第54話 黄金の森、第1層・意外な目眩まし
金色のゴブリンに金色のスライム、さらには金色のミニ・ワーウル。
私とライムスは上手に連携を取りながら、総勢十匹にも及ぶモンスターと戦闘を繰り広げていく。
さすがにダメージは受けちゃうけど、それは仕方ない。
数の面で言えばこっちは完全に不利だからね。
『ガルゥゥウウウッッ!!!』
「ぅうっ、くっ!!」
金色のミニ・ワーウルが、牙を剥き出しに飛び掛かってきた。
私は攻撃をパラライズ・ソードで受け止めながら、素早く周囲を観察した。
私に覆いかぶさるミニ・ワーウル。
左右にはゴブリンが三匹。
私がミニ・ワーウルを倒したとしても、この三匹がすぐに襲い掛かって来るってわけだね。
ライムスは一生懸命に飛び回って交戦してるけど、流石に回避するのでいっぱいいっぱいになっていた。
「くぅ、やっ!!」
ザンッ!!
『ガルゥッ!!』
力任せに剣を引くと、ミニ・ワーウルは攻撃を止めて大きく後退。
三匹のゴブリンに交じって、いつでも攻撃に出れるように態勢を整えた。
――――――――――――――――――――
Jun
<ここのモンスター賢いなぁ
上ちゃん
<流石にちょっと苦戦してるね
tomo.77
<なんだかなぁ。無駄に小賢しいんだよねw
spring
<とはいえ所詮はF、よくてもEランク程度だし
あ あ
<ま、最中ちゃんとライムスなら余裕でしょ
るー
<応援してます、頑張って!
ライムス推し
<ライムス頑張れ!!
たなか家の長男
<無駄に高級感のある絵面だなw
ミク@1010
<数で押されるのって地味に面倒だよね
――――――――――――――――――――
「そうなんだよ、数が多いのが厄介なんだよ! とはいえ、作戦が無いってワケでもないんだけどね」
私は剣を前方に突き出しながら、ゆっくりとモンスターたちから距離を取っていく。
ミニ・ワーウルとゴブリンの視線は剣の先端を見据えて離さない。
「今だっ!」
一瞬の隙を突いて、私は金色の短剣をミニ・ワーウル目掛けて放り投げた。
私の武器が剣だけだと思い込んでいるミニ・ワーウルたちにとって、飛び道具での不意打ちは効果覿面のはず――そう思っての攻撃だったけど。
『ガルァッ!??』
『ゴブッ!???』
『ギォッ???』
『ギャワっ!!??』
三匹が飛び退いて一気に道が開けたよ。
これは想像以上の効果だね!
「はぁぁぁあっ!!」
私は全速力で走ってミニ・ワーウルを切りつけた。そのまま横薙ぎで三匹のゴブリンにも攻撃を浴びせる。
「ライムスッ、コイツをお願い!!」
『ぴきゅいっ!!』
ライムスは地形を上手に使いながら跳躍して、大木から一直線に突進。ゴブリンのお腹に体当たり攻撃をクリティカルヒットさせたよ!
『きゅいーーっ!!』
『ゴブォエ゛ッ!?!??』
「ここだ、えいっ!!」
私はタイミングを見計らって、もう一匹のゴブリンに渾身の一振りを繰り出した。
そして。
ぽふんっ!
ぽふんっ!
二匹のゴブリンが倒れて、煙になったよ。
「ライムス、今のうちだよ!」
『ぴきゅうっ!!』
二匹のゴブリンを倒したことで、短い間だけど煙の目眩ましができた。
この目眩ましが私の作戦だよ。
まさかモンスターが倒れたときの煙を戦いに使うだなんて、誰も想像できないだろうね。少なくとも私はそんな配信者を見たことがないよ。
「やあ!」
『きゅぴーーっ!!』
私とライムスは煙に潜みながら、残りのモンスターに攻撃を繰り出していったよ。
「まさかモンスターが煙になるのを利用されるなんて思わなかったでしょ。半端に知性がある分こういう不意打ちは効きやすいと思ったけど、予想以上だね!」
『ぴきゅう~!』
『ゴッ、ゴブゥ……』
残ったのは黄金ゴブリンが一匹だけ。
これならもう負けることは無いね。
『ゴブゥゥ~~~~ッ!!!!!』
ヤケになったのか、大振りで突進してくる黄金ゴブリン。
大口を開けて、目はビキビキに血走っていた。
「そんな怖い顔したって無駄だよ!」
私はパラライズ・ソードの先端を地面に突き立てて、思いっきり振り上げた。そうして舞い上がった砂利が、黄金ゴブリンの視界を奪ってくれる。
『ゴァッ???』
「やあっ!!」
そしてトドメの一撃。
ザシュンッ!!
『ゴガ、ガ……、グブッ!』
ぽふんっ!
「ふうっ、これで全部倒せたね! それにしても驚いたよ。まさか宝箱を囮に不意打ち攻撃を仕掛けてくるだなんてさ。とりあえずポーションで回復しなきゃだね」
私とライムスは体力を回復させてから、ドロップ品を回収していったよ。
「えーと、指輪に盾に腕輪か。当然だけど全部黄金でできててピカピカだねぇ。ほら見てごらんライムス。こんなに光っててすごくきれいだよ」
『きゅーー!』
「ねー。ドロップ品だけでこんなにきれいなら、黄金の木はどれくらいきれいなんだろう。ワクワクしちゃうね!」
私は指輪と腕輪を腰袋にしまって、盾は宝箱の中に入れておくことにしたよ。盾は他のドロップ品とは違って袋には入らなかったからね。
「これでヨシと。さて、次はこっちのほうに行ってみようかな。今度こそホールが見つかるといいね、ライムス」
『ぴきゅうっ!』
それから約一時間。
私とライムスはモンスターを倒して、ゴミを拾って、途中で小休止を挟みながらも探索を続けていった。
そしてようやく、第2層へのホールを見つけることができたよ。
「よぉ~し。ライムス、準備はいーい?」
『きゅいっ』
「ふふ、元気いっぱいだね? それじゃ行くよ!」
『きゅうっ!』
こうして、私とライムスは第2層へとやってきたよ!
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