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椎名と悠の母の話。

 新年度が始まって一週間が経った土曜日。今日は珍しく八人衆全員が外出をしていなく、全員リビングに大集合していた。

 特に目立ったこともなく各々寛いでいると、突然、鍵と特殊な結界魔法で守られているはずの玄関扉が開かれる音と共に、能天気な声が家に響き渡る。

「みんな~!進級進学おめでと~!ケーキ買ってきたぞ~!」

「……え、お母さん?」

 椎名と悠の母……空口翼(そらぐちつばさ)が両手にケーキが入っていると思われる紙袋を持って、リビングに乱入してきた。


 八人衆全員が唖然とし、開いた口が塞がらない。

 それもその筈、翼は『めんどくさ~い』と言って悠の入学式に来なかったくせに、新年度が始まって一週間経った今日、何の連絡も入れず能天気に家に入ってきたのだ。

 

「え~?なにその反応~。まるで私が変人みたいじゃ~ん」

 ローテーブルに二つの紙袋を置いた翼は、ソファーに座って読書をしていた椎名の隣に足を組んで座って肩に手を回し、無表情な顔をした椎名の頬をつつく。

「お前が変人でなけりゃ誰が変人なんだよ」

「うわ~、翔くん反抗期か~」

 今度は翔の背後へ回り込み、甘い顔で頭を撫でる。

「うっせぇ黙れ!」

 翔はキレながら頭を撫でる翼の手を払い除ける。

「ぬわっ、暴力反対!レディにそんなことするなんて……」

 翼は口を尖らせて、翔に払い除けられた左手を右手で撫でる。

「いちいち鬱陶しいんだよ!」

「まぁまぁまぁ」

 本気でキレた翔を瑛汰が宥める。

 それを見て翼は『うぉっ、てぇえてぇ』とボソリと呟く。

「ま、ケーキ食べよ~。全部種類バラバラのケーキ八個買ってきたから好きn」


 紙袋から取り出した箱を開封していた翼が、突然消えたのだ。

『あー、いっちゃった』

「まぁここまで来れただけマシでしょ」

 皿とフォークを持ってきた綾は、フィリアにそう言う。

『でも可哀想』

「ドジって時空の歪みに突っ込んで、元の住んでた時代に戻れないや年を取らないや、極めつけには時空の歪みが発生した小学校内の空き教室の扉開けられたらそこに戻されるという地縛霊状態になったんだ。自業自得だ」

 翔が怒りのままに翼について吐き捨てるように話す。

 翔の言う通り、翼は二十歳の時に様々な奇跡(ドジ)が重なって、過去にタイムリープして小学校の空き教室に囚われている。因みにその小学校の七不思議に『空き教室に忽然と現れる巨乳』として仲間入りしているようだ。

「まさしく自爆霊」

「地味に上手いこと言うの止めろ」

 悠がどや顔でボケると快人が悠の肩に手を置く。


「……ん?どうかしたか?瑛汰」

 秀馬がさっきから黙りこくっている瑛汰に声を掛ける。

「えっ、あ、いや、翼さんが僕のお爺ちゃんと同い年なんだなって」

「言われてみればそうだね。『見た目は二十歳、中身は後期高齢者!その名も迷探偵翼!』みたいな?」

 何処からか出した伊達メガネを掛けた綾が、あの大人気名探偵を捩った物真似をする。

 背の低さが相まって妙にフィットしている。


「翼さんの嫌味大会は止めて、ケーキ食べよ?」

 収拾がつかなくなる前に秀馬が皆を止める。

 ボケた綾をガン無視するド畜生である。

「そだね~。犠牲となった翼ちゃんの分まで美味しく頂きましょう」

「姉ちゃんの言う通り!ってことで余ったやつはオレが食う」

「いーや、俺が食う」

 快人と翔が言い争っているが、最終的に結局悠が食べることになるとは、まだ誰も知る由もなかった。


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