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名簿を見る学生

作者: Aw

5月17日 火曜日 19時頃

男は疲れ果てて山手線に半ば転がるように入って行った。新しい派遣先の業務は彼にとってハードなものだった。19時、部活帰りの学生や彼と同じ様な顔が電車内でサラダボウルを成していた。汗をうっすらかいた女学生をまじまじと見ていた彼は前の席が空いた事にしばらく気づかなかった。しかし身体は正直だ。疲れた脚が自然と席に落ち着こうとする欲求から男は着席した。

神経質な彼は着席と同時に両隣を確認した。右はデカいリュックを前に抱えた老人(山登り帰りだろうか)だった。リュックが身体に当たることに気を遣って少し左に寄った。左は男子学生。メガネを掛けた男子学生はスマートフォンに釘付けになっていた。普段は他人に興味を持たない彼だが、何故かその男子学生の事を知りたくなった。最初は学生の瓶底の様な厚いメガネが気になる程度の動機だった。だが、次第に興味の対象はその学生自体に向けられた。何やらただならぬ雰囲気を学生は発していた。男は首のストレッチを装い左へ首を回した。目的は学生のスマートフォンの画面の覗きだ。画面には無数の名前の羅列。どうやら何かの名簿の様だ。男は覗きの為に何度かストレッチをしたのだが、学生の方はその名簿を見るのに集中しているという結論に至りストレッチをやめた。男は大胆に左を覗く。〇〇小学校 K.K ✗✗小学校 D.K ・・・・。なるほど、学生が見ているのは教員の異動を記した名簿だ。ほら、あの3月頃に更新されるアレだ。学生は暫くスクロールしていたがその手は意外にも直ぐに止まった。止めたところをスクリーンショットして、何やらメモを書いたのを男は見た。どうやら目当ての先生の異動先が知れたようだ。学生の顔はマスク越しにも解るほどニコリと緩んだ。そして勢いよく立ち上がり、学生はN駅で降りていった。男子学生の持っていた手提げの中に入っているものが金属音を発する程勢いがよかった。




5月18日 水曜日 6時頃

男の日課は朝のコーヒーを飲みながらニュースを見ることだ。今日も物騒なニュースばかりだ。どれどれ。


昨夜N駅近くの○✗小学校の教員が何者かに殺害されました。犯人は逃走中で犯罪に使われた凶器も未だ見つかっていません。鑑識によると死亡推定時刻は昨夜19〜20時で、警察は犯人の目撃情報を求めています。情報提供の電話番号は………

END


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