第64話 続・ライムスフェスティバル!
「それじゃ行こっか、最中ちゃん!」
「え? 行くってどこに?」
私が聞くと、フーラちゃんは一瞬ぽかーんとした顔になった。それからクスクスと笑い出してしまったよ。
うう、なんかおかしいこと言ったかなあ?
「すっかり飛んじゃってるみたいだねぇ。イーイ? 今日行われるのはただの歓迎会じゃなくて【歓迎会配信】なんだよ?」
「あっっ!!」
あーーーーーっっ!!!!!
そ、そうだった!
すっかり忘れてたけど、今日の歓迎会は公式アカウントから配信されるんだった!!
「そーだ、イイこと思いついちゃった♪」
「えっ、イイこと?」
なんだろう?
私が訝しむそのすぐ真横で、フーラちゃんがスマホを取り出した。
「あーもしもし、どもどもフーラです。はい、もうデッキに入ってるんで、入場コールお願いしていいですか? せっかくの公式配信ですし、ジャンジャン盛り上げちゃいましょーよ! ハーイ、りょでーす」
な、なんだかすっごく嫌な予感がするんだけど……?
「あっ、あのさフーラちゃん。入場コールってなんのこと?」
「……にひひ。すぐに分かるよ。だからさ、ちょっとここで待っててよ」
フーラちゃんがイタズラな笑みを浮かべた、その直後。
「「「えー、リスナーの皆様。昨今数多くの娯楽が溢れ返っております中で、『きららアカデミー』公式配信を視聴して下さり、深く感謝します。さて、前置きはここまでにしまして。早速ですが本題に入りましょう。本日のメインゲスト、天海最中さん、そして天海ライムスくん。両名に登場して頂きましょう! さぁ、どうぞご登壇くださいッ!!」」」
うにゃあ~~~~~~~、や、やられたあっ!!
「ちょちょちょっ、フーラちゃん!?? どどどどどーゆーつもりなの!??」
「も~、最中ちゃんってば本当に緊張しいなんだねぇ。でもさ、今回の配信タイトルは『天海最中&ライムスくん歓迎会』なんだよ? せっかくの晴れ舞台なんだし、盛大にやったほうが絶対に楽しいよ。それに、公式配信ということは会社のアカウントを使ってるということで、要するにファン爆増の大チャンスってこと!!」
「それは、そうかもしれないけど……」
ウジウジしている私の肩にフーラちゃんの両手が置かれる。フーラちゃんは、真剣な眼差しで私を見据えた。
「最中ちゃん。いくら同じ事務所所属でも、仲間だとしても、それ以上に、私たちはどうしようもなくライバルなんだよ? 私が塩を送るのはこれが最初で最後――かもしれない。こんな最高の大舞台、逃す手は無いよね?」
そっか。
そうだよね。
私たちは同じ事務所に所属する仲間で、でも、どう足掻いてもライバルという枠組みからは逃れられない。
それなのにフーラちゃんは私とライムスのために、こんなふうにお膳立てしてくれたんだ。
「フーラちゃん、ありがとね。それじゃあ行ってくるよ!」
「うん! 最初はドキドキするかもだけど、ちょっとずつ楽しくなってくるはずだから頑張ってね。応援してるぜっ!」
私はフーラちゃんに背を押される形で、展望デッキの大広間へと歩いて行った。
ていうか、名前を呼ばれちゃった以上、もう私に選択肢なんてないよね!?
やっぱりフーラちゃんはアグレッシブな子だよ。
私はライムスを抱きかかえながら大広間へ。
直後、無数のドローンに取り囲まれれて、同時にたくさんのスポットライトが、犯人を追い詰めるときみたいにバンッ!! と照射された。
「「「来ました、天海最中さんとライムスくんです! おおおおお、コメント欄も信じられない速度で流れてゆくぅ、早すぎてとても追いきれません!! えーと、えーと、「最中ちゃんかわいい~」「ライムス最強!!!!」「事務所所属おめでと~~」などなど、多数のお祝いコメントが寄せられています! さぁさ、最中さん。そんなところで立ち止まってないで、どうぞステージにご登壇ください!」
周囲を見渡せば、たくさんの人の視線が私とライムスに集中しているのが分かる。
見知らぬ顔の子から人気Dtuber――雪白ふらんちゃんや加賀美咲さんまで。
他にも多くのスタッフの姿もあったよ。
私と目が合うと、田部さんは満面の笑顔で親指を突き立ててくれた。私は同じようにして応じつつ、ステージへと登壇したよ。
たしかに人目は多い。
でも、これはあくまでも『配信』なんだよね。
だったらいつも通りに振る舞えばいい。
それだけ!
「「「それでは天海最中さんより、挨拶コメントを賜りたいと思いまーす!」」」
司会の人は二本目のマイクを取り出しながら私の元へと向かってきた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
左腕でライムスを抱きかかえて、右手でマイクを持つ。大勢の視線を浴びたライムスからは弾力が失われていて、カチコチになっていたよ。
よっぽど緊張してるみたいだね。
ふふっ。
だったら、私がライムスの緊張を解いてあげなくちゃだね。
「大丈夫だよ、ライムス」
小声で囁いて、優しくナデナデしてあげる。
『ぷゆゆ、くゅ~~』
「あ、元に戻った。ふふ、リラックスできたみたいだね?」
「きゅいっ!」
ふうっ。
こう見えて私だってちゃんとしたDtuberなんだ。
れっきとしたエンターテイナーなんだってこと、見せつけてあげるっ!
「「「えー、リスナーの皆さん。本日は私の歓迎会配信を見に来てくれてありがとうございます。ハイ、堅苦しい挨拶はこれで終わりっ。だってさ、みんなは私とライムスのために配信に来てくれたんだもんね。だったらサイコーに楽しんでもらわなきゃ! ライムス、例のアレお願いできる?」」」
あまりにも行き当たりばったりで、ともなればここで試されるのは私のアドリブ力。
ライムスは私の考えを察して、元気よく返事をくれたよ。
「それじゃ始めよっか。いくよライムス、サイコーのフェスティバルを見せてあげてっ!!」
『ぴきゅーーーーーっ!!』
私の腕の中から、ライムスがぴょーーんっ! と大ジャンプ!
そして『黄金の森』でみせてくれたように大量分裂を開始した。
空中で次々とライムスが増えて、ちっちゃくなっていく。
そしてミニライムスの全身をスポットライトの光が照らして、青白いライムス色の光がフロア一帯に乱反射した。
『ぴゆーーーっ!!』
『きゅるぅっ!!』
『ぴきーーーーっ!!』
『るるんっ!!』
『きゅぴぃ!!』
『きーーーっ!』
『ぷゆうっ!』
『ぴきゅいっ!!』
「「「お、お、おおおぉぉ~~~~ッッ!?!?? これは『黄金の森』配信で見せてくれたライムス・フェスティバルだぁーーーーッ!! しかもスポットライトの光があちこちに反射してるぅ!? これはトンデモナイお祭り騒ぎです、コメント欄もさらに加速しています!! 流石はモナムスコンビ、最高のショーを披露してくれました、ありがとうございますッ!!!!!」」」
この場でコメント欄を見ることはできないけど、どうやら上手くいったみたいだね。
たくさんのちっちゃくて可愛いライムスが、フーラちゃんの元へ、ふらんちゃんの元へ、咲さんの元へ、他の参加者、スタッフの元へと降り注ぎ、あまりのライムスの可愛らしさに、みんながメロメロになっていたよ。
私の手の平にもミニライムスが降ってきて、ミニライムスは自信満々の様子で大きく鳴いたよ。
『きゅいっ!!』
「うん、ライムスのお陰で最高の挨拶ができたよ。これでもっともぉーっとファンが増えちゃうねっ! ありがとうライムス、やっぱり私、ライムスのことが大好きっ!!」
『ぴゆうっ!』
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