第65話 ヤバい女の子たち
「いやぁ、さっきのは凄かったねぇ。私ビックリしちゃった! いまさらながら、ちょっと塩送りすぎたかもって不安になってきたよ……」
「フーラちゃん、大袈裟だよ」
一匹に戻ったライムスをナデナデしつつ応じると、フーラちゃんの背後から二人の女の子が姿を現した。
そしてそのうちの一人――白髪おかっぱの子・ふらんちゃんが私目掛けてダイブしてきた!
「わわっ!? ふ、ふらんちゃん!?」
「モナちゃんっ! それにライムスきゅんっ! あのねあのね、さっきのライムしゅ・フェスティバゥの再現、最高の最高にサイッコーーだったんだ!! ふらんもうね、もぉねっ、モナムスコンビのこと大大だぁ~~~い好きになっちゃったよ!!」
あ、あ、あざとい!
でもそれがいい、それがふらんちゃんの魅力ぅ!
この子供っぽい感じ(ていうか実際に子供なんだけど)、そして舌っ足らずな活舌と吐息交じりの喋り方。間違いなくホンモノの雪白ふらんちゃんだよ!
そんな興奮冷めやらぬといった様子のふらんちゃんの白熊パーカーの襟を、赤髪眼鏡のクールなお姉さん・加々美咲ちゃんが鷲掴みにして、私とふらんちゃんとを引き剥がした。
「ふらん、お前は最初からモナムスコンビの大ファンだろうが。まるで今この場でファンになったみたいな振る舞いはやめろ。モナカちゃんも困っているだろう?」
困ってないよ!
いや、本当はちょっとだけ困ってるけど、でもカワイイから無罪!!
そんな心の声が吐き出されるよりも早く、咲ちゃんが美麗な笑顔を向けてきて、私はドキッとしてしまったよ。
「やぁ、はじめまして。知ってくれていたら嬉しいのだけれど、私の名前は加賀美咲。Dtuberとしては珍しい部類だが、本名で活動させてもらっている。そういう意味ではモナカちゃんにはシンパシーを感じているんだ。一方的に、だけどね」
「えへへ、恐縮です……」
咲ちゃんは見た目・口調ともに知的な雰囲気で、ダンジョン攻略配信も、主に科学的な観点から攻めていくスタイルだよ。
圧倒的な知識量に裏付けられた攻略配信は、見てると全然負ける気がしなくて、安心して楽しめるんだよね。
こうやって実際に会うと、ふらんちゃんも咲ちゃんもすっごいオーラを放っているよ。
「さて、これにて顔合わせは済んだね? それじゃ次は美味しいご飯を食べようよ。今宵は一流のシェフさんが私たちのために腕を振るってくれているからね」
「一流シェフのりょーり、ふらん大好きっ!!」
「……ふらん、お前は一流シェフの料理を食べたことがあるのか?」
「えーとねぇ……」
数秒の間をおいて、ふらんちゃんが恥ずかしそうに頬を紅潮させた。
「えへへぇ……。無いや」
ふらんちゃんは結構適当なところもあるんだねえ。
でもカワイイもんねえ。
カワイイは無罪、ライムスが証明してくれてるもんね。
とその時になってふと、私は腕の中から見上げる視線を感じた。
視線を降ろすと、そこには明らかに嫉妬の目線で睨みつけてくるライムスの姿が……!
「ねぇねぇライムス? そんなおっかない顔しないでよ。私の中ではライムスが一番、そんなこと分かりきってるでしょ?」
『ぷゆいっ!』
「え、目がハートになってたって?」
うっ、それを指摘されると否定できないかも……。
「ふふふ。どうやらライムスくんを嫉妬させてしまったみたいだ。すまない、ウチのふらんは少し可愛すぎるところがあってね」
「えー、ふらんはみんなのふらんだよ? なんでしれっと一人占めしようとしてるの咲ちゃん?」
「チッ、バレてたか……」
そんな二人のやり取りを、ライムスがじーっと見つめている。じーっと。じーっと……。
いや、これ絶対にふらんちゃんのこと睨んでるぅ!!
そんなライムスの元へ、フーラちゃんがやってくる。しゃがみ込んで、目線の高さを合わせて、ナデナデする。
「ふふ。思いがけないライバルが出現して嫉妬しちゃったんだ? ライムスくんったら本当にカワイイねぇ。でもだいじょーぶだよ、安心して?」
一呼吸おいて、フーラちゃんの目から焦点が失われて真っ黒に染まった……気がする。
「ふらんちゃんは、私のだから。誰にも渡さないから。ねっ?」
『……きゅぴいっ!!』
納得したのか、ライムスが元気いっぱいに可愛らしく返事をしたよ。
私はそんなやり取りを見て、一つの確信を抱いた。
この子たち、絶対にヤバい――ッ!!
「だ~かぁ~ら~、ふらんはみんなのものなんだってばぁーーーっ!!」
そしてふらんちゃんは、目を><の形にしてわーわーと叫んでいた。
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