八人衆の進級、進学の話。
瑛汰、翔、悠の三人は、日向ノ山学園に着いた。
三人共々同じ二組なので、二階にある教室まで揃って歩いていく。
すると、階段を上っている最中に瑛汰が翔に耳打ちをする。
「ねぇ、何だか注目されてない?」
「気のせいだろ」
「そ、そうかなぁ」
翔は特に深く考えもせずに返事をした。
しかし真面目な瑛汰はそれを真に受けとる。
それに悠もそんな会話を気にも止めず、階段を上っていく。
瑛汰は若干違和感を覚えたが、何故だかそれを言い出せずに、二人を追いかけるように階段を上っていった。
瑛汰はまた後に気付く。あの違和感は間違いではなかったことを。
「みんなおはよ~」
「あ、快人!おはよう、また同じクラスだな」
快人は東町小学生につき、早速友達にからまれる。
高身長で爽やかイケメン、そして運動が得意で優しい快人は男子からも女子からも大人気。それゆえ友達の多い陽キャである。
そんな快人だが、実は……
(早く家に帰れないかな……)
学校があまり好きではなかった。
人気者の快人が学校が苦手な理由、それはある一つの理由だった。
(姉ちゃんに早く会いたいよ~)
異常な程のシスコンだからであった。
快人は何をするにも最後に『姉ちゃんのために』が付く程のシスコンであり、そんなだからか、学校の女子にそういう感情なんて、全く抱いたことがない。
(早く帰りたいな~)
快人は案の定、始業式の校長の話など、耳にすら入ることはなかった。
「さようなら~、また明日」
先生のその一言で、綾のクラスメイト達は友達と話し始めたり、走って家に帰りだす。
綾は前者でも後者でもなかった。
(クラスに一人も友達いないって逆に奇跡かも)
綾は友達が少ない訳では無い、むしろ多い方だが、何故か友達が一人もいないという事態に陥っていた。
(中一のクラス分けって小学校の先生も入るんじゃないの?)
『友達を作らないと』と思いながら、綾はとぼとぼ歩いて家に帰っていった。
一方遅刻寸前で学校に着いた秀馬は、あることが気が気でなかった。
(椎名学校絶対に間に合ってないよな、そもそも学校に着いてるのか?)
心配性の秀馬は椎名のことを気にしていた。
椎名と秀馬は学年が同じだがクラスが違うので、登校しているか、否か、分からないのだ。
秀馬は窓から見える校門に目を向ける。
椎名の姿を確認するためである。
「おい、片瀬、何してるんだ」
少し目を向けていたつもりが、いつの間にか秀馬は窓にへばり付くようにして外を見ていた。
「あ、スミマセン。寝ぼけてて」
『椎名のことが心配で』何て言ってしまえば周りから冷やかされると、これまた心配になった秀馬は誤魔化しその場をやり過ごす。
結局全ての授業が終わっても、椎名の姿を確認出来なかった秀馬だが、家に帰ると制服を着た椎名がソファーで読書をしていたので『学校には行ってたんだ』ひとまず安堵したのであった。
P.S.椎名は無事遅刻しました。