第52話 黄金の森、第1層・黄金ゴブリン
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「う~ん。なんか思ってたよりも普通の森って感じだね?」
私はライムスを連れて、黄金の森にやってきたよ。
黄金の森は、その名前から受けるイメージとは違って普通の森って感じの場所だった。
草も木も緑色だし、川には透明の水が流れているよ。
「まだ第一層だし、最初はこんなものかもしれないね。とりあえず配信始めちゃおっか」
私はホール近くに楔を刺してから、スマホを手に取って、D・Dを起動したよ。
タイトルは【黄金の木を求めて】。
概要欄には「ドロップアイテムは全て寄付します」と書いておいて、と。
「これでヨシ。さぁライムス、探索開始だよ!」
『ぴきゅいーっ!!』
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ライムス推し
<通知来たからすっ飛んできた!!
りーお
<おはようございます~
tomo.77
<おっ、さっそく黄金の森か! 実は俺もいま黄金の森探索中です!
ホーリー・社員・ドラゴン
<ほほう、ドロップ品は全部寄付とな?
spring
<黄金の森キターーーー!!
上ちゃん
<おはようございます。聞くところによるとかなり美味しいダンジョンみたいだね
デウスエクスちゃん
<今日は攻略配信ですか。これはこれで楽しみですね!
ボブ
<今日も今日とてライムスくんがかわいいなw
あ あ
<楽しみ
Jun
<黄金の森は今朝発見されたんだったか。こんだけ報酬が美味いと地方民が可哀想だわww
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「みんな来てくれてありがとうね! 今日はタイトルにもある通り、第3層に生えてる黄金の木を見つけたいと思うよ」
『きゅぴーっ!!』
「ふふっ、ライムスもやる気満々みたいだね!」
私とライムスは視聴者と雑談を交えながら、てくてくと歩いて行く。
周囲を見渡せば他にも多くの探索者がいて、中には戦闘中の人もいたよ。
「あの人が戦ってるゴブリン、なんだか普通じゃないね」
やけに目を引くというかなんというか。
ちょっと眩しいような……?
「って、他の人を気にしてても仕方ないよね。私は私の配信を頑張らなきゃ」
第2層に続くホールがどこにあるのかは分からないけど、こういうのは勘で進むしかないよね。
攻略掲示板を見ながら進むっていうのも考えたけど、それは最終手段。
それに「黄金の木」の画像が貼られていたら企画倒れだしね。
しばらく進むと、こんもりとした茂みがザワザワと揺れて、そこから一匹のモンスターが現れたよ。
「あれは……金色のゴブリン?」
そっか。
さっき他の探索者が戦っていたのもこのゴブリンなんだね。
今までにたくさんのダンジョン配信を見てきたけれど、金色のゴブリンなんて初めて見たよ。
「もしかしたら新種かもしれないね?」
私はパラライズ・ソードを構えて、金色のゴブリンに向かって駆け出した。
「いくよライムス!」
『ぷゆーっ!!』
『ンギギ、ギァーーーーッッ!!』
ガキィィィンッ!!
パラライズ・ソードと黄金のこん棒とが衝突して、甲高い鉄の音を響かせる。
「うう、普通のゴブリンよりかは攻撃力が上がってるみたいだね」
でも掲示板に書いてあったとおり、強さはそこまででもないね。これなら配信映えを狙う余裕もあるよ。
「ライムス、この前みたいにアイツの動きを止めちゃって!」
『きゅぴーーっ!!』
私の指示を受けて、ライムスがぎゅっと縮んだ。
そして力を溜めてから、一気に跳躍!!
金色のゴブリンに向かって猛スピードで接近していったよ。
『ぴきゅぅっ!!』
『ゴッ、ゴブゥ!??』
金色のゴブリンが、足元に絡みついたライムスを必死になって剥がそうとしている。その隙を突いて、私は渾身の一振りを繰り出した!
「くらえ、えいっ!!」
ザンッ!!
『グブッ!』
「もう一発! やぁっ!!」
ザシュンッ!!
『ゴブハァッ!!』
ぽふんっ!
「やった、金色のゴブリンを倒したよ! ライムスが動きを止めてくれたからだよ、ありがとうね、ライムス!」
私がお礼を言うと、ライムスは当然でしょ! とでも言いたげな顔をしていたよ。
そんな自慢気なライムスも可愛らしくて大好きだよ!
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上ちゃん
<やっぱり二人のコンビネーションは最高だね
村人B
<黄金ゴブリンの討伐おめでとうございます!
ぱる
<gg
デウスエクスちゃん
<ライムスくんのドヤ顔かわいいw
あ あ
<ナイスゥーー!!
りーお
<最中さんもナイス攻撃でした!
ミク@1010
<今きた。さっそくモンスターを倒したみたいだね
じろう
<ライムスの活躍でメシが美味い!
1999
<自分もいま来ました~
たなか家の長男
<ナイスコンビネーション!!
通りすがりのLv.99
<俺も今来たところ。早速モンスター倒しててすごい!
ライムス推し
<うおおおおおおおライムス最強!! ライムスしか勝たん!!!
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「ふふっ。みんな、おめでとうコメントありがとう! この調子でドンドン進んでいくよ! ……っとその前に、アイテムがドロップしているね?」
さっきまで金色のゴブリン――黄金ゴブリンが居た場所に、金色の腕輪が落ちていたよ。
まさかこんな簡単に黄金装備がドロップするなんて思わなかったよ。
「概要欄にも書いてあるけど、このダンジョンでドロップしたアイテムは全部寄付させてもらうよ。せっかくこんなに黄金アイテムが手に入るのに、独り占めっていうのはちょっと気が引けちゃうし。それに、お金にがめつい人みたいなイメージは持たれたくないしね」
私はドロップした金色の腕輪を腰袋にしまい込んでから、探索を再開した。
目指すは第2層へと続くホールだよ。
まずは北の方向を探索してみよう。




