第53話 黄金の森、第1層・賢いモンスター
北進を続けること5分ちょっと。
今度は銀色のゴブリンが現れたよ。
『ゴブブゥッ!!』
銀色のゴブリンは三匹居て、一匹が剣、もう二匹が鉄のこん棒を持っていた。
「ライムス! 剣のゴブリンは私が相手するから、こん棒のほうは任せたよ!」
『ぴきゅきゅいっ!!』
ライムスと二匹の銀色ゴブリンが交戦を始め、私は剣を持った銀色ゴブリンと対峙した。
『ゴブゥ!!』
剣を大きく振りかぶって距離を詰めてくる銀色ゴブリン。
私は一歩二歩と身を引いて剣を避けた。
『ゴブッ!?』
「いまだ、えいっ!」
攻撃が空振っちゃうと隙が生じるよね。
そこに合わせて攻撃すれば、ほら!
ザンッ!!
『ゴブウッ、グ、ギィィイ……ッ!!』
「よし、もう一発!」
私は隙だらけの銀色ゴブリンに追撃を仕掛ける。
けれど銀色ゴブリンは無理やりに体勢を整えて、剣を振って反撃してきた。
ガキィンッ!!
「わわっ、あの体勢から切り返してくるだなんて!?」
うう、思ったよりも強い一撃だよ。
腕がビリビリするぅ~~。
『グギギィ……』
「うっ、そんなに睨んだって怖くないもんねっ。くらえっ!」
『ゴバァッ!!』
キィンッ!
ガキンッ!!
ギィィインッッ!!!
「はぁ、はぁ。このゴブリン、すごく目が良いみたいだね。こっちの攻撃にちゃんと合わせてくるよ」
なかなかに厄介だね。
でも、消耗してるのは向こうも同じ。
銀色ゴブリンもハァハァと肩で息をしているよ。
それに、私の剣には麻痺を付与する効果もあるからね。
私のほうが断然有利!
それなら、攻めあるのみ――!
「やぁああっ!!」
『ゴブゥ!?』
キィィィインッ!!
「やった、剣を弾いた! これで勝ったも同然だね!」
武器を失った銀色ゴブリンは、じりじりと後退していく。そして銀色ゴブリンが下がっていく分だけ、私は歩を進めて、追い詰めていく。
『ゴブッ!?』
「これで終わりだよ、くらえ――」
背後には大きな木。
銀色ゴブリンは完全に逃げ場を失って、あとは私に斬られるのを待つだけ……。
そのはずなのに。
その時、私は確かに見た。
銀色ゴブリンの口角が僅かに上がったのを。
「――ッ!!!」
気が付いたら私は回避行動を取っていたけれど、どうやら大正解だったみたい。
だって、銀色ゴブリンの手の平から剣が飛び出してきたんだもん。
細かいことが気になる性格で、そのせいで些細なことにも気が向いちゃう。おかげで仕事の手は遅かったけれど、こういう場面では私を助けてくれるみたいだね。
『ゴ、ゴブゥ……』
「あー、ビックリした。そっかそっか、考えてみればそうだよね。体が鉄で出来てるなら、鉄の武器だって体から出せるよね。危うく騙されるところだったよ」
『グ、グギィ!』
「ふふっ。でも、もう騙されないよ! 今の不意打ちでダメージを与えられなかったのが運の尽きだねっ!」
『ゴ、ゴブゥ~~~~~ッ!!!!!』
私が剣を向けると、銀色ゴブリンはこちらに背を向けて逃げ出してしまったよ。
「逃げ足はやいなぁ。とても追いつけそうにないね」
それじゃライムスのほうに加勢しようか。
そう思ったけれど、ライムスが戦っていた銀色ゴブリンも既に逃げ出しているみたい。
あの剣を持った銀色ゴブリンがリーダーだったのかな?
「あ、アイテムがドロップしてるよ!」
モンスターは逃げ出したときもアイテムを落とすことがあるよ。
今回落としていったのは銀の首輪だね。
「それにしても本当に凄いねこのダンジョン。こんな簡単に高級アイテムがドロップしちゃうなんて。ちょっと出来すぎなくらいだよね」
『ぴゆー?』
「ん、調子が良いのはいいことだって? ふふっ、そうだね。よぉし、この調子でドンドンと進んでいこう!」
とは言ったものの、な~んか変な気がするんだよねぇ。
なんていうか、やっぱり出来すぎな気がするんだよ。
綺麗な薔薇には棘があるっていうし……。
それにさっきの銀色ゴブリン、私のことを騙し討ちしてきたよね?
つまりこのダンジョンにいるモンスターは、そこまで強くはないけれど、そこそこの知能はある……。
「ライムス、ここからは今まで以上に気を引き締めていこう。気のせいだったらそれでいいんだけどね。でも、なんだか嫌な予感がするんだよ」
『ぴゆっ!』
それからも私とライムスは北上を続けたよ。
そして森の深いところまでやって来ると、今度は金色の宝箱が!
「わあ、今度は金の宝箱だよっ。ふふ、この中には何が入ってるのかなぁ。ライムス、さっそく開けてみよっか!」
『ぴきゅーーっ!!』
私は逸る気持ちを抑えながら金色の宝箱を開けた。
すると中には、金色の短剣が入っていた!
「うはぁ~、ねぇねぇ見てよみんな。この剣きれい~~」
私はカメラのすぐ目の前にピカピカの短剣を差し出して、視聴者のみんなに見え易くしてあげた。
短剣を見てコメント欄は大盛り上がり。
やっぱり黄金っていうのは映えるよね。
配信との相性バッチリだよ!
そんなふうに短剣に見惚れていると――。
ガサガサ……ガサガサガサ…………ッ。
「はっ!?」
振り返ると、そこには十匹近くの黄金モンスターが群れになっていた。
「まさか、この宝箱は囮!?」
もしそうだとしたら……。
やっぱりこのダンジョンのモンスターは、普通のモンスターよりも知性があるってことになる。
「ライムス、ここは連携で切り抜けよう! 私たちのコンビネーションで、アイツらを全部やっつけちゃうよっ!!」
『きゅぴぃーーっ!!』




