負わなくても、ライムスの可愛さは世界一なのに。
「ライムス、最高のコラボになるように全力で頑張ろうね!」
『きゅーっ!!』
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