閑話⑦ ライムスと不思議な猫ちゃん③
『ふう、結構な距離を歩いてきたな。小僧、そろそろ小休止といこうじゃないか。実は、この辺に居心地の良い路地があるんだ」
しばらく歩いていると、ノアールちゃんがそんなことを言い始めたよ。もしかしたら少し疲れちゃったのかも?
こういう時は、話にノってあげるのが優しさだよね。
『居心地の良い路地かぁ。どんな感じか気になるな!』
『ふふっ。きっと驚くぞ? なにせ、そこにはたくさんの猫や烏が棲みついているからな。それに、小僧の大好きなご馳走も落ちている」
『ええっ、猫ちゃんに烏ちゃん!? それにゴミまで!?』
烏ちゃんっていうのは、黒い鳥さんのことだってモナちゃんが教えてくれたことがあるよ。
ノアールちゃんみたいな猫ちゃんに烏ちゃん。
それだけでも楽しそうなのに、まさかゴミまで落ちているだなんて……!
ゴミ……ゴミ……。
うゅ〜、なんて甘美な響きなんだろう。
じゅるり。
『小僧、ニタニタしながらヨダレを垂らすんじゃない。みっともないぞ?」
『あっ、ごめんね? ぼく、ゴミには目がなくてさ。まぁ、モナちゃんはゴミが大嫌いみたいだけど。ダンジョン配信を始めたのも、お掃除をするためなんだよ?』
『ふん、たしかにあの女子は変わったところがあるな」
そんなふうにお話を続けながら、やがてぼくたちは入り組んだ細道をくねくねと進んでいったよ。
少しずつ人の気配が消えて、太陽の光も隙間からしか入らなくなって。
そしてついにぼくたちは、目的の場所に到着した!
そこではノアールちゃんが言っていた通り、多くの猫ちゃんや烏ちゃんがいて、美味しそうにゴミをぱくぱくと食べていたよ。
『ここだ。ここはビルの立地や風向きの影響上、細かいゴミが飛んできやすいんだ。特にあのスポットは人気でな。というのも、あのテナントの住民は窓から顔を突き出してパンを食べるのが習慣になっているんだ」
『なるほど。それでパンの食べカスが落ちてくるから、みんなにとってはパーティなんだね!?』
『ん~。まぁ、そんな感じだ。……一応断っておくが、私はゴミなんて食べないからな?」
意外な一言が飛んできて、ぼくは『えっ?』と間の抜けた声を出しちゃったよ。
だって今の会話の流れだったら、ノアールちゃんもゴミが好きなのかなって思うじゃん。
『私は普通とは違うからな。ダンジョンにはダンジョン・コアがあるだろう? そして探索者というのは多かれ少なかれダンジョン・コアが発する魔力に触れている。私は彼らが大気中に残した魔力を食料としているんだ」
『へぇ~~。ん? っていうことは、ダンジョンに行こうって言ったのは――』
『ああ。ちょうど腹が減ってたからな。いくら私でも、残留魔力だけを糧に生きていくことはできない。そんなワケで、1日に1回はダンジョンに潜って腹を満たすんだ」
『へぇ~~。ねぇねぇノアールちゃん。そんなことよりもさ、ぼくもゴミを食べてきていい? みんなが美味しそうにしてるから、見てたらお腹空いてきちゃったよ』
ぼくが言うと、ノアールちゃんはやれやれとでも言いたそうに溜息を吐いてから『ついてこい」と歩き出したよ。
『こういう場所にはそれ相応の決まりがあるんだ。今から小僧にそれを教えてやる」
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