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ほっとけーき




 ふふん。

 凛香の想定外の発言に、けれど今回は動揺を露わにしなかった壮史。

 希望通りにフライパンを埋め尽くすほどホットケーキの種を注ぎ込んだ。




 坪庭を見ていた壮史が神路に尋ねてから客間に行き、凛香と顔を合わせない為にジイと神路、珊瑚の協力の下、その場で夕飯を取ったり、風呂を済ませたり、寝支度を終わらせて眠りに就いた。

 胸を高鳴らせながら。


 翌朝。

 雀の鳴き声を聞きながら、ジイに用意をさせた緑色のジャージを身に包んでは台所へ赴き、踏み台兼子ども用の椅子に乗り立って珊瑚に教わりながら、ホットケーキの種を作り始めた。


 まずは弱火にしてフライパンを温めておく。

 次にボールに入れておいた卵と牛乳を大きなスプーンで軽くかき混ぜてマーブル状になってから、市販のホットケーキミックス粉を少しずつ入れて、またかき混ぜる。

 大きなスプーンですくって、ゆったり種が下に落ちるまで。

 そして、フライパンの上にかざした手が熱く感じたらマーガリンを入れて、溶けたらマーガリン専用の油引きで広げ、ホットケーキの種を乗せる。


 ここからが俺の見せ場だと、壮史はほくそ笑んだ。

 ちゅーりっぷ、うさぎ、くま、りんご、ばなな、ほし、よつば。

 器用にホットケーキの種をフライパンに乗せて、形作り、沸々と穴が開き始めたら、フライ返しを形が崩れないように慎重に下へと潜らせては乗せて、位置を定めて、ひっくり返す。


 ふふん。

 食欲がそそるきれいな小麦色とふっくらと厚さのあるホットケーキを前に、壮史が鼻の穴を膨らませてから、希望を聞かなかったジイ(ちゅーりっぷ)、神路(うさぎ、くま)、梨響(りんご、ばなな、ほし)、珊瑚よつばへ皿に乗せて手渡し、早起きしたみんなより少し遅れてやってきた凛香になんの形がいいと得意満面になって尋ねると。

 量が多い丸がいいとの希望を出され。

 自信満々のちゅーりっぷではないことに内心動揺しながらも、表面では任せろと白い歯を見せてから背を向け、フライパンいっぱいにホットケーキの種を注ぎ込んでは、目をかっぴらき、フライパンに余地のないホットケーキ返しに初挑戦。

 激しい心音にめげず、縁に一か所も当たらずに見事成功した時は、心の中でガッツポーズを繰り出したのであった。




「ほら」


 冷静沈着、クールに。を心がけようとする壮史。

 真っ白い丸皿の縁ぎりぎりまで占領するまん丸いホットケーキに、マーガリンの固まりを中央に乗せて、チューブ容器に入っているホットケーキシロップを格子状にかけ巡らせてから、凛香に差し出した。


 きらきらと。星々が飛び散るほどに目が輝いて見えたのは錯覚ではないと。

 のちに胸を張ってジイに何度も話す壮史であった。


「うわ。すごいな。すごいきれいで、すごく美味しい。ありがとうな」

「食べてもないのに断言するな。莫迦」

「ああ。早く食べたい」


 そして初めて見たと。

 喜んで、笑って、楽しんで。

 嬉しいとの感情を、顔で、身体全部で伝えてくれる人を。












(2022.1.21)



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