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甘い玉子焼き




「なあ珊瑚ちゃん」


 朝食の用意が終わっては、騒がしくしていた梨響もおとなしくなり。

 席に着いてみんなで手を合わせいただきますを言い、海苔が中央に貼ってある三角おむすびと、じゃがいも、人参、わかめ、豆腐の味噌汁、納豆、甘い玉子焼きの朝食を食べ終えて、警備会社へ向かう神路と、薬草の師匠の下へと向かう凛香を珊瑚と共に見送った梨響。台所のテーブルに片頬をつけて、食器を洗う珊瑚の背中を見つめながら話しかけた。


 物静かで物腰柔らか、何でも器用にきっちしこなし、ついぽろりと愚痴を吐きやすい人間。


 こちとら数えるのもばかばかしいくらいの年齢を重ねていて、頼られるべき立場にあるというのに、ついつい頼ってしまう。

 否。甘えてしまう。

 きちんと向き合ってくれるとわかっているから。

 どんなにくだらないことでも。



「んー」

「やっちまったー」

「んー」

「だってよー。あいつ意識してポカするのわかりきってるしー」

「んー」

「別に評価が下がるのはいいんだよー。けど。仕事でポカするときっと見限られる」

「神路さん仕事に誇り持っているからね」

「うん。だから手伝えない。けど。けどおー」

「料理する気になった?」

「んー。んー。もうちょっと。なんかが足りない」

「うん。じゃあ、する気になったら教えて」


 頬が痛くなった梨響。今度は顎をテーブルに乗せて、食器を拭き終わってこちらに顔を向けてくれた珊瑚に向かって、にへらと笑いかけた。


「珊瑚ちゃーん。あいしてるう」

「僕も好きだよ」

「えー愛しているじゃなくてー」

「………その言葉は別の人に言いたいからだめ」


 ほんのりと頬を桃色に染めた珊瑚を見て、かわいいねーと梨響は心の底からの感想を伝えて。

 もう一方ひとかた、心底伝えたい相手にはいつ言えるようになるのだろうと考えては、がっくし肩を落としたのであった。

 まだまだまだまだ、当分無理そうだ。









(2021.12.17)




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