閑話⑧ ライムスと不思議な猫ちゃん④(ライムス視点)
ノアールちゃんについていくと、ゴミを漁っていた猫ちゃんや烏ちゃんがピタリと動きを止めたよ。
『安心してくれ、この小僧は新入り……というか、個人的な友人でしかない。それにこの小僧が食べるのはゴミばかりでね。君たちが食べられるものはちゃんと残すさ」
すると一匹の大柄な烏ちゃんがやってきて、僕に向かってカァー! と大きく鳴いたよ。
『わっ、ビックリしたぁ。ねぇノアールちゃん、もしかしてぼく、威嚇されてる?』
『ちょっと待て」
そう言ってノアールちゃんが瞑想する。
すると周囲一帯を青白い光が包み込んだ。
直後、烏ちゃんがもう一度口を開く。
[ノアールさん、いくらアナタのご友人と言えども困りますよ。我々は長い時間あちこちを探し回って、ようやくこの場所を見つけたのですよ? なのに、なんの苦労もなくやってきた小僧に分け前を与えろと? まぁ、私は心が広いですから構いませんが、他の奴らがどう思うかは、ねぇ……?]
わあ、烏ちゃんの言葉が分かるようになったよ! これもノアールちゃんのおかげだね?
『ふむ、それは承知している。しかしどうだ。ここは一つ、私の顔を立ててはくれないだろうか?」
[ですから、それを決めるのは私じゃなくてですね。――オイお前ら、どう思う]
烏ちゃんが問い掛けると、他の烏ちゃんと猫ちゃんが一斉に口を開いたよ。
[俺は気に入らねえ! コネで飯にありつけるなんてズルだろ!]
[全く同意だな。せめて何かしらの対価があればいいが]
[そーだそーだ! ちゃんとルールは守るべきだ!]
烏ちゃんは反対多数。
対して猫ちゃんたちは――。
[別に俺は構わん。興味無し、好きにしな]
[ノアール様のご友人とあらばなぁ。ここにいる皆、ノアール様に恩があるわけだし。義理猫情ってのは通さねぇと辻褄が合わねぇよ]
[アタシも同じよん。ノブレス・オブリージュ。これってすごく大事なことだもの。それにそこのスライムちゃん、とーってもキュート。アタシ一目惚れしちゃったわん♡]
『なるほど。烏組は反対多数、猫組は特に気にせずといったところか。そしてどちらの言い分も一理ある。さて、小僧ならどうする?」
『えぇ……。ルールを教えてくれるんじゃないの?』
『ああ、教えるさ。クイズ形式でな」
う~ん。
猫ちゃんたちは特に不満が無いみたいで、それはノアールちゃんが猫だからってことなのかな?
対して烏ちゃんは対価を求めてるよね。
対価って何だろう?
と、その時。
ぼくはある日のモナちゃんとの会話を思い出したよ。
それはビックリ動物紹介番組。
取り上げられたのは海外の烏ちゃんで、家の窓を開けていると毎日のように入ってきて、お家の中に宝石を置いて行っちゃうらしい。
「ふふっ。この烏にとってはこのお家が宝物庫みたいになってるんだね。ねぇ知ってる? 烏ってキラキラしたものが大好きなんだよ?」
キラキラしたもの……。
あっ、それならぼくの中にモンスターの核があるよ!
『烏ちゃん、ちょっと待っててね。いま良いモノをあげるから!』
そしてぼくはぷるぷると震え出す。
[お、おい! どうした小僧、大丈夫か!?]
[いや待て、アレは攻撃の構えかもしれんぞ!?]
[なに! 俺たちとやろうってのか。受けて立つぞ!]
そんなつもりはないよ。
そう言いたくても、吐き出すのに必死で声が出ない。
ノアールちゃんはそれを察してくれて、烏ちゃんを諫めてくれた。
『少しだけ待て。この小僧はいきなり仕掛けるようなヤツじゃない」
ノアールちゃんのおかげで烏ちゃんが落ち着きを取り戻す。そして数秒後、ぼくはすぽーんっ! とモンスターの核を吐き出した。
これはミニ・ワーウルを食べた時のヤツだね。赤くてキラキラ光る、ビー玉サイズの宝石。
瞬間、ドッ! と歓声が沸いて、ぼくはビックリしてひっくり返っちゃったよ。
[おおお、なんてキレイな石っころなんだ!]
[アレはなんとしてでも欲しいぞ!]
[レイヴン様に献上したらどんな褒美が頂けることか……!]
[いや。あれ程のモノなら共有財産にすべきだ! 飾り付けよう!]
わお!
どうやら大好評みたいだね!
『まぁ、これがルールだ。他者の縄張りにお世話になるのなら、相応の対価を差し出す。人間社会でも大体は同じだがな」
『へぇ~~~。ノアールちゃん、教えてくれてありがとねっ!』
『ふふっ、お前は素直でいいヤツだな」
こうして、ぼくは烏ちゃん一行の許しを得て、ゴミを分けてもらえたよ。
『ん~~、美味しい~~~♡♡』
やっぱりゴミは美味しいなぁ。
もしもここにモナちゃんがいたら、すっごく喜んでくれたんだろうね。
そう思うとちょぴっとだけ損な気分だけど。
でもその分は、ダンジョンのお掃除を頑張って取り戻そう!
それから少し経って、ノアールちゃんが『さて』と腰を上げた。
『小僧、お散歩の続きとしゃれこもうじゃないか」
『うん。いま行くよ!』
こうしてぼくたちは、烏ちゃんと猫ちゃんに別れを告げて路地裏をあとにした。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
面白い、続きが気になる、期待できそうと思って頂けた方には是非、ページ↓部分の☆☆☆☆☆で評価してほしいです。☆の数は1つでも嬉しいです!そしてブックマークなどもして頂けるとモチベーションの向上にも繋がりますので、なにとぞ応援よろしくお願いします!!




